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性能しか見ていない鍛冶師、左遷先でなぜかバズる~性能特化で赤字子会社を立て直す~  作者: Masaki


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55/63

第55話 何者なんだ

「いや、いらない」

「え?」

「すぐ終わるからな」


 一条さんは桜坂の三人を残して、一人でボス部屋へ入っていった。


 ……本当に一人で行くのか。


 相手は15階層のボスだ。

 俺たちは5人で戦って、5分以上かかった。


「桃ちゃん」

「はい?」

「止めなくて大丈夫?」

「大丈夫ですよ」


 迷いなく返ってきた。


「一条さんが大丈夫って言うなら、大丈夫です。10階層のボスも魔法で一撃でしたから」

「一撃?」

「はい」


 なるほど。

 何発か撃てれば倒せるか?


『10階層ボス一撃だったな』

『魔法で吹っ飛ばしてた』

『そういや一条も普通に戦えるんだった』

『今日ずっと監督だったから忘れてたw』

『でも今回は剣だろ』

『あの大剣どう使うんだ?』


 それは俺も気になる。


 青い武器なんて、存在は知っていても実物を見るのは初めてだ。

 しかも、普通の大剣とは形からして違う。

 先端まで幅の変わらない巨大な刀身。


 あれを持って、どう戦うんだ?


「魔法で倒したら、剣を見せる意味ないよね」


 玲奈も同じことを考えていたらしい。


「さすがに今回は接近戦するんじゃないですか?」


 悠真が一条さんを見る。


「盾にもなると仰っていましたわね」

「でも、一人なんだよね」


 玲奈が首を傾げる。


「盾で受けても、攻撃してくれる人いないよ?」

「どうでしょうね」


 本人は俺たちの会話なんて気にした様子もなく、剣を片手に立っている。


『実演きたw』

『普通に振れるのか?』

『重量軽減入ってないんだよな』

『盾みたいに受けるところ見たい』

『とりあえず斬ってくれ』

『青い大剣の戦闘とか絶対映える』


 やがて、ボス部屋の奥に魔力が集まった。


 ミノタウロスが姿を現す。


 さっき俺たちが倒したのと同じミノタウロスだ。


 巨大な斧を持ち、一条さんを見つけると咆哮を上げる。


 対する一条さんは動かない。


「……構えないのか?」


 剣を下げたままだ。


 ミノタウロスが地面を蹴る。


 その巨体からは想像しづらい速度で距離を詰め、巨大な斧を振り上げた。


「一条さん!」


 桃ちゃんの声が飛ぶ。


 次の瞬間。

 一条さんが動いた。


「え?」


 踏み込んだ瞬間までは追えた。


 だが、次に姿を捉えた時には、もうミノタウロスの後ろにいる。


 剣は振り抜かれていた。


 ガラン。


 重い音が響く。


 床に落ちたのは、ミノタウロスが持っていた斧だった。

 刃から柄まで、綺麗に二つに分かれている。


「……は?」


 ミノタウロスの身体が傾いた。


 そのまま左右に崩れ、魔石へ変わる。


 ボス部屋が静かになった。


『…………』

『は?』

『え?』

『終わった?』

『今なにした』

『一撃???』

『斧割れてるぞ』

『本体も切れてるんだけど』

『待って待って待って』

『すぐ終わるってそういう意味!?』

『蒼雷5分』

『桜坂11分』

『一条一振り』

『タイムアタック壊れたw』


 誰もすぐには声を出さなかった。


 あの大きな刀身をどう使うのか見たかった。


 結果は、一振りだった。


「……蓮司」

「なんだ」

「見えた?」


 玲奈がまだボス部屋を見ている。


「踏み込むところまでだ」

「私も途中から分かんなかったんだけど」

「俺は動いた瞬間から無理でした」


 悠真が苦笑する。


「僕は……何が起きたのかも」


 湊は完全に見失っていたらしい。


「わたくしも途中で見失いましたわ」


 俺も斬った瞬間は見えていない。


 踏み込んだと思った次には、もうミノタウロスの後ろにいた。


「身体強化、だよな?」

「それ以外ないと思うけど」

「ですよね……」


 悠真が妙な顔をする。


「あの剣って重量軽減入ってないんですよね?」

「そう言ってたな」


『そこなんだよw』

『重量軽減なし』

『あの大剣持ってあの速度?』

『身体強化すれば問題ない←本当に問題なかった』

『問題ないの意味がおかしい』

『本人の出力で全部解決してるw』


「桃ちゃん」

「はい?」

「一条さんって、何型なの?」

「何型……」


 桃ちゃんが少し考える。


「そういえば、知らないです」

「知らないの?」

「はい。聞いたことないですね」

「私も知りません」

「知らない」


 三人とも知らないのか。


「……同じ部署だよね?」

「はい」

「なのに知らないの?」

「……一条さん、なんでもできるので」


『理由になってないw』

『なんでもできるので』

『もう一条型でいいだろ』

『適性とは』


 桃ちゃんがボス部屋を見る。


「一条さーん!」


 一条さんが振り返った。


「なんだ」

「実演、一瞬で終わったんですけど!」

「使ったぞ」

「使いましたけど!」

「それで十分じゃないか」

「盾にもしてないじゃないですか!」

「受ける必要なかったろ?」

「それはそうですけど!」


 正しい。

 正しいんだけど、納得しづらい。


『正論www』

『わざわざ攻撃受ける必要はない』

『盾としての実演、終了』

『一振りで終わる方が悪い』

『実演時間三秒くらい?』


「峰で殴るところも見たかったですけどね」


 悠真が笑う。


「打撃が有効なら使う」

「今回は?」

「必要ない」

「ですよね」


 それはそうだ。


 まあ、わざわざ戦いを長引かせる理由もないか。

 それでも、もう少しくらい見られると思っていた。


「……あの剣が強いのか、一条さんが強いのか分からないね」


 玲奈が呟く。


「両方ではありませんの?」

「多分それだな」


 剣だけが強くても、あの速度では動けない。

 一条さんだけが強くても、ミノタウロスの斧まであんな切れ方はしないだろう。


 ……何なんだ、あれ。


 一条さんが戻ってくる。

 息一つ乱れていない。


 巨大な剣も、最初と変わらず片手で持っている。


「いちじょー」

「なんだ」

「剣、そこそこ?」

「ああ」


『どこがだよwww』

『そこそこ判定なの!?』

『基準を教えてくれ』

『あれ以上があるの怖いんだが』

『ただの剣(青い)(ボス一撃)』


 ……あの性能で、そこそこなのか。


「欲しい」

「自分で作れ」

「青くならない」

「魔力が足りないんだろ」

「インチキ」

「なんでだよ」


『まだ言ってるw』

『青への執着がすごい』

『葵ちゃんそこしか見てないだろw』

『ボス一撃より青』


 桃ちゃんたちは笑っている。

 この人たちにとっては、これがいつものやり取りらしい。


 一条さんを見る。


「なんだ?」

「……あなた、何者です?」


「ただの鍛冶師だ」


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