帰郷291
『ブモ……』
「くっ……!!」
丸鋸を突き出して、突進して来ているミノタウロスが笑った。
これは偶然ではない、メイクされた状況……敵に追い込まれたのだ。
ここまでの状況を想定していたかは分からないが、挟み撃ちをするという予定が、最高な形で事が進んだのだろう。
『『ギュルギュルギュルギュル!!!!』』
ミノタウロス達が景気付けと謂わんばかりに丸鋸の腕を回す、俗に言うグルグルパンチ。
「面倒な事を!!!!」
絶対に逃がさないという気概、下手をすればミノタウロスは自身の肉の体を切り刻んででも、自分の事を殺すかもしれない。
曲がり角45度の袋小路、逃げ道を塞がれて核露は、壁に背中を押し付ける。
(レンガか……)
赤い液体がコーティングされているとはいえ、背中から伝わる硬さは、やはり無機物の感触。
白炎を吐いて赤い液体だけを溶かしても、残ったレンガで道が塞がれる。
『『ギュルギュルギュルギュル!!!!』』
天井を這うように飛んだとしても、ミノタウロスの腕は届く、馬のように後ろ脚で体を上げて、抱き着かれた日には体を切り刻まれる。
核露は首を縮めて、左右から来るミノタウロス達の丸鋸に備えて……
(今だ!!!!)
『『ザシュザシュザシュザシュザシュザシュ!!!!』』
『『ブゥモォォォォォォォォ!!!!』』
赤い廊下に、真っ赤な血が飛び散るが、そこに核露の血が混ざる事は無い。
「悪いね、こっちも特殊でね!!!!」
キャタピラの足を持ち、丸鋸の手を持つミノタウロス……このミノタウロスは特殊だが、自分だって特殊。
『『ブゥゥゥゥゥゥゥ!!!!』』
「どうした!!!!当てればお前達の勝ちだぞ!!!!」
体を切り刻まれた痛みを忘れるかのように、口から唾を泡にして噴き出しながら、避けたドラゴンを切り刻もうと、ミノタウロス達は腕を振るが、丸鋸は空を切るだけ。
『『ギュルギュルギュルギュル!!!!』』
『バサッ!!!!バァッサァァ!!!!』
逃げ場の無い角に押し込まれた、それが事実なのだが、その事実は大型のドラゴンの話。
「俺は、ここにいるぞ!!!!」
『『ブゥゥゥゥゥゥゥ!!!!』』
人型の小さなドラゴン形態になれば、曲がり角の袋小路など、穴の空いた袋にも等しい。




