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性能しか見ていない鍛冶師、左遷先でなぜかバズる~性能特化で赤字子会社を立て直す~  作者: Masaki


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第44話 ロッド?

「じゃあ、私たちはこっちですね」


 桃がホワイトボードの文字を指差す。


 制御。

 威力。


「そうですね。まずは使いやすさを優先しましょうか」


 茜が紙を机に広げる。


「長さってどのくらいがいいんですかね?」

「初心者向けなら、あまり長すぎない方がいいと思います」

「持ち運びもありますもんね」


 二人で話しながら、大まかな形を書いていく。


 細めの柄。

 片手でも扱える重さ。

 先端に魔石。


「魔石はこの辺ですか?」

「そうですね。あまり大きいと重くなりそうですし」

「じゃあ少し小さめにして……」


 順調だな。


「装飾も少し欲しくないですか?」


 桃が言う。


「装飾?」

「せっかく魔法職用ですし、ちょっとそれっぽい方がよくないです?」

「いいですね」


 茜も頷く。


「でも、初心者向けなので派手すぎないくらいで」

「ですね」


 桃が先端の周りに何本か線を足していく。


「こんな感じ?」

「あ、いいと思います」


 細身の柄の先に魔石があり、その周りを金属の装飾が囲んでいる。


 普通にロッドだな。


「どうです?」


 桃が聞いてくる。


「いいんじゃないか」

「反応薄くないですか?」

「重要なのは回路だからな」

「それは分かってますけど」


 分かってるならいい。


「回路も私たちでやってみますね」

「ああ。2人なら大丈夫だろ」

「前に教えてもらったやり方で組んでみます」

「できたら確認する」

「はい」


 こっちは任せて大丈夫そうだな。


「いちじょー」


 葵に呼ばれて振り返る。


「こっち」


 机の反対側には、真っ白な紙が置かれていた。


「何も描いてないな」

「考えてる」

「何を?」

「どう殴るか」


 そこからか。


 俺も椅子を持ってきて隣に座る。


「せっかく殴るなら、威力が欲しいな」

「長くする」


 葵が言う。


「遠心力か」

「うん」


 力が弱くても、長さがあればある程度は補える。


「長くするんですか?」


 桃がこっちを見る。


「ああ」

「初心者向けですよね?」

「だからだろ」

「なんでそうなるんです?」

「力がなくても威力を出せる」

「魔法職に何をさせるつもりなんですか……」


 殴る。


「でも、長くするだけだと振りにくくないですか?」


 茜が設計図を見る。


「確かに」

「しなればいい」


 葵が言った。


「しなる?」

「鞭みたいに」


 なるほど。

 しなりがあれば、その分勢いもつけやすい


「じゃあ、先端を重くするか」

「いい」

「待ってください」


 桃が手を上げた。


「今、ロッドの設計してますよね?」

「ああ」

「ですよね……?」


 何を確認してるんだ。


「先端を重くして、しなるようにするなら……」

「チェーン」


 なるほど。


「持ち手と先端をチェーンで繋ぐか」

「回路はどうするんですか?」


 茜が聞いてくる。


「チェーンに組み込めばいい」

「できるんですか?」

「まぁ技術はいるが問題ない」

「いける」


 悪くないな。


「先端は?」

「丸くする」

「もっと威力出せる?」

「トゲ付けるか」

「カッコイイ」

「…………」


 桃が黙った。

 茜も設計図を見ている。


「どうした?」

「一条さん」

「なんだ?」

「それ、モーニングスターですよ」


 設計図を見る。


 持ち手。

 チェーン。

 重い先端。

 トゲ。


「モーニングスターだな」

「やっと気づいた!」

「強そう」


 葵は気に入っているようだ。


「でも、初心者には無理だな」

「え?」

「扱いが難しい。振った先端が自分に当たるかもしれない」

「気にするのはそこですか……」

「初心者向けだからな」

「今までの話は何だったんだろう……」


 試行錯誤だろ。


「ボツ?」


 葵が聞く。


「ああ」

「カッコイイのに」

「初心者向けじゃない」

「残念」


 葵が設計図のモーニングスターに小さくバツを付けた。


「じゃあ、チェーンはなしですね」


 茜が言う。


「ああ。一本に戻す」

「先端も軽くします?」


 桃が聞く。


「いや」

「そこは残すんですか?」

「ある程度重い方が殴りやすい」

「まだ殴るんですね」

「そのためのロッドだろ」

「そうでした……」


 桃が諦めたように頷く。


「全部金属だと重いな」

「木」


 葵が言う。


「柄を変えるか」

「うん」

「それなら軽くできるな」


 全部金属にする必要はない。

 芯だけ補強して、外側は木にする。

 先端には重さを残す。

 強度強化の回路もある。

 これなら初心者でも扱える。


「先端はどうします?」


 茜が聞く。


「金属で補強する」

「形は?」

「丸い?」


 葵が言う。


「このままだとメイスに見えますね」


 桃が設計図を見ながら言う。


「魔法の威力を上げる回路を組んでるんだから、ロッドだろ」

「見た目の話です」


 使うのは魔法職だからロッドだろ。


「装飾付ける」


 葵が言った。


「装飾?」

「ここ」


 葵が設計図を引き寄せる。


 先端の金属部分に線を足していく。

 魔石の周囲を囲むように細い装飾を入れ、そのまま柄の方まで伸ばしていく。


「これならロッドに見えなくもないですね」


 茜が言う。


「見た目変える必要あるか?」

「ありますよ」


 あるのか?


「性能変わらないだろ」

「見た目も商品には大事なんです」


 そういうものか。


「カッコイイ」


 葵が満足そうに設計図を見る。


「まぁいいか」

「見た目も拘りましょうよ」


 桃が呆れたように言う。


「でも、これなら初心者でも扱えそうですね」


 茜が設計図を見る。


「普通のロッドよりは少し重そうですけど」

「そこは必要だ」

「殴るために?」

「ああ」

「そこは拘るんですね」


 当たり前だ。


 俺たちの設計図も大体まとまった。


 桃と茜の方は、細身の柄に魔石と控えめな装飾。

 俺と葵の方は、木製の柄に補強を入れ、先端を金属で重くした形。

 そこに葵が細かい装飾を足している。


 二枚並べる。


「どうです?」


 桃が自分たちの方を指差す。


「回路も問題ないな」

「ちゃんと魔法職っぽいですよね」

「一条さんたちのは……」


 桃が隣の設計図を見る。


「ロッド」

「先に言わないでください」

「ロッドだろ」

「まあ、モーニングスターに比べたらかなりロッドっぽくなりました」

「でしょ」


 葵が少し得意そうに言う。


「装飾のおかげですけどね」

「カッコイイ」

「そこは否定しませんけど」

「いちじょー」

「なんだ?」


 葵がボツになった設計図を指差す。


「私の武器」


 ……それ、気に入ってたのか。


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