第49話 蒼雷
蒼雷ホーム。
リビングには、蒼雷の五人が集まっていた。
「先日のコラボですが、正式に決まりました」
マネージャーの言葉に、近藤蓮司が顔を上げる。
「了解。確か、モモちゃんねるだっけ?」
「正確には、桜坂魔装製作所とのコラボになります」
「会社?」
ソファに座っていた速水悠真が顔を上げた。
「はい。最初はモモちゃんねるへ依頼を出したんですが、先方は探索者パーティーではなかったようです」
「ん?どういう事?」
鷹宮玲奈が首を傾げる。
「会社の同僚4人で、商品の宣伝も兼ねて、たまに一緒にダンジョンへ入っているだけとのことでした」
「じゃあ、完全にこっちの勘違いだったんだ」
「そうなりますね」
「ちゃんと調べようよ」
「そこは申し訳ありません。視聴者からかなり名前が出ていたので、先に企画を動かしてしまいました」
「マネージャーでもそういうことあるんだ」
玲奈が笑う。
「その後、先方から会社の公式チャンネルへ依頼してほしいと返事がありましたので、改めて正式にお願いしました」
「それで受けてもらえたと」
「はい」
蓮司が頷く。
「今回はどこまで行きますの?」
紅愛・スターリングが聞いた。
「15階層までを予定しています。先方はこれまで10階層までしか探索したことがないとのことです」
「でしたら、こちらが合わせる形になりますわね」
「そうだな」
蓮司が頷く。
「無理はさせないようにしよう。危なそうなら玲奈が前に出てくれ」
「任せて」
「回復はいつも通りでいいですか?」
小鳥遊湊が聞く。
「ああ。何かあれば早めに頼む」
「分かりました」
「……でも、これやる意味あります?」
悠真が口を挟んだ。
蓮司が見る。
「どうした?」
「俺たち、今は20階層を越えるために訓練しないといけないですよね?」
「ああ」
「前のコラボはまだ分かります。普段から同じくらいの階層で活動してる相手でしたし」
悠真が少し間を置く。
「でも今回は、正直訓練にはならないと思うんですよね」
「…それはそうだな」
蓮司も否定しなかった。
「だったら、その時間をボス対策に使った方がよくないですか?」
「私も少し気にはなっていましたわ」
紅愛が腕を組む。
「四度失敗していますもの。今は攻略を優先したいところですわね」
「俺も攻略は優先したい」
蓮司が答える。
「ただ、今回のコラボは訓練目的じゃない」
「配信ですか?」
悠真がマネージャーを見る。
「そうですね。今回は配信面の理由が大きいです」
「やっぱり」
「最近、訓練配信の視聴数が落ちています」
「それは知ってますけど」
「ボス戦は伸びますが、毎回挑戦できるものでもありません。訓練だけが続けば、どうしても数字は落ちます」
「スポンサーもありますしね」
湊が小さく言った。
「はい」
マネージャーが頷く。
「スポンサー契約にも配信の視聴数は関わっています。こちらとしても、攻略だけに集中して配信の数字を落とすわけにはいきません」
「面倒っすね」
「今さらでしょ」
玲奈が笑う。
「それに、今回の相手は視聴者からの希望がかなり多かったです。配信としても数字は見込めると思います」
「なるほどね」
「まあ、そういう理由なら仕方ないか」
玲奈はあっさり納得した。
「私は構いませんわ」
紅愛が言う。
「決まった以上は、こちらが合わせればよいだけでしょう」
「僕も大丈夫です」
湊も頷く。
悠真は少し考えてから息を吐いた。
「……分かりました」
「まだ納得してなさそうだな」
蓮司が言う。
「事情は分かりましたよ。ただ、俺は早く20階層をどうにかしたいだけです」
「それは俺も同じだ」
「ですよね」
「コラボが終わったら、また対策を詰めよう」
「了解です」
悠真もそれ以上は言わなかった。
「ところで、桜坂魔装製作所って何作ってる会社なの?」
玲奈がマネージャーを見る。
「本業は武器の製作です。初心者向けの商品を展開しているようですね。あとは消耗品なんかも扱ってますね」
「へえ」
悠真が端末を操作する。
「桜坂魔装製作所……あった」
「何作ってるの?」
「短剣、片手剣、盾……ロッド」
「普通じゃん」
「いや」
悠真の指が止まった。
「これ、ロッド?」
「どれ?」
玲奈が横から画面を覗き込む。
「……メイスじゃない?」
「ロッドって書いてあります」
湊も覗き込んだ。
「殴ロッド……?」
「何ですの、その名前」
紅愛も画面を見る。
「正式名称じゃなくて通称みたいっすね」
「殴るんですの?」
「ロッドで」
「それはもうメイスでは?」
「俺もそう思います」
少しだけ沈黙する。
「変わった会社ですわね」
「まあ、武器作ってる会社なら色々あるんじゃない?」
玲奈がソファに戻る。
「当日はいつも通りでいいんだよね?」
「そうですね。先方は初めて進む階層になりますので、必要ならこちらでフォローをお願いします」
「分かった」
蓮司が頷く。
「向こうのペースを見ながら進もう」
「了解」
悠真は端末を閉じようとして、もう一度画面を見る。
「……でもこれ、本当にロッドなんすかね」
「まだ気にしてるの?」
「気になりますよ」
◇
コラボ配信まで、あと数日。
作業場で仕事をしていると、葵が何かを抱えてやってきた。
「いちじょー」
「なんだ」
「できた」
葵が作業台に置く。
「お前、これにしたのか?」
「かっこいい」
そこが理由か。
俺は試作品を手に取った。
「回路は……強度強化と重量軽減か」
「頑張った」
スピードタイプの葵なら無難な選択か。
「いちじょーも武器作る?」
「いや、俺はあるから」
「なに?」
「ただの剣だ」
「強い?」
「そこそこだな」
「今度見せて」
「必要ならな」
15階層程度では必要無いけどな。




