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性能しか見ていない鍛冶師、左遷先でなぜかバズる~性能特化で赤字子会社を立て直す~  作者: Masaki


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32/63

第32話 8階層到着

その後も6階層を進み、何度かゴブリンやスライムと戦闘になった。

 

 桃は盾で正面を支え、茜が魔法で牽制する。

 隙ができれば、葵が一気に距離を詰めて仕留める。

 戦い方は変わらない。


 三人とも、魔力の扱いはそれなりにできている。

 葵は戦闘技術こそまだまだだが、速度に任せて強引に距離を詰め、そのまま攻撃へつなげていた。

 茜も判断は少し遅いが、魔法の発動が早い分、十分に対応できている。

 万能型の桃は、経験者というだけあって攻守のバランスを見ながら動いていた。


 もっと慌てると思っていたが、意外だ。


『桃ちゃん普通に前衛できてる』

『茜さん魔法撃つの早いな』

『葵ちゃん近すぎるw』

『盾と剣、使えてるじゃん』


 戦闘を終えた桃が、盾と片手剣を見比べる。


「やっぱり、この盾と剣はバランスがいいですね。私が使っても安定してます」


 葵は片手剣を軽く振った。


「近くで攻撃すると使いにくい」

「葵ちゃんは近くに行きすぎです!」


 桃がすぐにツッコむ。

 茜は二人を見ながら笑った。


「この三人だと、桃ちゃんが一番合ってるかもしれないね」

「ですよね!」


 桃は得意そうに胸を張った。


『桃ちゃん専用装備みたいになってる』

『万能型と相性いいのか』

『葵ちゃんは短剣の方がよさそう』

『本人が一番嬉しそうw』


戦闘に問題はないな。

このまま進むか。


「このまま8階層まで進む。このペースなら昼には着くだろう」


 茜が歩きながら尋ねる。


「魔装金属を採るんですよね?」

「そうだ。8階層で採れる魔装金属は質がいい。下手に中層へ行くより使いやすい」


 桃が不思議そうに首を傾げた。


「気になってたんですけど、魔装金属って深い階層ほど質が良くなるじゃないですか。何か理由があるんですか?」

「知らないのか?学校で習うだろ」


 三人は顔を見合わせた。

 茜が苦笑する。


「私は習ってないです。学校では『深層ほど質が良い』って教わりました」

「私もです」

「低層は使えない」


 葵までうなずく。


「深ければいいってわけじゃない。魔装金属は名前の通り魔力を装うことのできる金属だ。」

「装う?」

「そうだ。魔装金属は、魔力を取り込みながら結晶化する。その際に結晶構造の内部へ魔力が定着し、その魔力濃度や結晶の状態によって品質が変わる」


『急に理科始まった』

『監督先生』

『テストに出ますか?』

『もう分からん』


 桃もコメント欄を見て苦笑する。


「皆さんと同じ気持ちです……」


 茜は考え込むように口を開いた。


「つまり、魔力が多い場所でできた魔装金属ほど、結合するときに取り込める魔力が増え、品質が良くなりやすいってことですか?」

「ああ。深層になるほど周囲の魔力濃度も高くなるから、質のいい魔装金属が採れる可能性も高くなる」

「じゃあ、やっぱり深い方がいいんじゃないですか?」

「可能性が高いだけだ。低層でも魔力が集まる場所なら、深層より質のいいものが採れることもある」


『なるほど』

『茜さんの説明で分かった』

『通訳助かる』

『監督の説明、難易度高い』


 桃はしばらく黙って考えたあと、大きくうなずいた。


「……分かりました!」

「本当か?」

「とりあえず、採ればいいんですね!」


『分かってないw』

『結論だけ合ってる』

『採ればヨシ!』


「説明を聞いてたか?」

「途中までは!」

「桃はいつもそう」

「葵も同じじゃん!」


『仲間割れw』

『葵ちゃん巻き込まれた』

『どっちも聞いてない』

『茜さんだけ理解してる』


「……行くぞ」


 俺は歩き出した。




 その後、大きなトラブルもなく8階層へ到着した。

 目的地までもう少しだ。


 桃は浮遊カメラへ向かって笑顔を向ける。


「皆さん! 八階層に着きましたー!」


『順調!』

『思ったより早い』

『初心者三人すごい』


 葵はその場にしゃがみ込む。


「疲れた」

「お前は突っ込みすぎだからだ」

「切り刻みたい」

「だから疲れる」


 桃が苦笑する。


「葵ちゃん、一人だけ戦い方が猪突猛進なんですよね」

「褒められた」

「褒めてないよ!?」


 茜は周りを見回してから口を開いた。


「そろそろお昼ですね。一度休憩しますか?」


 俺は時計を確認する。


「そうだな。この先に目的の場所がある。採掘を始める前に休憩しておこう」


『お昼休憩!』

『監督もご飯食べるの?』

『お弁当気になる』


 桃は待ってましたと言わんばかりにリュックを下ろした。


「今日は茜さんと一緒にお弁当を作ってきました!」


 中から大きめの保冷バッグを取り出す。

 蓋を開けると、おにぎりに卵焼き、唐揚げ、野菜のおかずが並んでいた。


「おぉ……」


 葵の目が少しだけ輝く。


「お弁当」

「葵ちゃん、何も持ってきてないでしょ?」

「うん」

「分かってたから、一緒に作ってきたよ」

「やった」


 葵は嬉しそうに受け取った。


『葵ちゃんw』

『最初から用意する気ゼロ』

『茜さんと桃ちゃん優しい』



「一条さん、それ昼ご飯ですか?」

「ああ」


 俺がバッグから取り出したのは栄養補助食品とプロテイン飲料だ。


「時間をかけずに栄養が摂れる」

「それ、ご飯じゃなくて燃料ですよ!」

「飯は燃料だ」


 一瞬、空気が止まる。


「違います!」


 桃が全力でツッコんだ。


「ご飯は楽しむものです!」

「栄養が摂れれば同じだろ」

「全然違います!」


 茜も苦笑する。


「たまにはちゃんとしたもの食べた方がいいですよ」


 葵は弁当を頬張りながら小さくうなずいた。


「おいしい」

「ほら!」


 桃は勝ち誇ったように俺を見た。


「……分かった」


 俺は栄養補助食品をバッグへ戻し、桃から弁当を受け取る。


「よし!」


 桃は満足そうに笑った。


「一条さん、好き嫌いとかあります?」

「特にない」

「一番料理する側が困る答えですね」


 茜が苦笑する。


 四人で昼食を囲み、しばらく休憩を取る。

 桃たちはコメントを拾いながら視聴者と雑談を続けていた。


「そろそろ行くぞ」

「次はいよいよ魔装金属ですね!」


 桃は期待に満ちた顔で立ち上がった。


『いよいよ採掘!』

『魔装金属の採掘って初めて見る』

『見つけられる?』

『質の違い分かるのかな』


 俺たちはセーフティゾーンを離れ、目的の鉱脈へ向かった。


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