第54話 いちじょークオリティー
「約束した」
「してないだろ」
「した」
記憶の捏造はよくない。
「してない。必要なら見せると言っただけだ」
「必要」
「もう終わっただろ」
「見たい」
「それは必要とは言わない」
『一条の武器!?』
『そういや見たことない』
『短剣使ってたじゃん』
『あれは宣伝だろ』
『一条って魔法のイメージ強い』
『普通にロッドじゃないの?』
『殴ロッドの上位版だったりしてw』
『室長専用装備気になる』
「俺もちょっと気になるな」
近藤まで何を言い出すんだ。
「せっかくのコラボだし、できれば見せてもらえない?」
「俺の武器を?」
「ああ。今日、一条さん全く戦ってないだろ?」
「必要なかったからな」
「それは分かってるけど」
分かってるなら問題ないだろ。
「視聴者も気になってるみたいだし、最後に見せてもらえたら配信も盛り上がると思う」
「私も見てみたいな」
「わたくしも興味がありますわ」
「僕も……ちょっと気になります」
「私も気になります」
茜まで。
『蒼雷側も見たいのかw』
『そりゃ気になる』
『監督の装備公開』
『ロッド予想』
『絶対普通じゃない』
「一条さん」
「なんだ」
「コラボ相手からのお願いですよ?」
「それが?」
「今回の配信は仕事ですからね!」
……そうだったな。
それを言われると断りづらい。
「……見せるだけだぞ」
「はい!」
「やった」
葵が一番喜んでるな。
『きた!』
『室長折れた』
『仕事なら断れないw』
『一条の攻略法判明』
『業務にすればいいのか』
『悪用するなw』
収納袋を開く。
「一条さん、やっぱりロッドですか?」
「剣だ」
「え?」
桃は何を驚いてるんだ。
柄を掴んで引き抜く。
「……でかいな」
先端までほとんど幅の変わらない四角い刀身。
分厚い峰を残した片刃で、青い刃には細かな回路がびっしりと走っている。
「いちじょー」
「なんだ」
「ただの剣?」
「剣だろ」
「青い」
「そうだな」
「インチキ」
なんでだよ。
「どこがただの剣なんですか!」
「剣には違いないだろ」
「そういう意味ではないと思いますよ」
茜まで何を言ってるんだ。
『ロッドじゃねえwww』
『待って思ってたのと違う』
『でっか!?』
『青っ!?』
『え、青い武器?』
『マジで?』
『中華包丁!?』
『青い武器なのに形で全部持ってかれるw』
『ただの剣とは』
「……青い武器、初めて見た」
「俺も実物は初めてだ」
「わたくしもですわ」
「僕もです」
そんなに珍しいか?
『蒼雷でも初めてなのか』
『やっぱ相当レアなんだな』
『存在は知ってても実物は見ないやつ』
『普通に活動してても見る機会ないのか』
『それを室長が普通に持ってるの草』
「これ、どうしたんだ?」
「作った」
「自分で?」
「ああ」
「偶然とはいえ、すごいな……」
「偶然じゃないぞ」
「え?」
「青い武器は狙って作れる」
「……狙って?」
何を驚いてるんだ。
「前に動画でも説明してる」
「悪い。そこまでは見てない」
「私も知らなかったな」
「わたくしもですわ」
「僕も……」
誰も見てないじゃないか。
『そこ見てないのかよw』
『前に説明してたぞ』
『青くなる条件の話あったな』
『でも狙って作れるはさらっと言うことじゃない』
『レア武器を再現可能扱いしてるの怖い』
「普通に魔力を流して回路を組めば青くなるだろ」
「普通にはなりませんよ」
茜に即答された。
「一条さんの普通で考えないでください」
「そうですよ! 珍しいから青い武器って騒がれてるんですから!」
そう言われてもな。
「それにしても、一条さん。形もかなり独特ですね」
今度は茜か。
「そうか?」
「そうですよ。先までほとんど四角じゃないですか」
「用途と必要な性能に合わせた結果だ」
「形から決めるわけじゃないんですね」
「ああ。この剣なら、この形が回路の配置とバランスを取りやすい」
「なるほど……」
そんなに変か?
『用途から形決めるのか』
『ちゃんと理由あるんだな』
『見た目から入るタイプじゃないのは分かった』
『結果が巨大中華包丁なの草』
「一条さん、この大きさも回路のためですか?」
「いや。大きいのは盾にも使うからだ」
「盾?」
「ああ。これだけ幅があれば十分防げるだろ」
「じゃあ盾持ちましょうよ」
「これぐらいの階層で専用の盾まで持つのは過剰だろ」
「……専用の盾?」
「あるんですか?」
「あるぞ」
『専用あるの!?』
『さらっと言ったw』
『この巨大包丁が盾の代わりなのかよ』
『これで過剰じゃない判定なの怖い』
『専用盾どんなのだよ』
「これが過剰じゃないんですか?」
「剣は必要だろ」
「そういう問題ですか?」
そういう問題だろ。
「でも、片方にしか刃がないんですね」
「ああ」
「反対側にも刃を付けた方がよくないですか?」
「打撃が有効な魔物もいるだろ」
「……打撃?」
「峰で殴る」
「殴るんですか!?」
「ああ。そのために厚くしてある」
『結局殴るwww』
『殴ロッドの親玉』
『斬るだけじゃないのかよ』
『盾にもなるし殴れるし何なんだこれ』
『中華包丁みたいな形に全部理由あるの草』
「便利」
「葵ちゃんだけ納得するの早すぎません?」
「便利だから」
分かってるじゃないか。
「回路は何を入れてますの?」
「斬撃強化、強度強化、魔法耐性、物理耐性だ」
「……後ろの二つ、盾ですわよね?」
「盾にも使うからな」
『盾じゃんw』
『完全に盾用の回路入ってる』
『前半は剣』
『後半は盾』
『一つにまとめるなw』
「いちじょー」
「なんだ」
「重量軽減は?」
「入れてない」
「え?」
今度は桃か。
「これ、重くないですか?」
「重いぞ」
「振り回せないでしょ!」
「身体強化すれば問題ないだろ」
「それ一条さんだからですよ!」
そうなのか?
『重量軽減なしwww』
『力で解決した』
『自分を強化すればいい理論』
『完全に一条専用』
『葵はちゃんと重量軽減入れてたぞw』
『商品化できねえw』
「……ここまで聞いたら、実際に使うところも見てみたいな」
「見せるだけって話だっただろ」
「それはそうなんだけど、コラボ配信としては実際に使うところまで見せてもらえるとありがたい」
また仕事か。
「私からもお願い。ここまで見せてもらったら、さすがに気になるよ」
「わたくしも見てみたいですわ」
「僕もです」
また増えた。
「一条さん」
「分かってる」
「まだ何も言ってませんよ?」
どうせ桃も同じことを言うだろ。
「……一回だけだぞ」
「ありがとうございます!」
『実演きた!』
『監督出陣』
『ついに働く』
『ずっと働いてるって怒られるぞw』
『青い巨大包丁の性能見れる』
『どんな戦い方するんだろ』
「それで、何を相手にするんだ?」
「そういえば、もうすぐ10分だな」
もうそんなに話してたのか。
『あ』
『ボス復活するじゃん』
『ミノタウロス再登板w』
『相手まで用意された』
『休ませてやれw』
奥に魔力が集まり始める。
「じゃあ行きましょう!」
「私も大丈夫です」
「ん」
「いや、いらない」
「え?」
「すぐ終わるからな」
「え?」
そのままボス部屋へ入る。
『待ってw』
『置いてった』
『すぐ終わる?』
『桃ちゃんたちいらない判定w』
『急に監督が強気』
『そこそこなんだよな?』
『嫌な予感しかしない』
ミノタウロスか。
久しぶりだな。




