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性能しか見ていない鍛冶師、左遷先でなぜかバズる~性能特化で赤字子会社を立て直す~  作者: Masaki


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第39話 大切なのは量

 最初に呼ばれた男は、俺の前まで来ると腕を組んだ。


 俺より頭一つ以上高く、腕も太い。

 どう見ても前衛で殴り合っていそうな体格だ。


「じゃあ、魔力を動かしてください」

「ああ」


 男が魔力を全身に巡らせる。

 そこに俺の魔力を流すと、男の魔力が身体の外へ出てきた。

 この量だと魔法型だな。


「魔法型ですね」

「……魔法型?」


 桃が後ろで呟いた。


「なんだ?」

「いや、その……」

「筋肉ムキムキ」


 葵が男の腕を叩きながら言う。

 お前何してんだ。


「絶対、身体強化型だと思ってました」

「見た目で決めるなよ」

「だって、この腕ですよ?」

「腕が太いと魔法使えないのか?」

「そういうわけじゃないですけど!」


 男が自分の腕を見る。


「まあ、よく言われるな」


 言われるんだ。

 五十嵐さんは何も言わず、手元の資料に書き込んでいる。


「次の方、お願いします」


 2人目が前に出た。

 同じように魔力を動かしてもらい、俺の魔力を流す。


「身体強化型。速度寄りですね」


 3人目。


「万能型です」


 その後も順番に判定していく。

 十分もかからず、10人全員が終わった。


「以上です」


 五十嵐さんが手元の資料を確認する。

 さっきまでとは違って、随分真剣な顔をしている。


「どうでした?」


 桃が聞く。


「……全員合っています」

「さすがいちじょー。さすじょー」


 葵が満足そうに頷く。

 変な略し方すんな。


「本当に10人全員です」


 五十嵐さんが、もう一度資料を確認する。


「最初の彼も?」

「はい。魔法型です」


 桃が男を見る。


「やっぱり魔法型なんだ……」

「まだ疑ってたのかよ」

 

 筋肉を信頼しすぎだろ。


「最初にあの方を選んだのは、あえてですか?」


 茜が五十嵐さんを見る。


「……分かりましたか」

「見た目だけなら、身体強化型だと思いますから」

「その通りです」


 五十嵐さんが俺を見る。


「見た目や体格から判断している可能性も確認したかったので、彼を最初にお願いしました」

「なるほど。そういう確認だったんですね」

「気になりませんでしたか?」

「見た目は判定に関係ないので」

「……そうですか」


 五十嵐さんは少し考えると、残っている探索者たちを見た。


「では、次はこちらの方々で確認します」

「初心者ですか?」

「はい。まだ適性が判明していない方々です」


 今度は答えが分からない相手か。


「それと、もう一つ確認したいことがあります」

「なんですか?」

「この方法は、一条さん以外でもできるんですよね?」

「できますよ」


 五十嵐さんが少し驚いた顔をする。


「では、私がやっても?」

「大丈夫です」

「分かりました」


 五十嵐さんが初心者の一人を前に呼ぶ。


「魔力を動かしてください」

「はい」


 初心者が魔力を全身に巡らせる。

 五十嵐さんはその様子を確認すると、俺がやったように魔力を流した。

 魔力が足りてないな。


「…………」


 やはり何も起きない。


「一条さん」

「はい」

「何も起きませんが」

「魔力が足りてないですね」

「……足りない?」

「はい」

「同じようにやったつもりなんですが」

「やり方は合ってますよ」

「では、なぜ?」

「因子を活性化させるには、一定量の魔力が必要なので」


 五十嵐さんが自分の手を見る。


「私の魔力量では足りないと?」

「そうですね」

「…………」


 ちょっと傷ついた顔をするな。


「何人でやっても大丈夫なんですか?」


 桃が聞いてきた。


「肝心なのは魔力量だから、人数は関係ないな」


 たぶん。


 協会の職員が1人加わる。

 2人で魔力を流す。


「どうですか?」

「まだですね」

「もう1人お願いします」


 3人。


「まだです」

「……もう1人」


 4人。


「もう少しですね」

「まだ増えるんですか?」

「あと1人いれば足りると思います」


 5人目が加わった。


「せーので流しますよ」


 五十嵐さんの合図で、5人が一斉に魔力を流す。

 しばらくすると、初心者の身体から魔力が漏れ出した。


「出ました!」

「おお!」


 桃が声を上げる。


「魔法型ですね」

「ほ、本当に出た……」


 五十嵐さんたちが魔力を止める。


「はあ……」

「疲れた……」

「結構持っていかれますね……」


 5人ともぐったりしている。


「お疲れさまです」

「いちじょーは一人でやってた」


 葵が俺を見る。


「ああ」


 五十嵐さんも俺を見る。


「これを一人で……」


 五十嵐さんは、疲れ切った4人を見る。


「なるほど……」

「一条さん」


 桃が手を挙げた。


「なんだ?」

「改めて聞きますけど、一人で何人分あるんですか?」

「知らん」

「怖っ」


 なんでだよ。


「では、残りの方は一条さんにお願いしてもいいですか?」


 五十嵐さんが言う。


「分かりました」


 さっさと終わらせて帰るか。


「次の方、お願いします」


 一人ずつ前に出てもらい、同じように判定していく。


「身体強化型。筋力寄りですね」


「魔法型です」


「万能型ですね」


 何人か終わったところで、桃が俺の袖を引いた。


「一条さん」

「なんだ?」

「次の人です」

「次の人がどうした?」


 桃が妙に嬉しそうに笑う。


「私に相談してきた人です」

「……は?」


 前を見る。

 一人の若い探索者が、少し緊張した様子でこちらへ歩いてきていた。


「なんでいるんだよ」

「探索者協会が今回の検証に参加する初心者を募集してたので、応募してみたらって教えたんです」

「それで?」

「選ばれました!」

「桃ちゃん、ちゃんと考えてたんですね」


 茜が感心したように言う。


「もちろんです!」

「珍しい」

「葵ちゃん!?」


 そこは俺も少し思った。


「桃が選んだわけじゃないんだな?」

「はい。応募しただけです。選んだのは協会ですよ」


 なら問題はないか。


 若い探索者が俺の前に立った。


「初めまして」

「初めまして」


 桃が横から顔を出す。


「この人です! 前に話した相談者!」


 分かったから、何度も言わなくていい。


 そういえば‥‥

 相談内容ってなんだっけ。





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