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性能しか見ていない鍛冶師、左遷先でなぜかバズる~性能特化で赤字子会社を立て直す~  作者: Masaki


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第26話 素直

盾が完成して数日。 

 量産も問題なく進み、明日から店頭に並ぶことになった。


 今日はその宣伝のための公式配信だ。

 仕事とはいえ、やっぱり慣れない。

 人前であんなに楽しそうに話せる桃が信じられん。


「それじゃあ始めます!」


 桃がカメラへ向き直る。


「みなさん、こんにちは! もも……」


 一瞬だけ言葉が止まる。


「……です! 桜坂魔装公式チャンネルへようこそ!」


 ぜったいにわざとだ。


『今モモちゃんねるって言った?』

『危なかったな』

『桃ちゃん緊張してる?』

『わざとだな』

『わざと』

『あざとかわいい』


 コメントも分かってる


「今日は前回の配信でみなさんと決めた初心者向けヒーターシールドが完成しました!」


 桃が盾を持ち上げる。


「明日から販売開始になります!」


『完成おめ!』

『早い!』

『待ってた』


「それでは、商品の説明を三枝主任お願いします!」

「はい」


 茜が盾を持ち上げ、カメラへ向ける。


「今回開発したヒーターシールドは、初心者の方でも扱いやすいように、軽量化の魔力回路を組み込んでいます。これにより、長時間使用しても疲れにくく、構えやすくなっています」


『軽量化か』

『初心者にはありがたい』

『盾って重いもんな』


「葵ちゃん、実際に持ってみてどうだった?」

「軽い」

「一言!」


 桃が笑う。


「腕が疲れない」

「そう、それが伝えたかったんです!」


『分かりやすい』

『一言で終わった』

『でも伝わる』


 茜が続ける。


「さらに、物理耐性の魔力回路も組み込んでいます。中層までのモンスターであれば、十分に攻撃を受け止められる性能です」


『物理耐性もあるのか』

『基本だから入れてもらわないと』

『初心者なら十分すぎる』

『安心感あるな』


「実験でも、びくともしなかったよね」


 桃が振る。


「うん」


 葵が頷く。


「ちゃんと受け止めた」

「そのあと私たちも安心しました」


 茜も笑う。


『試験もちゃんとやったんだ』

『いいね』

『中堅者までいけそうだな』


「そして、魔法耐性の魔力回路も組み込んでいますので、遠距離からの魔法攻撃にも対応できます」


 一瞬、コメントが止まった。


『……え?』

『今なんて?』

『魔法耐性?』

『軽量化、物理耐性、魔法耐性?』

『三つ!?』

『聞き間違いじゃないよな?』

『三回路入ってるの!?』


 一気にコメントが流れ始める。


「はい」


 桃が嬉しそうに頷く。


「三種類の効果が入っています!」


『普通二つまでじゃなかった?』

『量産品だよな?』

『どうやって入れたんだ?』


「一般的な盾では、二種類の魔力回路を組み込むことが多いです」


 茜は慌てず説明を続ける。


「今回は盾の面積を活かして回路を配置し、片手剣でも使用した回路の合成技術を応用することで、三種類の回路を組み込めるようになりました」


『片手剣の応用か』

『なるほど』

『盾だから面積も使えたのか』

『ちゃんと進化してる』

『量産でこれ作れるのすごいな』


「設計は本当に苦労しました」


 茜が苦笑する。


「回路を少し変えるだけで繋がらなくなったり、逆に干渉したりして……」

「何回も書き直した」


 葵が言う。


「桃ちゃんも」

「そこは私だけじゃないよ!」

「私も」


 茜が笑う。


「三人で何枚描いたか分からないくらいです」


『試行錯誤』

『配信でそこ見たかった』

『努力が伝わる』


「でも、その分いい盾になったと思います」


 茜がそう締めくくると、コメント欄には肯定的な反応が並んだ。

 

 その後も問題なく進み、コメントの流れが、少しずつ落ち着いてきた。


『いい盾だな』

『片手剣と合わせて初心者セットでいいだろ』

『とりあえず現物みてから』

『今日も楽しい配信』

『毎回驚きがある』

『いちじょークオリティー』


 人のせいにするなよ


『そういえば疑問なんだけど』

『盾って青くできないの?』

『今まで確認されてないなら、無理なんじゃない?』

『剣より大きいしな』


 桃がコメントを読み、少し考える。


「青い盾ですか……私も見たことないですね」


 そのまま盾へ視線を落とした。


「でも、作れるならロマンがありますね!」


『分かる』

『絶対かっこいい』

『青い盾で魔法を防ぎたい』

『勇者の盾』


「私も見たことはありませんね」


 茜もコメント欄を見る。


「盾は剣よりも大きいので、必要な魔力量が多そうですしね」


『なるほど』

『一理ある』

『やっぱ無理なのか』

『存在しないのには理由があるんだな』


「一回だけ見た」


 葵が言った。


『ん?』

『一度?』

『あるの!?』

『どこで?』

『いつ見た?』


 コメントの流れが一気に速くなる。

 桃が葵を見る。


「葵ちゃん、その話は……!」


『その話?』

『桃ちゃんも知ってるな』

『今の反応は変』

『絶対あるじゃん』


 桃の笑顔が固まった。


「いや、その……」


『一条か?』

『どうせ一条だろ』

『いちじょークオリティー』

『また室長が何か作ったのか』


「まだ一条さんとは限りませんよー!」


 桃が慌てて否定する。


『じゃあ誰?』

『知ってる時点で怪しい』

『桃ちゃん見たことあるんだろ?』


「私は見てません!」

「作っているところは見てない」


 葵が付け足した。


「葵ちゃん!」


『作ってるところは?』

『完成品は見たのか』

『完全にあるじゃん』

『室長で確定』


 桃が口を開いたまま止まる。

 葵はコメント欄を見たまま、首を傾げていた。

 自分が何を言ったのか分かっていないらしい。


 桃と茜は、困ったようにこちらを見た。


 ……仕方ない。


 説明した方が早そうだ



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