帰郷278
それは、リミィのクローンの言う通りであった。
もしも、この程度で音を上げてしまうのなら、ドラゴンはとうの昔に殺されている。
実際、手も足も出ない状況が続いて、手をこまねいていたのは核露達の方で、戦いに巻き込まれた人を遠巻きに助けていたのも、現状の自分達では、真っ向から立ち向かう事が出来無いからと理解していたから。
『グルゥゥゥゥ…………』
しかし、自らここに姿を現した以上は、その話はもう昔の話、この状況を「この程度」にするだけの力を手にしたからここに来た。
『コォォォォォォォォォ…………』
『『ボゴォ!!!!ボゴォ!!!!ボゴォ!!!!ボゴォ!!!!ボゴォ!!!!ボゴォ!!!!ボゴォ!!!!ボゴォ!!!!』』
肺の底から息を吐き出すと口から白煙が立ち上り、それと同時にドラゴンを挟み込んだ扉が沸騰する。
その光景に、突撃していたミノタウロスも角付きのペガサスも足も翼も止まる。
『ハァァァァァァ…………』
溜息のように長く吐かれる白煙の吐息。
細長い首を旗を掲げるかのように持ち上げる。
「随分な自信、でも、それだけの力があるわ」
少し調子に乗らせてしまった……軽いジャブでよろけただけのなのに……敵はストレートを顎にぶちかましたかのように色めき立った。
手足を拘束されて、身動きが取れないのは事実だが、それは「事実だった」になる。
『『ブシュゥゥゥゥゥ…………』』
赤い扉が沸騰して蒸発したという事は、手足を拘束する赤い鎖も、溶けて蒸発するのは道理。
「やろう核露」
「頼んだよ」
初実が、核露の首筋に手を置くと、核露と自分の間を無くす。
人の柔らかい肌と、ドラゴンの硬い鱗は違う物で隔たりになるが、生命という命の源は一緒。
初実が、核露の中に生命を溶け込ませると、力が身体に染み渡る。
「今、解放するから……」
生命を体の中に流されたからこそ、分かる事がある。
それは、あの赤い液体も、自分の中に流れている生命の源と同じだという事。




