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性能しか見ていない鍛冶師、左遷先でなぜかバズる~性能特化で赤字子会社を立て直す~  作者: Masaki


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第21話 出演依頼

追加分の片手剣を納品した週明け。

久しぶりに第一製作課だけで仕事をしていた。


静かだ。


この先週は、第二製作課と第三製作課から8人も来ていた。

人数が減っただけで、作業場が広く感じる。


「静かですね」


桃が言った。


「ああ」

「寂しい?」


葵が聞いてくる。


「仕事がしやすい」

「素直じゃない」


同じ会社なんだ。

いつでも会える。


片手剣の製作も終わった。


今のうちに、次の仕事を進めたい。

短剣も片手剣も売れている。

在庫がなくなれば、また作ることになるだろう。

その前に、新しい武器の設計だけでも始めておくべきだ。


「一条さん!」


作業場の扉が勢いよく開いた。

静かな時間が終わった。

広報の二宮詩が入ってくる。


「配信に出てくださいっ!」


挨拶より先にそれか。


「断る」

「まだ理由も言ってませんよ!」

「配信だからだ」

「理由を聞いてから断ってください!」


結果は変わらないと思うが。


「俺は次の仕事を進めたい」

「次の仕事ですか?」

「ああ。短剣も片手剣も、在庫がなくなればまた製作になる。その前に別の武器を考えておきたい」


詩が頷いた。


「なるほど」


珍しく納得が早い。


「でも、もう一条さんたちが作る必要はないと思いますよ」


納得したわけではなかったらしい。


「どういうことだ?」

「鋳造の武器を専門に作る部署が、新しくできるそうです」

「新しい部署?」

「はい。なので今販売している短剣と片手剣の量産は、今後そこが担当するはずです」


初めて聞いた。


「いつ決まったんだ?」

「正式決定はまだです。先週、片手剣が売れた時に案が出たんです。その時は急だったので応援って形になりましたけど」

「なるほど。正式決定してから一条さんに通達があるんですね」


茜が言う。

その通りだが、なぜ少し安心した顔をしているんだ。


「毎回ほかの製作課から応援を出すのも大変なので、量産専門の部署を作ることになったそうです」

「じゃあ、もう200本作らなくていいの?」


桃が詩に詰め寄る。


「その予定です」

「やった!」


桃が両手を上げた。

納品した時より喜んでないか。


「ボーナスは?」


葵が聞く。


「それは知りません」

「大事なことなのに」

「広報に給与の決定権はないので」

「広報、弱い」

「弱くないです!」


朝から何の話をしているんだ。


だが、量産を別の部署へ任せられるのは助かる。

第一製作課は新しい武器の開発に集中できるな。


「それなら、次の設計を進められるな」

「はい」


詩が笑顔で頷く。


「なので、配信に出てください」


戻ってきた。


「設計を進めると言っただろ」

「配信に出ても設計はできます」

「時間を使う」

「1日中やるわけじゃありません」

「準備もあるだろ」

「広報でやります」

「何をするか決まってない」

「もう決めてあります」


強い。

俺が出した理由を、全部その場で消してくる。


「詩ちゃん、今日は準備がいいね」


桃が感心している。


「今日は絶対に一条さんを連れて帰るつもりで来たから」

「連れて帰るな」


俺は物ではない。


「それで、どうして配信が必要なんだ?」


「やっと聞いてくれましたね」


詩がタブレットを作業台に置く。

会社の公式チャンネルが表示されていた。


「片手剣の生産が始まってから2週間、一条さんたちは動画に出ていません」

「作ってたからな」

「分かっています。その間も、ほかの商品紹介や工場紹介は投稿していました」

「なら問題ないだろ」

「大問題です」


詩が動画の一覧を見せてくる。

俺たちが出ている動画。

それ以外の動画。

再生数にかなり差がある。


「一条さんたちが出ていない動画は、ほとんど見られていません」

「そんなに違うのか?」

「違います」


詩が別の動画を開いた。

商品の紹介動画らしい。

コメント欄を表示する。


『一条さんは?』

『第一製作課まだ?』

『桃ちゃんたちを出して』

『鍛冶師の人、最近見ないな』

『またダンジョン行ってほしい』


商品についてのコメントがない。


「これは何の商品を紹介した動画なんだ?」

「新発売のバナナ味ポーションです」

「ポーションの話をしてる人がいないな」

「だから困ってるんです!」


バナナ味少し気になるのに。

詩が次の動画を開く。


『一条さんは?』

『第一製作課の動画まだ?』

『葵ちゃんを出して』


「葵も人気あるんだな」

「当然」


本人は満足そうだ。


「私の名前は?」


桃が画面をスクロールする。


「さっきの動画にはありましたよ」

「毎回書いてほしい」


視聴者に何を求めているんだ。


「それだけじゃありません」


詩が登録者数の画面を表示する。


「最近、登録者も少しずつ減っています」

「減ってるの?」


桃の表情が変わった。


「はい。このまま一条さんたちが出なければ、もっと減ると思います」

「大変です、一条さん!」


急に桃が詩の側へ行った。


「さっきまで配信の話に興味なかっただろ」

「登録者が減るのは別です!」


自分の人気が関係すると動きが早い。


「いちじょー、出た方がいい」


葵まで加わる。


「お前もか」

「人気維持」


正直だな。

茜も困ったように笑う。


「会社の公式チャンネルですから、協力した方がいいかもしれませんね」


味方がいなくなった。

詩が俺を見る。


「一条さんたちが出ていた時は、チャンネルの登録者が一気に増えました」

「でも、今は減り始めています」

「だから、会社のために配信へ出てください」


量産を理由にはできない。

準備も広報が行う。

内容もすでに決まっている。


さらに、3人まで出る気になっている。

逃げ道がない。


「内容は?」


詩の顔が一気に明るくなった。


「出てくれるんですか?」

「内容を聞いてからな」

「大丈夫です。安心してください!」

「安心できる要素がないんだが」


怖過ぎる。


しかし、用意周到だな。

それだけ厳しいと言うことか。


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