帰郷288
『ギュルルルルルル!!!!』
『ググゥ……!!!!』
生きている生物……足はキャタピラで、手は丸鋸……こんなのが自然界で生まれる訳が無い。
『ズズッ……ズズッ……』
『グゥルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!』
押し返そうにもミノタウロスのキャタピラが、重く安定している、足を動かさないで良いというのが、こんな利点を産むとは思っていなかった。
相撲で互いに組み合っている状況で、自分は足を上げないといけないのに、敵は四本足のキャタピラでひたすらに地面に引っ付いて重い。
「核露、飛んで!!!!」
「……っ!!!!」
初実を降ろしたい、この戦いは生物同士の戦いで霊力は役に立たない、荒い戦いをしたいが彼女が背中に乗っていたら、それも出来無い。
援護が欲しいが、それをしたらターゲットが変わって、足元の者達が轢き殺されるかもしれない。
『グゥルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!』
『ズズズ……』
足を踏ん張らせているが、接着面の不利で押し込まれる。
「核露、何を遠慮してるの!!!?いつも通りにするだけだよ!!!!」
(くっ……やるしかない……)
初実は分かっていない、核露がいつも、初実の事を考えて動いている事を。
一度も暴れ馬として、背中に乗っている騎手を振り落とそうとした事等無いという事を。
暴れ狂えば、間違い無く初実は振り落される……さっき、リナから初実を守る為に身体を回転させただけで、初実は核露にしがみつくので精一杯であった。
羽を広げて、後ろに飛んで背中に飛び乗る……緩慢な動きをすれば、丸鋸で体を切り刻まれるが……それでも致命傷にはならないはず。
(しっかり掴まってて……って、リナ!!!?)
『タッタッタッタッタッタッ!!!!』
背中を叩く感触がして、目玉を動かすと自分の背中を走るリナがいる。
「ちょっと!!!!こんな時に!!!!」
リナは、初実の方へと一直線に駆ける。
このタイミング、核露が身動き出来無い状況、いざという時は暴力を振るうと宣言したが、これでは動けない。
『カチャ!!!!』
「悪ふざけをしないで!!!!」
リナが銃口を初実に向けると、反射的に初実が手綱から手を離し……
「火内君!!!!」
(……っ!!!?ありがとうリナ!!!!)
手綱から手を離したという事は、初実は今、踏ん張りが効かないという事。
「行くよ!!!!」
「あっ!!!?離して!!!!」
リナが、初実の腹に手を回して抱き着くと、核露の背中を転がって地面へと落ちる。




