第43話 選べる方がいい
とりあえず、次はロッドを作ることに決まった。
企画書と設計図は三人に任せても大丈夫だろう。
「茜、設計図と企画書を任せて大丈夫か?」
「大丈夫ですが……」
茜が少し困った顔をする。
「結局、殴れるようにするんですか?」
そんなに引っかかるか?
「する」
葵が即答した。
「いや、ロッドは魔法を使うためのものですよ?」
「魔法職も筋肉だった」
「それはあの人が特殊なんですって」
んー、揉めてるな。
「一条さん、どうしますか?」
茜が俺を見る。
「殴るのは現実的じゃないか?」
「ソロならともかく、パーティならそこまで必要ない気がしますけど」
「そうか?」
「前衛の方がいますし、魔法職は後ろから攻撃しますから」
「後ろから来るかもしれないし、ソロのやつもいるだろ」
「初心者でソロですか?」
桃が聞く。
「好きなやつもいるだろ」
「いちじょー、友達いない」
関係ないだろ。
「まあ、ソロが好きな人もいますけど」
「桃も一人で潜ってたんだろ?」
「私は配信でしか潜らないですからね。そんな人とパーティ組む人いないですよ」
「桃ちゃんみたいに探索者を本業にしてない人も、ソロになることはありそうですね」
茜が言う。
「パーティだと、予定を合わせないといけませんから」
桃も頷く。
「仕事が終わってから潜る人とか、休みの日だけの人もいますし」
「なら、ソロ向けもあっていいだろ」
「それはそうですけど……」
桃が少し考える。
「でも、ソロでやりたい人って、最初は剣を買いません?」
「なんで?」
「普通、最初は自分の特性が分からないじゃないですか」
なるほど。
そういえば、あの判定方法は一般的じゃなかったんだったな。
探索者協会に期待しよう。
「身体強化型か魔法型かも分からないなら、とりあえず剣を選ぶ人が多いと思います」
「でも、続けてれば分かるだろ?自分が魔法型だって」
「ああ……」
「その時にソロを続けたかったら?」
桃が考える。
「ロッドに持ち替える?」
「近づかれたら?」
「……剣も持つとか?」
「二本になるだろ」
魔法を使うならロッド。
近づかれた時のために剣。
両方持てば済むが、一本で済むならその方がいい。
「殴れるロッドなら一本で済む」
「便利」
葵が頷いた。
「そう言われると、ちょっと便利な気がしてきました」
「だろ?」
「ちょっとだけですよ」
桃が念を押してくる。
「ただ、一条さん」
茜が口を開く。
「普通のロッドで殴ったら、すぐ壊れてしまいそうです」
確かに。
魔法を使うことが前提なら、剣みたいな強度は必要ない。
「じゃあ、強度強化の回路を入れるか」
「入れるんですか?」
「ああ。制御と威力のどっちかを外して、強度強化を入れる」
「威力残す」
葵が即答した。
「制御を外すんですか?」
茜が葵を見る。
「使いにくくなりません?」
「威力はロマン」
当たらなければ意味ないけどな。
「一条さんはどう思います?」
「初心者向けなら制御は残したい」
「じゃあ、威力を外します?」
桃が聞く。
「それだと倒すのに何発も必要になるかもしれない」
「じゃあ、威力も必要なんですね」
「ああ」
「制御も必要ですよね?」
「ああ」
「強度も?」
「殴るならいるな」
「全部必要じゃないですか」
そうなんだよな。
「三つ入れる」
葵が言う。
「できる?」
「できるが…」
「じゃあ、それでいいんじゃないですか?」
「いや」
「駄目なんですか?」
回路を三つ入れること自体はできる。
ただ、使える面積には限界がある。
「三つにすれば、一つずつの効果は落ちる」
「全部そこそこ?」
葵が言う。
「そうなるな」
「それは微妙ですね」
茜がホワイトボードを見る。
「初心者向けなのに、全部中途半端になるのは避けたいです」
「制御と威力なら、最初に考えてた通りなんですよね」
桃もホワイトボードを見る。
「ああ」
「強度を入れようとするから難しくなってるんですね」
「殴るなら必要だろ」
「またそこに戻るんですか」
「2つ作る」
葵が言った。
「2種類?」
「制御と威力。威力と強度」
威力が残るのは確定か。
「あ……」
「なるほど」
茜が頷いた。
「中途半端になるなら用途を分ければいいんですよ」
「用途?」
「はい。魔法を使うことを優先するなら、制御と威力」
「ソロで使うなら?」
「近づかれた時にも使えるように、強度を入れる」
「なるほどな」
無理に一つにまとめる必要もないか。
「じゃあ2種類作るか」
「本当に作るんですね」
「問題あるか?」
「設計が大変じゃないですか」
桃が少し笑う。
「じゃあ、私と茜さんで普通のロッドを考えます」
「普通ってなんだよ」
「魔法を使うためのロッドです」
「こっちも魔法使えるぞ」
「殴るのが前提じゃない方です」
「いちじょー」
「なんだ?」
「こっちは私もやる」
「ああ」
「やっぱりそっちなんですね」
桃が葵を見る。
「殴れる方が好き」
「知ってました」
「デザインも分けますか?」
茜が聞く。
「その方がいいだろうな」
回路も用途も違う。
同じ形にする必要もない。
「じゃあ、桃ちゃんと私で魔法職向けを考えますね」
「任せた」
「一条さんたちは?」
「殴りやすい形」
葵が即答した。
「ロッドとして使いやすい形も考えてくださいね?」
「両方考える」
「できる」
葵も頷く。
桃が俺と葵を交互に見る。
「急に不安になってきました」
失礼な。
ロッドは二種類作ることになったが、選べる方がいいだろ。
桃と茜は、制御と威力を補助する魔法職向けロッド。
俺と葵は、威力と強度を補助するロッド。
「殴れるロッド・・・殴ロッド」
それは流石にダメだな。




