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性能しか見ていない鍛冶師、左遷先でなぜかバズる~性能特化で赤字子会社を立て直す~  作者: Masaki


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第33話 採掘

セーフティゾーンを出て、しばらく歩いたところで足を止めた。


「この辺りだな」


 目の前にあるのは、他と変わらない岩壁だ。

 桃が壁を見回す。


「ここに魔装金属があるんですか?」

「ああ」


 茜も壁へ近づき、岩肌をじっと見つめた。


「普通の壁にしか見えませんね」

「黒い」


 葵が壁を指差す。


「全部黒いだろ」


『どこにあるの?』

『全部同じに見える』

『本当に見つけられる?』

『鑑定でも使うのか?』


「知っていると思うが、魔装金属は、魔力を流すと光る性質がある」


 壁へ手を当てる。


「それを利用して探す」


 目の前の壁へ魔力を流す。

 範囲は、手を当てた場所を中心に半径1メートルほど。

 広げすぎれば魔力が散る。狭すぎれば探せる範囲が減る。


 均一に広げながら、岩の奥まで魔力を通していく。

 少しすると、壁の中に青白い光が浮かび上がった。


「光った!」


 桃が声を上げる。

 岩壁の奥に、細長い光の筋が伸びている。


『おお!』

『本当に光った』

『壁の中が見える!』

『これが魔装金属?』


「そうだ。この光っている部分が魔装金属だ」


 手を離すと、光も消えた。

 桃がすぐに壁へ手を当てる。


「私もやってみます!」

「半径一メートルくらいを意識しろ。魔力を散らさず、壁の奥まで流すんだ」

「分かりました!」


 桃が集中し、壁へ魔力を流す。

 魔力の広がり方は悪くない。

 だが、壁は光らなかった。


「……光りません」


 続けて茜と葵も試したが、結果は同じだった。


「私も駄目ですね」

「光らない」


『三人とも無理なのか』

『思ったより難しい』

『監督だけおかしい説』

『もう通常運転だろ』


 桃が壁から手を離し、こちらを見る。


「魔力の流し方が悪いんですか?」

「いや。制御は問題ないな」


 三人とも、鍛冶師として魔力を扱ってきた。

 この程度の範囲なら、散らさず広げることはできている。


「足りないのは魔力量だ。壁の奥まで魔力が届いてない」

「制御だけじゃ駄目なんですね」


 茜が納得したようにうなずく。


「ああ。魔力を広げながら、岩に阻まれないだけの量を流す必要がある」

「いちじょーの魔力が多いだけ」

「それもある」

「否定しないんですね」


 桃が苦笑した。


『結局、魔力量も必要』

『簡単には真似できないな』

『一条式はだいたい本人専用』

『桃ちゃん残念』


「見つけ方は分かりましたけど、ここからどうやって採るんですか?」

「周りの岩を壊して取り出すしかない」

「普通ですね」

「特殊な方法なんてない」


 工具袋から、ピックに似た採掘道具を取り出す。

 先端は細く尖っており、柄の内部には魔力を通すための回路が刻まれている。


 光があった位置を確認し、壁へ向けて振り下ろす。


 ガンッ。


 先端が岩壁へ深く食い込んだ。


「いくぞ。危険だから離れた方がいい」


 桃たちは慌てて離れていく。


 柄を握ったまま、道具を通して魔力を送り込む。

 魔装金属を避けるように、周囲の岩へ魔力を広げていく。


 次の瞬間。


 バキッ。


 岩壁の内側から亀裂が走った。

 亀裂は一気に広がり、魔装金属の周囲だけが崩れ落ちる。


「えっ!?」


 桃が驚いて後ろへ下がった。

 岩が崩れた場所から、青白い光を帯びた魔装金属が姿を現す。


『壊した!?』

『思ったより豪快』

『内部から破壊したのか』

『採掘ってもっと地道じゃないの?』


「探す時はあんなに繊細だったのに、採る時は脳筋ですね」

「効率がいい」

「否定してくださいよ!」


 露出した魔装金属へ手を伸ばし、表面についた岩を払う。

 量も悪くない。

 これだけあれば、しばらくは足りるだろう。


「桃、袋」

「はいはい。荷物持ちですからね」


 桃はリュックから袋を取り出し、こちらへ広げた。

 採れた魔装金属を入れると、桃の腕が下がる。


「重っ!」

「よろしく」

「少しは手伝ってくださいよ!」

「今はそこに置いておけばいいだろ」


『荷物持ち頑張れ』

『約束だから仕方ない』

『桃ちゃんの仕事きた』

『監督、目的達成』


 まだ一か所目だ。

 この周辺なら、もう少し採れる。


 俺は次の壁へ手を当てた。

 

 それからいくつかの採掘ポイントを回り、魔装金属を採っていく。

 今回は当たりらしい。


 どの鉱脈も質が良く、予定以上の収穫になっていた。


『結構採れたな』

『まだ光る場所ある』

『採掘って意外と面白い』


 桃が袋を見て息を吐く。


「一条さん……さすがにもう無理です」

「まあ、こんなもんか」


 袋の中を確認する。


「これだけあれば一か月は持つな」


 茜が少し驚いたように袋を見る。


「結構採りましたけど、この量で一か月しか持たないんですか?」

「これから精錬して、不純物を取り除く。それに研究でも使うからな。意外とすぐなくなる」

「研究って、お休みの日のですか?」

「ああ」


 葵が袋を見つめる。


「多すぎ」


『研究でなくなるのか』

『趣味の消費量じゃないw』

『休日にどれだけ作ってるんだ』

『やっぱり鍛冶好きなんだな』


 奥の通路から、大きな魔力が近づいてくる。

 やはり来たか。


「ほら、来るぞ。準備しないと」

「来るって何がですか?」


 桃が言いながら盾を構える。

 茜も杖代わりに片手剣を握り直した。

 葵は辺りを見回す。


「……何もない?」

「いや」


 茜の表情が変わる。


「何かいます!」


 次の瞬間。

 奥の曲がり角から、大柄な影が姿を現した。


 ホブゴブリンだ。


「っ……茜さん!」

「任せて!」


 茜はすぐに手をかざし、火球を放った。


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