↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
性能しか見ていない鍛冶師、左遷先でなぜかバズる~性能特化で赤字子会社を立て直す~  作者: Masaki


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/63

第20話 助っ人

1時間後。

俺は完成した型を作業台に並べた。

片手剣の型が10個。

予備も含めて用意してある。


桃たちも、そろそろ1本目が完成する頃だろう。

この1週間でコツをつかんだのか、3人とも1時間ほどで作れるようになった。

ただ、魔力の消耗は大きいらしい。

1日4本が限界だと言っていた。


無理する必要はない。

人数が増えれば、その分で補える。


しばらくすると、作業場の扉が開いた。

男女合わせて8人が入ってくる。

第二製作課と第三製作課からの応援だろう。


先頭にいた男が頭を下げた。


「第二製作課の山本です。こちらからは4人参加します」


隣にいた女性も続く。


「第三製作課の木村です。こちらも4人です。よろしくお願いします」

「第一製作課主任の一条です。急な応援、ありがとうございます」


軽く頭を下げる。


「今日からお願いします」


「いえ。今話題になっているプロジェクトに参加できるだけで光栄です」


話が少し大きくなっている気がする。


「そこまで大袈裟なものじゃないですよ。片手剣を作るだけです」

「会社きっての売上ですからね。社員全員が浮き立ってますよ」


山本が笑う。


「売上より、ボーナスに期待してる人が多そうですけどね」


木村が言うと、後ろにいた職員たちも笑った。

どうやら、どこの製作課も考えることは同じらしい。


「第一製作課でも、さっき同じ話をしてました」

「やっぱりですか」


少し空気が和らいだ。


「型は用意してあります。鋳造の経験はあると聞いています」

「はい。武器ではありませんが、普段の製品でも使っています」

「なら大丈夫です。最初に違うところだけ確認しましょう」


俺が作業台を示す。

山本たちが型の前に集まった。

山本が1つ持ち上げ、回路を確認する。


「これ、全部さっき作ったんですか?」

「はい。予備も含めて10個です」

「1時間で?」

「この型なら、それほど難しくないですよ」


山本と木村が顔を見合わせる。

また大袈裟に受け取られている気がする。


「一条主任の噂は聞いていましたけど、本当だったんですね」

「どんな噂かは知りませんが、無理な作業は頼みません」


応援に来てもらった以上、最初から数を求めるつもりはない。


「今日は慣れることを優先してください。数はこっちで調整します」

「分かりました」


ちょうどその時、奥から桃の声が聞こえた。


「一条さん、1本目できました!」

「分かった。今行く」


俺は山本たちを見る。


「それではさっそく作業に移りましょう。細かい説明はあちらでうちの職員が行います」


説明は3人に任せても大丈夫だろう。

桃と葵は文句を言いそうだが。


「桃、葵、茜。集まってくれ」

「はーい。あ、こんにちは」

「第二と第三の人」

「協力ありがとうございます」


3人は集まりながら、応援に来た8人にそれぞれ声をかける。


「知ってると思うが、第二製作課と第三製作課のメンバーだ」

「もちろん知ってますよ。私たち仲良いので」

「一条さんが来る前は、私たちが応援に行ったこともありますよ」

「山本と木村」


葵が2人を見て言う。

知っているなら最初から名前で呼べ。

さんもつけろ。


「なら問題ないな。3人に説明は任せた」

「えー!」


桃がすぐに声を上げた。


「いちじょー、丸投げ」


葵もこちらを見る。

茜が苦笑した。


「私たちが教わったことを、そのまま伝えれば大丈夫よ」

「茜の言う通りだ。3人なら問題ない」

「でも、主任の仕事じゃないですかー」


桃が頬を膨らませる。


「じゃあ俺が説明する。その間に1人3本作ってくれ」

「えっ」


桃が固まった。

1本はできているから、あと2本。

残業しなくてもギリギリ間に合うだろう。


「説明は任せてください!」


桃が勢いよく答える。


「いちじょーは早く作って」


葵もあっさり手のひらを返した。

茜が笑う。


「私たちで説明します。一条さんは製作をお願いします」

「分かった。任せた」


分かりやすい。

俺は型を持って、自分の作業台へ向かった。


その後、作業は順調に進んだ。

多少のトラブルは覚悟していたが考え過ぎだったようだ。


山本たちは鋳造の経験があるだけあって、桃たちの説明を聞けばすぐに作業に入れた。

分からないことがあれば茜に確認し、桃と葵も自分の作業を進めながら教えている。


問題があるとすれば、人数が増えた分、作業場がうるさくなったことぐらいか。


「一条主任って、本当に本社から来たんですよね?」


作業をしていた山本が聞いてきた。


「ええ」

「もっと怖い人だと思ってました」


何の話だ。


「俺の噂はどうなってるんですか?」

「少しでもズレると、すぐやり直しになるとか」

「間違っているならやり直した方がいいでしょう」


山本が黙った。


「ほら、そういうところですよ」


木村が笑う。

どこだ。


「でも、思ってたより普通ですよね」

「普通です」

「いちじょーは普通じゃない」


葵が横から言った。


「青い方を狙って作れる人は普通じゃないですよ」


桃まで加わる。


「一条さんの基準が少し高いだけです」


茜がまとめる。

少しで済むなら問題ない。


「木村さん、昨日の続きなんですけど」

「桃、手を動かして」

「動かしてますよ」

「口の方が動いてる」

「葵ちゃんも話してるじゃないですか」

「私は短い」


確かに短い。


他の職員たちも、作業をしながら雑談している。

以前の第一製作課では考えられない騒がしさだ。


まあ、ノルマを守ってるなら問題はないか。



そして5日目。

最後の片手剣を箱に入れ、製作表を確認する。

追加分の200本。

予定どおり完成した。


「終わったー!」


桃が両手を上げる。

前にも見たな。


「200本、すべて完成しています」


茜が製作表を見せてくる。


「ああ。予定どおりだな」

「いちじょー」


葵が作業台に突っ伏す。


「ボーナス分、働いた」


それを決めるのは俺じゃない。


俺は集まった8人を見る。


「急な応援でしたが、皆さんのおかげで予定どおり完成できました。ありがとうございます」

「こちらこそ、勉強になりました」


山本が頭を下げる。


「また必要になったら呼んでください」


木村も笑っている。


「その時はお願いします」


できれば、すぐには呼びたくない。

200本が今度こそしばらく残ってくれればいいんだが。


「じゃあ、これで解散ですね」


桃が少し残念そうに言う。


「また遊びに来てくださいね」

「仕事中じゃなければね」


木村が笑う。

山本たちはそれぞれ挨拶をして、作業場を出ていった。

5日前まで騒がしかった作業場が、急に静かになる。


「静かになった」


葵が言う。


「あれだけ人数がいたからな」

「寂しいですね」


桃が扉を見る。


「また増産になれば来てもらうことになるかもしれない」


俺が言うと、桃の表情が固まった。


「それは、しばらくいいです」


俺も同感だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。