第59話 桃モデル
「一条さん、ちょっと相談いいですか?」
「桃モデルなんだから自分で決めろよ」
「少しぐらいはアドバイスお願いしますよ」
桃が設計図を持って俺の机までやってきた。
「片手剣の方なんですけど」
「もう考えたのか?」
「もちろんです」
設計図を机に広げる。
「合成する回路は二つがいいじゃないですか」
「そうだな。バランスを考えるとそうなる」
「でも、入れたいのが三つあるんですよ」
「三つ?」
「はい。まず攻撃力を上げるもの」
桃が設計図を指す。
「それと、女性でも振りやすくするために重量軽減」
「女性向けにするのか?」
「専用って訳じゃないですけど、女性でも使いやすい方がいいかなって」
「なるほど」
「あと、魔力制御も入れたいなって」
「魔力制御?」
「私、万能型なので魔法も使えるじゃないですか」
「ああ」
「せっかく桃モデルにするなら、剣だけじゃなくて、そういうところも入れたいんです」
斬撃強化。
重量軽減。
魔力制御。
確かに三つだな。
「それで決められないのか」
「そうなんです」
「なら三つ入れればいい」
「え?」
「桃モデルなんだから、入れたいのを入れていいんじゃないか?」
「そうなると中途半端なものになるじゃないですか」
桃が設計図を見る。
「せっかく作るんですから、ちゃんと使えるものがいいです」
「使えるものがいいなら、斬撃に特化させればいいだろ」
「それじゃ私らしさがないじゃないですか」
「面倒だな」
「真剣に考えてるんです」
「分かってる」
性能だけを考えるなら、用途を絞った方がいい。
「武器は特化させた方が強いんだがな」
「一条さんがそれ言います?」
「何が?」
「一条さんの大剣、斬れるし、盾にもなるし、後ろで殴れますよね?」
「ああ」
「全然特化してないじゃないですか」
「必要だからそうしただけだ」
「私も必要だから悩んでるんです!」
「……それもそうか」
自分で言っておいてなんだが、説得力がなかったな。
「でも、やり方がないわけじゃない」
「あるんですか?」
「ああ。一つは回路の質を上げる」
「質?」
「もっと細かく、精密な回路を組む。そうすれば三つ合成しても中途半端にはならない」
「なるほど」
桃の顔が明るくなる。
「どれくらい細かくするんです?」
「そうだな……今の四倍は必要かな」
「よ、四倍!?」
桃が設計図を見る。
「そんな回路組めないですよ!」
「やってみないと分からないだろ」
「四倍ですよ!?」
「ああ」
「無理です……」
「そうか」
やればできると思うんだがな。
「じゃあ、もう一つの方法だな」
「できるやつでお願いします」
「柄に回路を組む」
「え?」
「そう。柄」
「いや、そうじゃなくて。どういうことです?」
柄は柄だろ。
「柄にも回路は組める」
「それなら、なんで今まで入れなかったんですか?」
「柄に入れても、刀身には反映されないからな」
「反映されない?」
「ああ。例えば重量軽減の回路を柄に入れても、軽くなるのは柄だけだ」
「……ほとんど意味ないですね」
「ないな」
「じゃあ今回も意味ないじゃないですか」
「魔力制御なら別だ」
「別?」
「魔力制御は刀身に作用させる必要がない」
「あっ」
気づいたらしい。
「じゃあ、斬撃強化と重量軽減を刀身に入れて」
「魔力制御を柄に入れる」
「できます?」
「やるのは桃だけどな」
「……そうでした」
桃が設計図を見る。
「でも、これなら三つとも入れられますね」
「ああ」
桃は満足そうだ。
ただ、一つ気になる。
「でも、魔力制御でいいのか?」
「え?」
「魔法関係の回路を入れるなら、魔法威力を上げる方が分かりやすく強いぞ」
「あー……」
桃が少し考える。
「でも、私は魔力制御がいいです」
「なんで?」
「威力を上げたいっていうより、剣を持ったまま魔法を使いやすくしたいんですよ」
「なるほど」
「その方が私っぽくないですか?」
「まあ、そうだな」
「じゃあ魔力制御で!」
「ああ。なら、柄の先に魔石も付けるか」
「魔石?」
「小さいのでいい。魔力制御の補強になる」
桃が設計図の柄を見る。
「柄の先に魔石……」
「そう」
「それいいです!」
急に声が大きくなった。
「剣の柄が魔法の杖にもなるってことですよね?」
「構造としては近いな」
「それにします!」
「早いな」
「だって私っぽいじゃないですか」
確かに。
剣で戦えて、魔法も使える。
重量軽減で扱いやすくして、柄には魔力制御。
さらに柄尻の魔石で補強する。
「じゃあ、これで片手剣は決まりですね!」
「ああ」
桃が嬉しそうに設計図へ書き足していく。
「盾は?」
「初心者シリーズの盾の形を変えるだけです」
「それだけ?」
「性能はあれで十分ですから。回路もそのままでいいかなって」
「盾の扱い雑だな」
「雑じゃないですよ。完成してるものを無理に変える必要ないじゃないですか」
「まあ、それはそうだな」
「見た目はちゃんと桃モデルっぽく変えます」
「じゃあ桃モデルはそれで決まりか」
桃が満足そうに二枚の設計図を並べる。
片手剣に盾。
剣を握ったまま魔法も使える。
なんか勇者っぽいのができそうだな。
「勇者みたいだな」
「違います!」
「違うのか?」
「戦うお姫様です」
「姫にしては雑すぎるだろ」
「ひどいっ!」
すまん。




