第61話 相談?
桃と茜は、それぞれ作業を進めるため自分の机へ戻っていった。
「いちじょー」
まだいたのか。
「なんだ?」
「相談したい」
「相談?」
「うん」
「なんだ?」
「青くしたい」
「無理だろ」
「ひどい」
量産品で青を求めるな。
「じゃー終わり」
「完成か」
「相談がない」
何しに来たんだ。
「もう完成してるんだからいいだろ」
「でも、みんな相談してた」
そこは気にしなくていいだろ。
「いちじょーは?」
「俺?」
「決まった?」
「両手剣にするつもりではいる」
「使える?」
「両手剣か?」
「うん」
「あまり使ったことはないが、使えるぞ」
今の大剣も大きさだけなら両手剣みたいなものだ。
片手で使ってるだけで。
「じゃあ決まり」
お前が決めるのか。
「他は?」
「まだほとんど決めてない」
「相談する?」
「誰に?」
「私」
話したいだけだな。
「まあ、いいか」
「うん」
何故か満足そうだ。
「じゃあ回路から決めるか」
「何入れる?」
「両手剣なら、斬撃強化と強度強化。それと重量軽減も候補だな」
三つか。
鋳造で作るなら、二つくらいがバランスはいい。
「いちじょー、魔法も使う」
「うん?そうだな」
「魔法の回路は?」
「いらないだろ」
「なんで?」
「両手剣を使う奴が、戦いながら魔法まで使うか?」
両手が塞がる。
桃みたいな戦い方をする武器じゃない。
「いちじょーは使う」
「俺はな」
そもそも、自分の武器にも魔法関係の回路は入れてないしな。
「いちじょーモデルなのに」
そこに引っかかるのか。
「商品でもあるんだよ」
「むずかしい」
「何が?」
「いちじょーっぽさと、使いやすさ」
「そういうことだな」
一条モデルだからって、俺にしか使えない武器にしても仕方ない。
「じゃあ、斬撃と強度と軽量化?」
「その三つが候補だな」
葵が少し考える。
「いちじょーは軽量化必要?」
「俺?」
「うん」
「いらんな」
「じゃあ斬撃と強度」
「それでいいのか?」
「いちじょーモデルだから」
まあ、両手剣なら無理に軽くする必要もない。
「じゃあ斬撃強化と強度強化だな」
「うん」
「回路は細かめにする」
「4倍?」
「それぐらいにしとくか」
「できるの?」
「初心者シリーズの4倍なら簡単だろ」
葵がじっと俺を見る。
「なに?」
「簡単じゃない」
「そうか?」
桃と茜には無理だと言われたが、あいつらも時間をかければできそうだけどな。
「私も?」
「ん?」
「できる?」
「チャレンジするか?」
「うん」
本当にやるのか。
「じゃあ、モーニングスターも回路を組み直すか」
「マイナーチェンジ」
「そうだな」
強度強化と重量軽減。
入れる回路自体は今のままでいい。
「回路は変えない」
「ああ。その方がいいだろう」
「4倍?」
「合成回路だから無理しなくていい」
「うん」
葵が頷く。
「で、俺の方だ」
「うん」
「次は形か」
「四角」
「四角?」
「今のと同じがいい」
「なんで?」
「その方がいちじょーモデルっぽい」
前に見せた剣のイメージが強いか。
「じゃあ四角でいくか」
「うん」
「ただ、幅は今より狭くする」
「盾は?」
「しない。今回は盾としての回路を組まないからな」
あの大剣には、物理耐性と魔法耐性も入れている。
今回入れるのは斬撃強化と強度強化。
盾として使うことは考えていない。
「あそこまで幅を広くする必要はない」
「細くしすぎないで」
「なんで?」
「いちじょーモデルっぽくなくなる」
どんなイメージなんだ。
「じゃあ、このくらいか」
紙を一枚引き寄せて、簡単に形を描く。
「細い」
「これでも普通の剣より太いぞ」
「もう少し」
「盾には使わないんだぞ?」
「でも、いちじょーモデル」
基準が分からん。
少し幅を広げる。
「これなら?」
「いい」
元の大剣ほどじゃないが、普通の両手剣よりは幅広い。
「刀身を長くするのはやめるか」
「長さは普通?」
「片手剣くらいだな」
「長くして」
「扱いにくいだろ」
「長い方がかっこいい」
「そうか?」
葵が頷く。
「いちじょーは使えない?」
「俺?」
もう少し伸ばしたくらいなら問題ない。
「これくらいなら使えるな」
「じゃあ長くする」
「汎用性なくないか?」
「いちじょーモデル」
またそれか。
刀身を少し長く描き直す。
今の大剣より細身にして、その分長くする。
それなら見た目の迫力も残る。
「柄も長くする?」
「ああ。両手で握れる長さにはする」
柄も合わせて伸ばす。
「片刃がいい」
「両刃の方がバランスはいいぞ?」
「後ろで殴る」
「峯か?」
「うん」
そこも残すのか。
「いちじょーモデルだから」
徹底してるな。
斬るだけなら両刃でいい。
ただ、峯を残せば今の武器みたいに殴ることもできる。
「まあ、使い道はあるな」
「うん」
「じゃあ片刃にするか」
片側だけに刃を書き足す。
四角く、少し幅広。
刀身は長め。
柄も両手用に長くして、片刃。
「こんな感じか」
「いい」
葵が設計図を覗き込む。
回路は斬撃強化と強度強化。
形は今の大剣を残しつつ、両手剣として作り直す。
だいぶ決まったな。
「他は?」
「これくらいでいいんじゃないか?」
「うん」
葵が満足そうに頷く。
「相談できた」
「俺の相談だけどな」
「できたからいい」
「そうか」
まあ、俺のモデルも決まった。
「じゃあ戻る」
「ああ」
葵が自分の机へ向かう。
「4倍、やるから」
「無理するなよ」
「チャレンジ」
「ああ」
やる気はあるみたいだな。




