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性能しか見ていない鍛冶師、左遷先でなぜかバズる~性能特化で赤字子会社を立て直す~  作者: Masaki


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30/62

第30話 判定方法

土曜日。


 俺たち四人は、ダンジョンの入口前に集まっていた。

 桃が浮遊カメラを取り出し、起動する。


「それじゃ、配信始めますね」


 小型のカメラがふわりと浮かび、俺たちの前へ移動した。

 桃はカメラに向かって笑顔で手を振る。


「皆さん、モモちゃんねるへようこそ!今日はコラボ企画です!」


『おはよう』

『待ってた!』

『一条さんいる!』


 流れてきたコメントを見て、桃は得意そうに俺を指した。


「そうです! 約束通り、一条さんを連れてきました! 私と一条さんの仲なら余裕です!」


 ただの同僚だろ。


『約束してないって言ってたぞ』

『お願いするだけって言ってた』

『押し切ったなw』

『一条さん逃げられなかったか』


「細かいところは気にしないでください! それと今日は、茜さんと葵ちゃんも来ています」


 桃に促され、茜がカメラの前へ出る。


「茜です。よろしくお願いします」


『茜さんだ!』

『よろしくー』

『探索者姿も綺麗』


 続いて葵もカメラへ顔を向けた。


「いちじょーのおまけできた」


 自分で出たいって言ってたろ


『葵ちゃん自由すぎるw』

『おまけ扱い』

『今日も平常運転』


 桃は笑いながら話を戻す。


「今日はこの3人でパーティーを組んで、桜坂製の片手剣と盾の性能を確認していきます。茜さん、葵ちゃん、大丈夫ですか?」


 茜は盾を持ち直し、少し困ったように笑った。


「緊張しますね。戦うのは初めてなので」


 葵は片手剣を軽く持ち上げる。


「任せて」


『温度差w』

『茜さん頑張れ』

『葵ちゃん頼もしい』

『あれ、一条さんは?』


 コメントを見た桃が、親指で俺を示した。


「一条さんは監督です!」


『ここでも監督w』

『室長じゃなくて監督だった』

『監督、仕事してください』

『一番強い監督』


 誰が監督だ。


「茜さんと葵ちゃんは初心者なので、まだ適性が分かってないんです。まあ、私もこれかなってくらいで、まだ確定はしてないんですけど」


 葵が少し考えてから口を開く。


「多分、魔法使い」


『盾と剣使わんやんw』

『ローブ似合いそう』

『杖持ってそう』

『完全に後衛』


 桃がコメントを見ながら笑う。


「確かに葵ちゃん、見た目だけなら魔法使いっぽいかも。じゃあ茜さん、適性が分からない時って、隊列はどうするか知ってますか?」

「そうですね。最初は身体強化も魔法も試しながら、前衛も後衛もやるんですよね。自分に合う役割を探していくことになると思います」

「ちょっと待て」


 三人がこちらを見る。


「さっきから適性が分からないと言ってるが、調べればいいだろ」


 桃が不思議そうに首を傾げた。


「だから、調べるために色々なことをやって、得意なものを探すんじゃないですか?」


「何言ってるんだ。魔力を使えば簡単だろ」


 桃はしばらく黙ったあと、茜と葵の顔を見た。


「そんな方法、聞いたことありませんよ?」


 葵も首を傾げる。


「いちじょー、何言ってるか分からない」


 茜は興味を持ったように俺を見る。


「一条さん、何か方法があるんですか?」


 まさか誰も知らないとは。


「身体の中で魔力は回せるな?」

「はい。これは鍛冶師はできないと話になりませんから」

「そうだな。その状態で外から魔力を流すと、体内を回っている魔力の癖が表に出るんだ」

「癖ですか?」


葵が不思議そうに見てくる。


「身体強化が得意なやつは身体能力が上がるし、魔法が得意なやつは魔力が外へ出ようとする。それで適性が分かる。知らないのか?」


 しばらく誰も答えなかった。

 桃が最初に口を開く。


「そんな方法、本当にあるんですか? 私、聞いたことないんですけど」

「いちじょークオリティー」

「一条さんだからできる、みたいにまとめないでください」


 桃が苦笑する横で、茜は真剣な顔をしていた。


「それが本当なら、大発見ですよ」


『初耳なんだけど』

『そんな判別方法あるの?』

『監督、また常識壊した?』

『茜さんの反応見るとガチっぽい』

『一条式適性検査w』


 コメント欄が一気に騒がしくなる。

 適性を調べるだけの話なんだが。

 

「とりあえず、やってみればいい」


 俺がそう言うと、桃が手を挙げた。


「そうですね。私からいいですか? 私はある程度目星がついているので、正しいかどうか分かると思います」


「分かった。魔力を全身に回してくれ」

「はい」


 桃は目を閉じて集中する。

 すぐに魔力が動き始め、全身を回っているのが分かった。


「できました」

「それではいくぞ。違和感はあると思うが、魔力はそのまま保ってくれ」


 桃の肩に触れ、外から魔力を流す。


「っ……」


 桃は一瞬苦しそうな顔をしたが、体内を回る魔力は乱れなかった。

 鍛冶師だけあって、魔力の制御はしっかりできている。

 しばらくすると、桃の手から魔力が流れ出す。


「どうだ? 何か感じるだろ」

「は、はい。とても不思議な感じです。魔力が勝手に整っていくというか、自然に動いていきます」

「魔力が外に出ている。魔法は使えそうだな。身体能力はどうだ?」


 桃は目を開け、その場で軽く足を動かした。


「普段より体が軽く感じます」

「なら万能型だな。魔法と身体強化の両方に反応している」

「やっぱり!」


 桃は嬉しそうに笑った。


「私も万能型じゃないかなって思ってたんですよ!」


『本当にすぐ分かった』

『桃ちゃん万能型!』

『何でもできるやつ?』

『器用貧乏ともいう』


「最後のコメントいりません!」

「次は私」


 葵が一歩前に出る。


「やり方は大丈夫だな?」

「うん」


 葵はすぐに魔力を全身へ巡らせた。


「できた」


 俺は肩へ手を置き、魔力を流す。

 次の瞬間だった。


「おっ」


 葵の姿が一瞬ぶれた。


「速っ!」


 桃が思わず声を上げる。

 葵自身も驚いたように自分の足を見る。


「なんか……体が勝手に前へ出る」

「身体能力は?」

「軽い」


 その場で軽く跳ぶ。


「いつもより高く跳べる」


 俺はうなずいた。


「身体強化型だな」

「特に速度寄りみたいだ」

「魔法使いじゃなかった」


 葵は不満そうだ。


『速っ!』

『見えなかった』

『スピード型か』

『魔法は諦めて』


「次、私ですね」


 茜が一歩前へ出る。


「ああ。準備はいいか?」

「はい」


 茜は静かに目を閉じ、魔力を全身へ巡らせた。


「できました」


 肩へ手を置き、魔力を流す。


「っ……」


 一瞬だけ表情が揺れる。

 だが、すぐに落ち着きを取り戻した。


「どうだ?」


 茜は両手を見つめる。


「魔力が……外へ出たがっています」


 手のひらから淡く光る魔力が漏れていた。


「身体能力は?」


 軽く足を動かした茜は首を横に振る。


「少し軽くなった気はしますけど、よくわからないです」

「魔法型だな。身体強化も使えるが、魔法の方が伸びる」


 茜は少し安心したように息を吐いた。


「得意な魔法はどうやって決まるんですか?」


 桃が不思議そうに首を傾げる。


「イメージしやすい魔法ほど威力がでるな」

「イメージ?」

「魔法は思い描きやすいものほど形になる。攻撃が得意なやつもいれば、補助や回復が得意なやつもいる。それは使っていくうちに分かるさ」


 茜は真剣な顔で頷いた。


「とりあえず、色々な魔法を使っていきますね」


 速度型と魔法型に万能型か。

 悪くない組み合わせだ。


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