帰郷286
古代の城に似つかわしくない音、近代のエンジンが吹いている音が響く。
「みんな離れて……」
「任せるわよ。ドラゴン君」
リミィのクローン達は、核露の邪魔にならないようにと壁際に寄る。
「火内君……」
「リナ……初実を任せたい……」
「待ってよ核露!!!!」
「リナ、僕が信用しているのはリナなんだ……初実を守って……」
核露は目を細めて、廊下の先にいる敵に気を張る。
「ネズミはネズミらしく戦って来るわ。お嬢ちゃんは、降りて来なさい」
「邪魔しないで!!!!」
初実は、核露を一人で戦わせたくないと、手綱を硬く握り締めて、足底で鐙を踏み締めて、絶対に降りないと意思表示をする。
「来る……!!」
『ブゥルゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!』
初実を無理矢理に降ろしている暇が無くなってしまった。
核露は羽を閉じて、両の手を前に出して身構える。
それは戦う為の姿勢ではあるのだが、腕が吹き飛んだけなら生きて帰れる、羽が無事なら飛んで帰れるという尻尾を巻いた考えが混在している。
『グゥルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!』
曲がり角の先から何かが飛び出した、薄赤暗い廊下の先に見えたのは、ドラゴンと同じ大きさのミノタウロス……なのだが、雰囲気がおかしい。
足を動かしていないのに、ミノタウロスが驀進して来る。
それは走る速度とは違う、ブレの無い速度。
『グゥルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!』
「キャタピラ?」
足先が、戦車のキャタピラになっている。
(それは……意味があるのか?)
核露の思考が止まってしまう、確かにキャタピラというのが悪路を走破する物だというのは分かっているが、人の体で、足先をキャタピラにするというのに意味があるのかと疑問を覚えてしまう。
悪路を走破するという意味では、人間の足だって負けていないのに、わざわざキャタピラに変えた意味を考えてしまったが、
『ドッ!!!!』
「核露、しっかりして!!!!」
「……うん」
初実からの気付けの蹴りで、考えるのを止める。




