帰郷293
『ギュルギュルギュルギュル!!!!』
『スッ!!』
回転する丸鋸を振りかぶるミノタウロス、それに対して核露は鱗の小手で受けて立つ。
矛盾の矛と盾の対決。
押し込めば、丸鋸は鱗を切断して肉を切って骨を断つが、鱗の喰い込んでいる間に、致命傷の一撃を与えられる。
どちらかが嘘を付いていて、嘘を付いている方が死ぬ。
『ギュルギュルギュルギュル!!!!』
ミノタウロスは、自分の丸鋸がドラゴンの鱗を粉砕すると疑わず、ドラゴンもまた、鱗で丸鋸を防ぎ切れると信じて疑わない。
振り回される丸鋸に、真っ正面から立ち向かうドラゴン、互いの意地がぶつかり合ったその時、
『ギュルギュルギュルギュル!!!!』
『カァァイィィィィ!!!!』
丸鋸が他愛も無く、鱗に弾かれた。
『ブゥモォ!!!?』
『ギュルギュルギュルギュル!!!!』
『カァァイィィィィ!!!!』
ミノタウロスは一度弾かれただけだと、再度、丸鋸をドラゴンに振りかざすが、丸鋸は鱗にかすり傷を付けるだけで弾かれてしまう。
『ブゥォォ……!?』
ミノタウロスは丸鋸に感じる、おかしな手応えに狼狽えてしまう。
喰い込まない……丸鋸をただ鱗にぶつけているだけ……自分の丸鋸が武器では無く、ただの鉄くずになってしまったかのような違和感。
「やっと気づいたか!!!!丸鋸をそんなレンガに何度もぶつけて切れば、刃先が潰れて、円盤がひん曲がるに決まっているだろ!!!!」
『ブモォ!?』
丸鋸を武器にするという愚策が崩壊した。
ホラー映画でチェーンソーや丸鋸が使われるのは、あの独特な音によって、聴覚に恐怖を与えるが、これ等は武器では無く工具なのだ。
剣やハンマーのような武骨に扱って良い代物ではない、精密で繊細な工具、使用用途をしっかりと守って使わなければ、一瞬で壊れてしまう。
『ギュルギュルギュルギュル!!!!』
「終わりだ」
刃先が潰れ、歪んだ円盤でドラゴンの鱗に致命傷を与える事は出来無い。
『ドチュ!!!!』
振りかざされた丸鋸を鱗で弾くと、瞬時に爪を立てて、ミノタウロスの腹を突く。




