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性能しか見ていない鍛冶師、左遷先でなぜかバズる~性能特化で赤字子会社を立て直す~  作者: Masaki


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第62話 完成

 一週間後。


「できたー!」


 作業室の方から、弾けるような声が聞こえてきた。


 相変わらず元気だな。


 資料に目を通していた茜が、顔を上げて作業室の方を見る。


「桃ちゃんもできたみたいですね」

「ああ。回路を細かくするって言った時は、もう少しかかると思ったけどな」


 茜が苦笑しながら、手元の資料を閉じた。


「私と葵ちゃんがチャレンジしたので、気になったんだと思います」


 葵が4倍にチャレンジすると宣言したことで、桃にも火がついたらしい。


「できるんだから、最初からやっとけばよかったんだ」

「さすがに4倍は無理ですけどね」

「そうか?」

「そうです」


 結局、茜は初心者シリーズの3倍。

 桃と葵も、合成回路でありながら2倍まで精度を上げている。


 初めてでこれなら、慣れればまだいけるだろ。

 これなら個人モデルとして、中級者からベテランまで使える。


「一条さーん! できましたよー!」

「聞こえてる。今行く」


 席を立って作業室へ向かう。

 作業台には、完成した片手剣と盾が並んでいた。


「できました!」

「お疲れさん。型は問題なかったから、大丈夫だろ」

「一応確認はしてくださいよー」

「わかった、わかった」


 桃から片手剣を受け取る。


 回路もちゃんとしてる。

良い出来だ。


 盾の方も同じように確認する。


「どっちも問題ない」

「やったー!」


 桃が嬉しそうに片手剣と盾を見る。


「これで全員完成ですね!」

「ああ」


 桃の片手剣と盾。

 茜の二本のワンド。

 葵のモーニングスター。

 俺の両手剣。


「できたこと、佐藤と詩に報告しないとな」

「ついに私たちの武器が発売されるんですね!」


 桃が嬉しそうに自分の剣を見る。


 まだ販売日は決まってないけどな。



     ◇



 午後。


 完成の報告をしたところ、その日のうちに佐藤と詩、それから第一製作課の山本と木村がブランド開発室にやってきた。


 俺たちが異動した後、第一製作課には第二、第三製作課から何人か移ってきた。

 今は、ブランド開発室で設計したものを量産している。


 机の上に完成した武器を並べる。


「あれ?予定より一つ増えてません?」


 詩が並んだ武器を見て首を傾げた。


「ああ。茜のモデルを二本にした」

「二本になったんですか?」

「はい。魔力制御に特化したワンドと、魔法威力に特化したワンドを持ち替えて使うことにしました」


 茜が二本のワンドを示す。


「普段は制御特化を使って、強い魔法を使いたい時や回復量を上げたい時に、威力特化へ持ち替える感じです」

「なるほど。二本合わせて茜さんモデルなんですね」

「そうですね」

「それで、これが桃セットです!」


 桃が待ってましたとばかりに、自分の片手剣と盾を指す。


「桃セット?」

「はい!剣と盾を合わせて桃モデルです!」


 いつの間にそんな名前になったんだ。


「分かりやすくていいですね」

「ですよね!」


 詩に褒められて、桃が満足そうに頷く。


 佐藤が片手剣と盾を見比べる。


「セットで販売するのはいいと思います。ただ、バラでも売りませんか?」

「バラでもですか?」

「はい。その方が売れると思います。剣だけ欲しい方もいるでしょうし、盾だけ欲しい方もいるでしょうから」

「あー、確かに」


 桃が少し考える。


「じゃあ、剣だけでも盾だけでも買えて、両方欲しい人は桃セットを買える感じですか?」

「その形がいいと思います」

「それならいいです!」


 セットが残れば問題ないらしい。


「茜さんのワンドも同じようにできそうですね」


 佐藤が二本のワンドを見る。


「二本セットでも販売して、それぞれ単品でも買えるようにする形です」

「一本だけでも使えますし、その方がいいと思います」

「では、桃さんと三枝さんは単品とセットの両方で進めましょう」

「私もセットにする」


 葵が自分のモーニングスターを見ながら言う。


「何とセットにするんだよ」

「二個」

「同じの二個売ってどうする」

「両手で使う」

「危ないからやめろ」


 チェーンタイプのモーニングスターを両手で振り回すのは、さすがに見たくない。


「残念」


 何故残念そうなんだ。


「広報も、単品とセットの両方が分かるように見せ方を考えますね」


 詩が資料に何か書き込む。


「セットなら本人と同じ装備を揃えられることを紹介できますし、単品ならそれぞれの特徴を出せます」

「桃セットでちゃんと紹介してくださいね!」

「その名前で決定したんですか?」

「えっ」


 そこからなのか。


「分かりやすいと思うんですけど」

「候補には入れておきます」

「候補……」


 桃が少しだけ不満そうだ。


 その横で、山本と木村はさっきから仕様書を見ている。


「……これ、かなり細かくしましたね」


 山本が顔を上げる。


「そうか?」

「初心者シリーズと比べたら全然違いますよ」


 仕様書を順番にめくっていく。


「三枝さんのワンドは3倍。桜庭さんと早瀬さんも2倍まで上げてるんですね」

「頑張りました!」

「頑張った」


 二人とも少し得意そうだな。


「それで、一条室長のは……4倍」

「ああ」


 木村も苦笑しながら俺の仕様書を見ている。


「一本作るだけならいいんですけどね。これを同じ精度で何十本も作るとなると、話は別ですよ」

「どれくらいかかりそうだ?」


 山本と木村が顔を見合わせる。


「できれば三か月は欲しいですね」

「三か月ですかー……」


 桃が少し肩を落とす。


「思ったより先ですね」

「種類も多いですし、回路も今までより細かいですからね」


 山本が俺の仕様書を軽く持ち上げる。


「特にこれは時間かかりますよ」


性能は高い方がいいだろ。


 木村が少し考えてから口を開く。


「ただ、初心者シリーズのラインを一部こっちに回せれば、もう少し早くできると思います」

「初心者シリーズを減らすんですか?」


 茜が聞く。


「完全に止めるわけじゃないです。ただ、今までと同じ人数をずっと割く必要があるかは確認してもいいと思います」

「そこは営業側でも確認します」


 佐藤が頷く。


「初心者シリーズもある程度は市場に出ています。今後は生産数を少し落として、その分を個人モデルに回してもいいと思います」

「じゃあ、三か月より早くなります?」


 桃が少し期待した顔をする。


「それはラインを確認してからですね」


 木村が笑う。


「こちらも初心者シリーズの在庫と売れ方を確認します。その上で、どれくらい個人モデルに割けるか打ち合わせしましょう」


 佐藤が山本たちを見る。


「できるだけ早く市場に出せるように調整します」

「お願いします!」


 桃が嬉しそうに頭を下げる。


 販売日はまだ決まらないか。


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