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性能しか見ていない鍛冶師、左遷先でなぜかバズる~性能特化で赤字子会社を立て直す~  作者: Masaki


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第29話 出てください!

夜。


 桃は自宅の一室でカメラをセットすると、笑顔で手を振った。


「こんばんはー! 桃チャンネルへようこそ!」


 配信が始まると、コメントが一気に流れ出す。


『こんばんはー』

『一条さんは?』

『ボス戦また見たい』


「今日は私の配信なんですけど!?」


 思わずツッコミを入れると、さらにコメントが増える。


『桃も好き』

『でも一条が見たい』

『一条さんまだ?』


 桃は少し考えたあと、パンと手を叩いた。


「分かりました!皆さんに私をもっと知ってもらいましょう。今日は何でも質問に答えます!」


『好きな食べ物は?』


「カレーです!」


『休日は何してる?』


「ショッピングしたり、動画見たりですね。」


『一条は何歳?』


「なんでですかー!!」


『身長は?』


「160センチですよー」


『いや、一条の』

『そして絶対160ない』


「朝測ればあります!って私じゃなくて一条さん!?」


『彼女いる?』


「知りませんって!」


『好きなタイプは?』


「そうですねー優しくて‥」


『だから、一条の』


「知ってましたよ!」


 コメント欄は笑いで埋まっていく。


「もう!」


 桃は頬を膨らませた。


「私の質問コーナーなのに、一条さんのことばっかりじゃないですか!」


『今度呼んで』

『出演して』

『お願い』


 桃は小さく息をついた。


「分かりました!今度、一条さんにお願いしてみます」


『約束!』

『楽しみ』

『待ってる』


「約束じゃないですよ!? お願いするだけですからね!」


 画面に向かって指をさす。


「もし断られたら、一緒に残念がってください!」


『もう断られる前提で草』

『頑張れ桃』

『応援してる』


「それじゃあ今日はゲームでもしようかな。おすすめのゲームってある?」


桃の配信は深夜まで続いた。


 ◇


 翌朝。


「一条さん!」


 出社した翠へ、桃が一直線に駆け寄った。


「お願いがあります!」

「おはよう。なんだ?」

「配信に出てください!」

「断る」

「まだ内容言ってないです!」

「仕事じゃないんだろ?」

「なんで分かったんですか!?」

「顔」

「顔で分かるんですか!?」


 茜が苦笑する。


「桃、昨日の配信で何かあったの?」

「うっ……」


 桃は目を逸らした。


「実は、お願いするって言っちゃいました。」

「断る」

「まだお願いしてません!」

「内容は同じだろ」

「配信に出てください!」

「断る」

「なんでですか!」

「メリットがない」

「お金払います!」

「あるからいい」

「ご飯作ります!」

「自分で作った方が美味い」

「ひどい!」

「いちじょーのご飯食べたい」

「なんでだよ」


 葵が料理に食いついた。

 自分でつくれ。


 桃は両手で頭を抱えた。


「じゃあ、荷物持ちます!」

「……」

「決定ですね!」

「まだ何も言ってない。」

「でも断りませんでした!」

「そもそも暇じゃない」


 葵が、不思議そうに首を傾げた。


「いちじょー」

「なんだ」

「休みの日って何してる?」

「ほとんど趣味だな」

「趣味って?」

「鍛造で武器を作る」


 桃が思わず声を上げる。


「えっ、休みの日も仕事してるんですか?」

「趣味だ」

「仕事と変わらないじゃないですか」

「仕事だと好きな武器は作れん」

「なるほど」


 茜が感心したようにうなずく。


「納得するんだ!?」


 桃がすかさずツッコむ。


「今週末は素材が足りなくなったからな。取りに行く予定なんだよ」


「行く」


 葵が即答した。


「なんでだよ」

「興味ある」


 その瞬間、桃の目が輝いた。


「それです!」

「?」

「ダンジョン配信しましょう!」

「断る」

「えぇぇぇぇっ!?」


葵がおもむろに言う。


「私、出る」


 桃が目を輝かせる。


「本当!?」

「茜も一緒」

「えっ、私も?」

「一人は嫌」


 茜は困ったように笑う。


「えぇ……しょうがないですね」

「やった!」


 桃は勢いよくガッツポーズをした。


「でも二人って探索者でしたっけ?」

「登録はしてるよ。最初のダンジョン配信の時に、一緒に登録したから」

「戦った事ない」

「初心者じゃないですか!」

「大丈夫。いちじょーの戦い方見た」


 天才か。


 桃は何かを思いついたように顔を上げる。


「だったら、桜坂製の片手剣と盾を使って、初心者二人が初めてダンジョンに挑戦ってどうですか?商品紹介にもなるし、初心者目線の感想も聞けます!」


 茜もうなずく。


「それは面白そうだね」

「私もやる」


 葵も即答した。

 そしてこっちを見る。

 嫌な予感しかしない。


「いちじょーも一緒」

「なんでだよ」

「いちじょーに教えてもらう」


 見て分かるんじゃないのか。


 桃も負けじと続ける。


「部下の安全のためです!」


 3人だけで行かせる方が危険か。

 怪我をして仕事に影響でるのは避けたい


「……」

「お願いします!」

「しょうがない。荷物持ちも手伝えよ」

「やったー!」


 桃がガッツポーズを決める。


「じゃあ今週末ですね!」

「ああ。8階層に魔装金属が取れるスポットがあるからそこまでは行きたい」

「8階層?私たち初心者ですけど、大丈夫です?」


茜が不安そうにこちらを見ている。


「問題ないだろ。10階層までは初心者エリアだし、桃は経験者だろ?トラブルがあっても対応できる」

「あ、私5階層までしか行った事ないです」


 マジか。


「というか、5階層も前の配信の時に初めて行きました」

「桃も初心者」

「危なくないですか?」


茜は顔がより不安そうになった。


「‥大丈夫だ。俺1人でも3人守ることは出来るからな」

「いちじょーかっこいい」

「その代わりちゃんと話を聞けよ」

「分かってます!一条室長の初心者教室ですね」


 桃は一人で満足そうに何度もうなずく。


「大丈夫ですか?一条さんの負担大きそうですけど」

「大丈夫だ。俺は教えだけだ。基本さえ覚えれば10階層までは問題ない。」

「‥それって私たちが大変なんじゃ?」

「厳しくするからついてこいよ」


 茜が苦笑する。


「頑張る」


 葵も小さく笑った。


 今週末は、予定より少しだけ賑やかになりそうだ。


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