第51話 コラボスタート
配信開始の時間になった。
蒼雷と少し離れた位置で、それぞれ配信の準備をする。
「一条さん、準備できました?」
「ああ」
「茜さんも葵ちゃんも大丈夫?」
「大丈夫ですよ」
「うん」
「じゃあ始めますよー!」
桃がカメラの前に立った。
「皆さん、こんにちはー! モモ………………桜坂魔装製作所です!」
まだやるのか。
『きた』
『モモって言いかけた』
『まだやってるw』
『今日は蒼雷コラボ!』
『一条いる』
『茜さん!』
『葵ちゃんもいる』
「今日は予告していた通り、蒼雷の皆さんとのコラボ配信です!」
少し離れたところでは、蒼雷側も配信を始めていた。
「皆さん、こんにちは。蒼雷です」
蓮司がカメラに向かって軽く頭を下げる。
「今日は桜坂魔装製作所の皆さんと一緒に探索していきます」
「よろしくねー」
玲奈が横から手を振る。
「今日は11階層からスタートして、15階層のボスまで進みます。長時間になると思いますが、最後までよろしくお願いします」
『桜坂きた』
『例の殴ロッドの会社か』
『モモちゃんねるの人たち?』
『今日は合同探索か』
『桜坂は11階層から初めてなんだよな』
『蒼雷いるなら安心だな』
「それじゃあ、まず装備の準備しますね!」
収納袋を開く。
「桃」
「はい!」
片手剣と盾を渡す。
「茜」
「ありがとうございます」
茜にはロッド。
「いちじょー」
「分かってる」
収納袋から葵の試作品を取り出した。
柄から伸びる鎖。
その先には、大きな鉄球が付いている。
「……モーニングスター?」
「うん」
「しかもチェーンタイプ?」
「うん」
「ちょっと待ってください」
桃が葵の武器を見る。
「これ、ロッドの時にボツにしたやつじゃないですか?」
「かっこいい」
「やっぱりそれが理由ですか!」
「葵ちゃん、気に入ってましたもんね」
「うん」
葵は満足そうに頷いた。
『草』
『殴ロッドはモーニングスターだったw』
『ボツ案復活してるじゃねーか』
『葵ちゃん諦めてなかった』
『ロッドとしてボツになっただけだからセーフ』
『ついにロッドですらなくなった』
『かっこいいなら仕方ない』
『普通に物騒で草』
「これ、早瀬さんが使うの?」
「うん」
「桜坂の商品?」
「違う。作った」
「自分で?」
「うん」
葵が少しだけ胸を張る。
「へえ。作れるんだ」
「まだ試作」
「でも自分で設計したんでしょ? すごいじゃん」
「頑張った」
満足そうだな。
「回路は何を入れてるんですか?」
「強度強化と重量軽減」
「重量軽減?」
「うん」
「なるほど。これなら振り回しやすくなるのか」
悠真がモーニングスターを見る。
「見た目より軽い」
「見た目は全然軽そうじゃないけどね」
玲奈が笑う。
『ちゃんと考えて作ってる』
『強度と重量軽減か』
『チェーン武器ならありだな』
『葵ちゃん意外と真面目に設計してる』
『意外とは失礼だろw』
「じゃあ、準備もできたので行きましょう!」
全員で転移設備へ向かう。
「最初は俺だったな」
「お願いします!」
「一応、どう動く?」
「近藤さん、アタッカーですよね?」
「ああ」
「じゃあ私が盾やります。葵ちゃんは前を見てもらって、茜さんは後ろから魔法で」
「分かりました」
「ん」
「一条さんは?」
蓮司が俺を見る。
「一条さんは監督です!」
「監督?」
「はい。基本は私たちが戦って、一条さんは後ろから見てます」
「探索中に?」
「いつもそんな感じですよ?」
「……なるほど」
納得したというより、よく分かっていない顔だ。
「何かあれば一条さんも動くんですよね?」
「必要ならな」
「分かった。じゃあ、とりあえずその形でいこう」
「はい!」
転移ポータルで10階層まで移動し、そのまま11階層へ向かう。
「葵ちゃん、お願い」
「ん」
葵が先に進む。
手には、さっき取り出したモーニングスター。
鉄球をぶら下げたまま、少し前を歩いていく。
「斥候もできるんだ」
「速いから」
「なるほど」
少し進んだところで、葵が止まった。
「いる」
「何体?」
「5」
「種類は?」
「ホブゴブリン1。コボルト4」
「了解です!」
桃が盾を構える。
すぐに5体が姿を見せた。
「来ます!」
桃が前に出る。
飛び込んできたホブゴブリンの攻撃を盾で受け止めた。
「近藤さん!」
「ああ!」
空いた横から蓮司が斬り込み、ホブゴブリンを仕留める。
続いて茜の魔法がコボルトを吹き飛ばした。
「右」
回り込もうとしていたコボルトへ鎖が伸びる。
鉄球が直撃し、そのまま地面を転がった。
「おお……」
蓮司が一瞬そちらを見る。
「前!」
「っと」
桃が3体目のコボルトの攻撃を受ける。
「お願いします!」
「任せろ!」
蓮司が仕留める。
残った一体には茜の魔法が直撃していた。
終わりか。
「……普通に動けるんだな」
「普通?」
桃が首を傾げる。
「いや、初めてこの組み合わせで戦ったから、もう少し合わせる時間が必要かと思ってた」
「近藤さんが攻撃してくれるので、私は受けてればいいですから」
「私も撃てるところで撃っただけですよ」
「前見ただけ」
三人とも特に気にしていない。
「それで合わせられるなら十分だよ」
蓮司が少し笑った。
『普通に戦えてる』
『初見連携とは思えんな』
『桃ちゃん盾できるんだ』
『葵ちゃん斥候もやるの?』
『モーニングスターで斥候は怖いw』
『茜さん安定してる』
『近藤やっぱ強いな』
『これ思ったより普通に行けそう』
「幸先いいですね! この調子で行きましょう!」
問題はなさそうだな。




