↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
性能しか見ていない鍛冶師、左遷先でなぜかバズる~性能特化で赤字子会社を立て直す~  作者: Masaki


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/63

第18話 一日20本

配信の翌日。

出社して部屋に入ると、桃が自分の席でスマートフォンを見ていた。


いつも見ているな。

仕事をしているんだろうか。


「一条さん、おはようございます!」

「おはよう」

「聞いてください。昨日の配信、もう十万回再生されています!」


仕事だったらしい。


「そうか」

「もう少し驚いてくださいよ」

「前回より多いのか?」

「多いです! 登録者も三万人を超えました!」


桃が嬉しそうに画面を見せてくる。


「よかったな」

「他人事ですね」

「登録者が増えても商品が売れないとな」

「そうですけど」


せっかく配信したんだ。

早目に売り出したい。


「いちじょー、人気者」


葵が自分の席から言ってきた。


「コメント、いちじょーばっかり」

「片手剣の配信だろ」

「片手剣も人気」


俺が人気になっても何の意味もない。

桃がコメント欄を眺めながら読み上げる。


「『青い剣は販売しますか』『青い剣はいくらですか』『青い剣が欲しいです』」


青い方ばかりだな。

普通の剣も見ろ。

三人が三日かけて設計したんだぞ。


「普通の片手剣についても問い合わせが来ていますよ」


茜が資料を持ってきた。


「営業部から連絡がありました。発売日や価格の相談をしたいそうです」

「早めに決めよう。製作日程を考えないと」

「そうですね。3人でどれぐらい作れるか検討します」


茜は仕事が早くて助かる。


鞄を席に置く。

片手剣は完成した。

性能も問題ない。

あとは作って売るだけだ。

やっと普通の仕事に戻れる。


「一条さん」


桃が手を挙げた。


「何だ?」

「青い剣は売るんですか?」


青い方か。


「量産できるなら売るさ」

「青い剣をですか?」

「ああ」


三人を見る。


「作れるか?」


三人が黙った。

茜が桃を見る。

桃が葵を見る。

葵は俺を見た。


「無理」


早いな。


「普通に無理です」


桃も続いた。

普通じゃない無理もあるんだろうか。


「私たちには作れません」


最後に茜が答えた。

やはり無理か。


「なら、売らない」

「早いですね」

「作れるのが俺だけだからな」


通常品なら三人でも作れる。

青い剣は違う。

大量の魔力を、最初から最後まで同じ量で流し続ける必要がある。

俺だけで量産することもできるが、それでは意味がない。


「青い方を売ったら、普通の片手剣が売れなくなる」

「性能が高い方が欲しくなりますもんね」


桃が納得したようにうなずく。


「ああ。しかも青い方は俺しか作れない」


青い剣が売り切れれば、次も作れと言われる。

面倒だ。


「普通の片手剣だけ売る方がいいだろ」

「作った青い方はどうします?」


茜が聞く。


「博物館に持っていく?」

「武器だから使う方がいいんだが」

「じゃーここに飾る」


違う。

話を聞け。



午前中の作業を始めようとしたところで、部屋の扉が開いた。

入ってきたのは、営業部の男性だった。

以前、短剣の販売について話したことがある。

名前は確か、高橋だったか。

多分。


「おはようございます。一条主任、今よろしいでしょうか?」

「佐藤さん、おはようございます。」


茜が挨拶をしながら席を促している。

間違っていたか。

名前を呼ばなくてよかった。


「昨日の配信で製作した片手剣について、ご相談に来ました」


佐藤が資料を持って、空いている席に座る。

俺も向かいに座った。

茜たちも近くに集まってくる。


全員で聞く必要はないと思う。


「昨日の配信後から、片手剣について多数の問い合わせが来ています」


佐藤が資料を机に置く。


「特に多いのが、発売日と価格についてです」

「価格は専門外なんですが」

「もちろん、それはこちらで調整します。市場調査も行っているところです。確認したいのは原価で、製作に必要な材料と量ですね」

「承知しました。茜、必要な情報をまとめてくれ」

「分かりました。桃ちゃん、葵ちゃん、確認いい?」


茜に任せれば大丈夫だろう。


「あとは発売日ですね」

「はい。営業部としては、動画の反響を考え、できるだけ早く発売したいと考えています」


そりゃそうだ。


佐藤がこちらを見る。


「一週間で何本ほど用意できますか?」


一週間か。

今週で製作して、来週発売。

分かりやすい。


「最大3人で、一日何本作れる?」


茜たちを見る。


「えーと、一人2本かなって話していたんですけど」


茜が考えながら答える。


「急ぎだとしても、魔力量の問題もあるので3本が限界かと」

「三人で9本ですね」


桃が指を折る。


「あと一本」


葵が言った。


「あと一本って、どこから出すの?」

「超頑張る」


便利な言葉だ。


「三人で一日10本か」

「採用された!」


桃が葵を見る。

無理なら9本でいい。

一日一本の差だ。


「じゃー5日で100本は用意できるかな」


佐藤が資料に書きかけて、手を止めた。


「一条主任が、一日10本ですか?」

「そうですね。それぐらいは問題ないです」

「お一人で?」


何人に見えるんだ。


「一人でですよ」

「一条さんは一本作るのに、どれくらいかかるんですか?」


桃が聞いてくる。


「15分くらいかな」

「配信では、もっと早くありませんでした?」

「あれは青い方を作るためだったので」


流す魔力量が増える分早くなる。

仕方がない。


「じゃあ、10本以上作れるんじゃないですか?」

「そりゃそうだが、そんなに必要ないだろ」

「作れるんだ……」


茜が驚いている。

だが、一日中、片手剣を作るわけではない。

主任の仕事もある。

設計もしたい。

俺が10本。

三人で10本。


「5日で100本だな」


佐藤が計算して、うなずく。


「100本ですね。それだけ用意できるのであれば、各店舗に置けそうです。一週間後に販売を開始しましょう」

「承知しました。間に合わせますよ」

「100本も売れますかね?」


桃が聞いた。


「年間で100本売れればいい方だろ」

「いや、半年で売って見せます。中堅者まで使える物なので、需要は多そうです」


佐藤は自信がありそうだ。

営業がそう言うなら、売れるんだろう。


「それと、青い片手剣についても問い合わせが来ています」


やはり来たか。

佐藤が別の資料を出す。


「こちらは量産できますか?」

「難しいかな」

「そうなんですか。なら販売は厳しそうですね」


俺しか作れないからな。

佐藤が少し残念そうな顔をした。


「私たちでは、青くできません」

「魔力量もコントロールも難しいです」

「いちじょークオリティー」


三人がそろってうなずく。

そこは迷わないんだな。


「それに青い剣を販売すると、通常品よりそちらを求める客が多いことが予想されますよね?」

「そうでしょうね。性能が二割ほど高いのであれば、価格次第ではありますが」

「ただ、量産が難しい」

「一条主任だけでは、生産数に限界があるということですね」

「そうですね」


正確には、作ろうと思えば作れる。

ただ、俺が青い剣ばかり作ることになる。

それは嫌だ。

新しい武器を設計する時間がなくなる。


「青い剣は非売品で。通常品だけの販売で」

「分かりました。問い合わせには、配信で使用した特別製作品であり、販売予定はないと回答します」


特別製作品。

間違ってはいない。

言い方が少し大げさだが、営業では普通なんだろう。

佐藤が資料をまとめる。


「それでは、通常の片手剣を100本。一週間後に販売開始ということで進めます。よろしくお願いします」


佐藤が立ち上がり、部屋を出ていった。


さて、あとは作るだけだ。


「100本かー」


桃が机に座ったまま、天井を見る。


「急に大きな仕事になりましたね」

「一日3本だろ」

「一条さんは10本じゃないですか」

「余裕だ」

「自分で言うんですね」


前にも言った気がする。

事実だから仕方ない。


「いちじょー」


葵が手を挙げる。


「何だ?」

「青い剣、売らないならちょうだい」

「なんでだよ」

「けち」

「それに使わないだろ」

「家に飾る」


聞いていたのか?


「駄目だ」

「茜は?」

「私に聞かないで」

「桃は?」

「私は欲しい」


増えた。

聞く相手を間違えている。


「誰にもやらない。作業場に置いておく」

「一条さんは使わないんですか?」


桃が聞いてきた。


「会社の材料で作ったから、会社の物だ」

「じゃあ、会社にお願いすれば…」

「買えって言われるぞ」


本当にやりそうだ。

桃は行動が早い。

余計なことに限って。


「話は終わりだ。作業場に行くぞ」


立ち上がると、三人も席を立った。


「今から20本間に合いますか?」


茜が聞いてくる。


「ああ。問題ない」

「今から3本間に合うか心配」

「残業したくない」

「昨日1本作っているだろ。あと2本でいい。まぁ一人は3本作らないといけないが。間に合わないなら今日は19本でいい」

「あ、そっか。なんだか行けそうな気がする」

「頑張ろー」


桃が両手を上げる。

葵も片手を上げた。


「おー」


茜は苦笑しながら二人についていく。

俺も作業場へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。