帰郷290
(それは武器じゃない……工具だ)
刃が回転して切断する丸鋸、事故の啓発映像で人の指が飛ぶシーンがあるせいで、とんでもなく鋭い切れ味の物というイメージがあるが、それは間違いだ。
円盤に細かい刃を作り上げ、円盤を拘束で回転させる事で何度も切り付け、硬い物でも削り切るといのが丸鋸。
肉のように柔らかい物なら瞬間的に切断するが、こちらには鱗がある。
鋼のように硬いウロコは、ただ当てるだけでは切断は出来無い、しっかりと当てて押し込んで鱗を削らなければ切断は出来無い。
(それに、その工具には弱点がある)
『『ギュルルルルルル!!!!』』
耳障りな音、拘束回転する刃物、その不快なプレッシャーで気が散らそうというのだろうが、そうはいかない。
小さな刃が円盤にビッシリと作り上げてあるが刃は小さい、硬い物に丸鋸をいきなり押し込むと、刃が喰い込んで回転が止まる。
『『ギュルルルルルル!!!!』』
突き出される丸鋸、そこに鱗でぶつかれば、小さな刃が潰れて止まるかもしれないが、そんな怪我をするかもしれない事をする必要は無い、おあつらえに硬い物がある。
(そんな事をしてなくても、それは止められる)
核露は、周りにあるレンガに目を向ける。
有機物では無い無機物、自分達という重量級をしっかりと支え、城を形作るレンガ。
これほど丸鋸を止めるのに相応しい物は無く、自分の後方に曲がり角があるのは承知している。
突進する勢いのままでレンガに丸鋸をぶつければ、刃先が潰れてレンガにめり込む。
(後はタイミングを間違えないだけ)
曲がり角で、突進して来るミノタウロスを躱す、それだけだが、タイミングを間違えないように……
『ブゥゥモォォォォォォォォォォ!!!!』
「もう一体!!!?」
曲がり角でミノタウロスを躱す、それだけのはずだったのに、もう一体のミノタウロスが、曲がり角で待機をしていた。




