帰郷287
スキー選手のような、前屈姿勢の突進。
足を上げないからこそ出来る突進、急所である頭を突き出す形にはなるが、牛の太い角に、分厚い皮膚と頭蓋骨が、天然のヘルメットになっている。
(やるしかないか……)
『ドックン!!ドックン!!ドックン!!ドックン!!ドックン!!ドックン!!』
核露は、心臓に霊力を混ぜて鼓動を上げると、口から白い煙と炎が漏れ出す。
先程の純度100%の白炎を吐くには、初実の力が必要だが、初実の蓄えている力も無限ではない。
初実の力の消耗は、そのまま疲弊に繋がるこそ、自分の力で眼前の敵を始末する。
『グゥルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!』
「ふぅぅぅ…………」
突き出される角が迫り来る、自分の事を貫こうというのだろうが、そうはいかない。
『ガァシィィィ!!!!』
真っ直ぐに突進して来る角の軌道を読むのは容易い、突き進んで角に来る手を伸ばし、そのまま受け止める。
『グゥルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!』
足のキャタピラは回転しているが、角は無事では済まない。
どんなにミノタウロスをマネようが、どんなに近代兵器をマネようが、赤い液体である以上は、溶かされるという運命からは逃れられない。
太い角を溶かし、分厚い皮膚を焼いて、頭蓋骨を破壊してしまえば……
「ドラゴン君!!」
「このっ!!!?」
握り締めた角が溶けない……手触りが違う……この感触は「生」の感触。
『ギュルルルルルル!!!!』
「核露!!!!」
『グゥゥォォォォ!!!!』
スキー選手のように後ろ手に隠していた腕を前にして姿を現すのだが、そこには手が無く、耳障りな音を鳴らしながら回転する丸鋸がある。
咄嗟に角を掴んでいた片手を離し、咄嗟に首をしならせて、ミノタウロスの手首を抑える。
「核露!!!!今、力を!!!!」
(違うんだ初実、これは赤い液体じゃない!!!!)
溶けないミノタウロスに、初実は自分の力を貸そうとするが、核露はそれを止める。
手触りから感じる「生」の感触、噛み付いて感じる肉と血の味……それが意味しているのは、
(初実、こいつは生きている!!!!)
このミノタウロスが幻想の存在では無いという事。




