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性能しか見ていない鍛冶師、左遷先でなぜかバズる~性能特化で赤字子会社を立て直す~  作者: Masaki


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第19話 ボーナス確定

片手剣の製作を始めて5日。

俺たちは予定どおり、100本を完成させた。

俺が50本。

茜たちが50本。

途中で桃が魔力切れになりかけたり、葵が早く帰りたいと言い出したりしたが、大きな問題はなかった。


「終わったー!」


最後の1本を箱に入れると、桃がその場で両手を上げた。


「100本、完成しましたね」


茜が製作表を確認する。


「ああ」


予定どおりだ。


「いちじょー」


葵が作業台に突っ伏した。


「疲れた」

「今日は3本だろ」

「昨日は4本作った」


覚えていたか。


「でも、最初に比べたらかなり早くなりましたよね」


桃が完成した剣を眺める。


「最初は1本作るだけで大騒ぎだったのに」

「大騒ぎしていたのは桃だけだ」

「葵ちゃんもしてましたよ」

「してない」

「してたよ」

「してない」


どちらでもいい。

完成したなら、それでいい。


「販売は3日後でしたよね」


茜が聞いてきた。


「ああ。明日から各店舗へ運ぶらしい」


あとは店舗への配送や販売準備だけだ。

俺には関係のない作業だな。


「3日後かー」


桃が箱を見ながら言う。


「長いですね」

「結果が気になります」

「販売してすぐ結果が出るわけでもないだろ」


佐藤は半年で売ると言っていた。

営業がそこまで自信を持っているなら、それなりには売れそうだ。



3日後。

出社して席に着くと、桃がスマートフォンを見ていた。


またか。

今日は仕事だろうか。


「一条さん!」


仕事だったらしい。


「どうした」

「片手剣、今日から販売ですよ!」

「知ってる」


3日前から何度も聞いている。


「もう販売ページが出てます」


桃が画面を見せてくる。

片手剣の写真と、説明が載っていた。

初心者から中堅者まで扱いやすい、切れ味と耐久性を両立した片手剣。

そんなことが書かれている。


間違ってはいない。


「値段は?」

「13万円です」

「高くないか?」

「以前販売していた片手剣が確か10万ぐらいだったと思います」


茜が答えた。


「性能を考えれば、むしろ安い方かと」


そうなのか。

売れるならそれでいい。


「発売は10時からですよ」


桃が時計を見る。

あと10分か。


「見ていても売れたかどうか分からないだろ」

「そうですけど、気になります」

「気になるなら午後にでも営業に確認すればいい」

「そうですね。そうします。」


桃が残念そうにスマートフォンを置く。

葵も隣から離れた。


「見守る仕事、終了」


最初からそんな仕事はない。


「今日は次の武器について考えるぞ」


俺が言うと、桃が顔を上げた。


「もうですか?」

「片手剣は完成しただろ」

「まだ売れたか分かりませんよ」

「売るのは営業の仕事だ」


俺たちは作る。

営業は売る。

分かりやすい。


「次は何を作るんですか?」


茜も興味を持ったらしい。


「まだ決めてない」

「盾?」


葵が言った。


「剣の次は盾ですかね」


桃もうなずく。

盾か。

需要はあるから、うまく作れば売れるだろう。


ただ、桜坂の盾は板に取っ手を付けただけだったな。

また一から作った方が良さそうだ。



午後の作業を始めたところで、部屋の扉が勢いよく開いた。

佐藤か。

疲れたような嬉しいような不思議な顔をしている。


「一条主任!」

「どうしました?」

「完売しました!」


何がだ。


「片手剣です! 100本、すべて売り切れました!」


部屋が静かになった。


「全部ですか?」


茜が確認する。


「はい。各店舗に確認しました。午前中ですべて完売しています」


早すぎる。

半年で売るんじゃなかったのか。


「すごい!」


桃が立ち上がる。


「100本ですよ!」

「聞いていた」

「もっと驚いてくださいよ!」


驚いている。

顔に出ないだけだ。


「いちじょー」


葵がこちらを見る。


「1年持たなかった」


それは俺のせいじゃない。

というか喜べよ。


「現在も各店舗に問い合わせが来ています」


佐藤は持っていた資料を机に置いた。


「追加販売をお願いしたいです」


やはりそうなるか。


「追加で何本必要です?」

「営業部としては、200本をお願いしたいと考えています」

「200本」


桃が小さく繰り返した。

顔から笑顔が消えている。


「第一製作課だけでは、10日はかかりますね」

「できれば1週間以内にお願いしたいです」


無茶を言う。

売れたら急に強気になるな。


「第二製作課と第三製作課から、応援があれば大丈夫ですか?」


佐藤が聞いてきた。


「鋳造ができるなら問題ないですが、型が足りないですね」

「武器ではないですが、別の商品で鋳造を使う事もあるので経験はあります」


なら使える。

作ることはできるだろう。

問題は型の数だな。


「何人出せます?」

「第二製作課から4人、第三製作課から4人で調整しています」


8人か。

1人1日3から4本作れれば、5日で200本に届く。

足りなければ俺が作ればいい。


「1週間はギリギリですね」

「200本に届かなくても大丈夫です。一応の目安ですから」

「分かりました。今から人数分の型を用意します。1時間後から作業開始で」

「ありがとうございます。助かります」


佐藤が安心したように息を吐く。


「それでは、200本の追加生産で進めます。あと、予約販売についても検討しています。詳細が決まり次第、また連絡します」

「お願いします」


佐藤が頭を下げて、部屋を出ていった。


「200本」


桃が机に座ったまま動かない。


「8人増えるから、前より楽だろ」

「そもそも型が足りませんよ」

「だから今から作る。桃たちは先に製作に入ってくれ」

「1時間で用意するんですか?」

「予備も含めて10個ぐらいだろ。なら大丈夫だ」


3人が顔を見合わせる。


「いちじょークオリティ」

「一条さん、無理したら倒れますよ?」

「型を10個作るぐらいで倒れない」


心配されるほどの作業じゃない。

これぐらいなら余裕だ。


「ボーナスでる?」


葵が聞く。


「この調子なら出るだろ」


これで出ないなら問題だ。


「本当ですか?」


桃が急に元気になった。


「ああ。ただ金額はこれからの頑張り次第だろうな」

「やったー!初めてのボーナスです。なに買おうかな」

「桃ちゃん落ち着いて。気持ちは分かるけど、まだ出てないわよ」

「一条さんが言うなら間違いないです。あ、出たらみんなでパーティーやりましょー」

「肉がいい」

「夏なのでバーベキューもいいですね」


はしゃぎ過ぎだ。


「とにかく、今は200本作るのに集中してくれ。片手剣がこんなに売れたんだ。短剣も足りなくなるかもしれない」


短剣もセットで買われる可能性はあり得る。

まだ在庫はあるが気は抜けない。


「4本作る」

「急にやる気を出すな」

「ボーナス、大事」


それはそうだ。


「期待しすぎるな。まずは200本作るぞ」

「はーい」

「頑張ります」

「ボーナス」


やる気が出たならそれでいい。


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