第58話 モデル?
蒼雷とのコラボから数日。
「こんにちは、少しよろしいですか?」
「あれ? 詩ちゃん。いらっしゃい」
入口に立っていた詩に、茜が応じる。
隣には営業部の佐藤さんもいた。
「佐藤さんも一緒なんですね。どうぞ入ってください」
茜が二人を応接スペースへ案内する。
営業と広報が一緒に来るのは珍しいな。
「それで、今日はどうしたんですか?」
全員が席についたところで、茜が聞く。
「先日のコラボ配信について、少し相談がありまして」
「何かありました?」
桃がすぐに反応する。
「営業の方に、かなり問い合わせが来ているそうです」
「問い合わせ?」
「特に多いのが、一条室長が使っていた大剣についてですね」
「あれか」
「はい。販売しないのか、価格はいくらなのか、といった問い合わせがかなり来ています」
「見る目あるな」
問題は量産ができないことだな。
「あと、葵のモーニングスターについても問い合わせがあります」
「私の?」
「うん。あっちも商品化しないのかって」
「見る目ある」
葵が満足そうに頷く。
「それで、営業としては、できれば両方とも商品化したいと考えているんですが」
佐藤さんが俺を見る。
「可能でしょうか?」
「葵のはできるだろ」
「できる」
「一条室長の大剣は?」
「同じのは無理だ」
「やっぱり難しいですか?」
「そもそも鍛造品だからな」
「量産には向かない、と」
「ああ」
一本ずつ作っていたら数を揃えられない。
「では、一条室長の大剣は一旦置いておいて、早瀬さんのモーニングスターだけでも商品化する方向で考えましょうか」
「売る」
「葵ちゃん、自分の武器が商品になるの嬉しいんですね」
「ボーナス期待」
分かりやすいな。
「試作品とのことでしたが、商品化するなら何か変更しますか?」
「いる?」
「自分で決めろよ」
「んー……青くする」
「無理だろ」
「じゃあそのまま」
切り替え早いな。
「では、その方向で企画をまとめて――」
「葵モデル」
葵が言った。
「え?」
「葵モデルで売る」
「自分の名前付けるんですか?」
「うん」
「それいいじゃないですか!」
詩がすぐに反応する。
「ただモーニングスターとして売るより、葵が配信で使っている『葵モデル』として売った方が絶対売りやすいですよ」
「確かにそうですね」
佐藤さんも頷く。
「今回の問い合わせも、早瀬さんが使っていたのを見た方から来ていますから」
「モデル化いいですね!」
桃も乗ってきた。
「自分が配信で使ってる武器がそのまま売られるって、ちょっと楽しそうです」
「みんなのモデルも作る」
「みんな?」
「桃と茜も」
「私も!?」
「私もですか?」
「うん」
「それいいじゃないですか!」
詩が身を乗り出す。
「三人それぞれのモデルを作るんですよ!」
「三人……」
佐藤さんが桃たちを見る。
「……なるほど」
「どうしました?」
「皆さん、持っている武器がバラバラなんですよね」
佐藤さんが桃を見る。
「桜庭さんは片手剣と盾」
茜を見る。
「三枝さんはロッド」
最後に葵。
「早瀬さんはモーニングスター」
特性もバラバラだな。
「戦い方もそれぞれ違います。それに今は皆さん自身の知名度もかなり上がってきていますし、今後も配信は続けていくんですよね?」
「はい!」
「それなら、それぞれのモデル武器があれば売れそうです」
「ですよね!」
桃は完全にやる気だ。
「じゃあ私、自分で設計していいんですよね?」
「もちろんです」
「何にする?」
葵が聞く。
「私は片手剣と盾かな」
「二つ?」
「セットです!」
「一人だけ多いな」
「だって私、両方使うじゃないですか」
それはそうだな。
「片手剣だけ桃モデルって言われても、なんか違うんですよね。盾だけでも違いますし」
「確かに桃なら両方ですね」
詩も頷く。
「じゃあ片手剣と盾にします!」
「茜さんは?」
「私は……ロッドですかね」
茜が少し考える。
「でも、せっかく自分用に一から設計するなら、ワンドにしても面白そうですね」
「ワンド?」
「はい。まだ作ったこともありませんし」
「じゃあロッドかワンドですね!」
「そこはもう少し考えます」
「葵ちゃんは聞くまでもないですね」
「モーニングスター」
迷いがない。
「いいですね!」
桃も完全に乗り気だ。
「いちじょーモデルも」
「俺も?」
「みんなで出す」
「でも一条さんの大剣は量産できないんですよね?」
「ああ」
「じゃあ別の作る」
「別の?」
「いちじょーが作ったモデルで出す」
詐欺じゃね?
「俺が作っただけで、一条モデルはまずいだろ」
それなら今まで俺が設計したものすべてが一条モデルだ。
「配信の時に一条さんが使えばいいんじゃないですか?」
茜が言う。
「それに、一条さんが設計したモデルだとちゃんと説明をつければいいと思います」
「まぁ‥‥‥それならいいか」
「みんなで出せる」
葵が満足そうに頷いた。
「じゃあ一条さんは何にします?」
「今の武器に近い方がいいんじゃないですか?」
「大剣か」
「でも、一条さんは片手で使ってますよね」
「ああ」
「商品にするなら、両手で使う前提にした方がよさそうですね」
「両手剣か」
「いいですね!」
桃が指を折る。
「私は片手剣と盾」
「茜さんはロッドかワンド」
「葵ちゃんはモーニングスター」
「一条さんは両手剣!」
見事に全部違うな。




