《4日目》そっか、そうだよ
『今日を生きるのって……こんなに難しかったんだね』
『難しいもんか、今までだってできてただろう?』
『うん……そうだね。今までだってできたんだから今日も明日もその次の日も……ずっとできるよね……』
『ああ……絶対だ……だから、死なないでくれ……』
命の灯火が消える瞬間、とある二人の会話を私はずっと覚えている。今を必死に生きようとする魂の輝きを、私は覚えている。
私も今を生きてみたかった。たとえすぐに死んでしまったとしても、もう二度と戻れない《あの世界》の中で───
◆
「……はぁ」
月曜日、大きなため息をついた僕は自宅の前で立っていた。理由はもちろん優輝を待つためだ。
一日前には結構大きな喧嘩をした僕らだが優輝は必ずここに来ると僕は思った。理由はなんとなく、だ。
「どうした? 今日は随分と早いじゃないか?」
珍しく……ではなく始めて(そして最後だった)遅刻ギリギリにならない時間に優輝は来た。
「お互いにな」
「……そういうことにしておくよ」
僕はいつも通りの時間にいたのだがいつもギリギリに来る優輝はそのことを知らなかったようだ。
「行くか」
「ああ」
こうして僕らは始めて通学路を歩いた。いつも走っているからか、なんだか新鮮だったことを覚えてる。
しばらく僕らは無言で歩いていた。
「お前は俺が死んだら悲しむか?」
突然優輝は話しかけてきた。僕はその意味のわからない……いや、質問をする意味がわからない質問に答える気は起きなかった。だから逆に質問してやることにした。
「……逆に質問するよ。優輝が死んだときに僕が悲しまないでいられると思っているのか?」
優輝は前を向きながらわずかに微笑んでから言った。
「そっか……」
「そうだよ」
気づけば僕も少し笑っていた。
「僕はもう優輝にあんな目にあって欲しくないんだ。だからこれからも言い続けるよ。『無茶をするのはやめろ』って」
「ああ……」
「だから……そう、無茶か無茶じゃないかは自分で決めてくれ」
優輝は少し驚いた後、優しい笑みをして言った。
「もう、無茶はしないよ」
こうして僕と優輝は仲直りをした。ついでだったのでこれまで起きた出来事を僕は話した。話し終わった後の優輝の言葉は『俺もお前もバカだな』だった。
「あれ? そう言えばこの《ifルート》って僕が逃げなかった《世界》なんだよな」
「お前がそう言ったんだろ」
「あれ……? それってもしかして……」
僕は身体中の汗腺から余すことなく汗をポタポタ垂れ流して言った。
「優輝って僕の好きな人知ってる……?」
「おう、そうゆう条件だったしな」
涙腺が崩壊した。
そう、僕が逃げなかったってことは《元の世界》の優輝が言っていた『俺の好きな人教えるからお前も教えろ』を真っ正面から受け止めたことになる。
つまり《ifルート》の優輝は僕が恵美のことを好きなのを知ってるってことだ。
「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ……」
「壊れやがった」
優輝は壊れてしまった僕を連れてそのまま学校に登校した。




