帰郷269
『ボォォォォォォォォォォ!!!!!!!!』
城の外壁が溶ければ、わざわざ入り口を見付け出す必要は無い。
『ゴボッ……ゴボッゴボッゴボッボゴォ!!!!!』
火で炙られる赤い外壁は、泡を立てながら溶ける。
『ボォォォォォォォォォォ!!!!!!!!』
『ゴボッゴボッゴボッボゴォ!!!!!』
容赦無く炎を浴びせ、外壁に穴が空くのを待つ。
「A班、そっちに敵の影を確認出来る」
『こちらA班、異常ありません』
「了解」
のんびりはしていられない、敵も侵入者が来ている事は気付いているはず、いつ守備隊が出て来るか分からない状況、時間が掛かれば掛かる程に、こちら危険な状況に陥ってしまう。
周囲を見張らせながら、火炎放射器が外壁に穴を空けるのを、今か今かと待っていたのだが、まだ穴が空く気配は無い。
「隊長、どうされますか。他の入り口を探しましょうか」
「そうね、火炎放射器を止めて」
「火炎放射器を止め!!」
『ボォォォ…………』
奇襲という、ほんの僅かな遅れで致命的なミスになる作戦をしているのに、誰も文句を言わずに火炎放射器を止めたのは、隊長からの命令だからでだけではない、他の者達も違和感を感じたからだ。
「これ貫通しないわね」
リミィのクローンが、溶かした部分を触るとスライムのようにネットリとしているのだが、溶けただけというのが、正しい表現なのかもしれない。
火炎放射器の炎を浴びせて、溶けたは溶けたが、穴が空くような気配が無い。
「A班を私達に付いて、周囲を警戒して」
『了解』
火炎放射器で外壁に穴を空けるのを諦めると、全員で城の散策を始める。
奇襲を仕掛けているはずなのに、観光旅行に来たかのように、全員でぞろぞろと歩き出す。
「本当に城みたいですね」
「エルフのイメージかしら、それとも絵本のイメージかしら」
周囲を見渡せば、石畳を模倣した赤い液体に、植木に擬態する赤い液体、城の上部を見れば、赤い液体で塞がっている窓がある。
どこかに忍び込める場所が無いかと城の外壁に沿って進むと、赤い液体が噴き出す中庭と、茎まで赤いバラが咲き乱れている。
「異常ですね」
「そうねぇ、どうやら私達は、招かれざる来客ですら無いようね」
「敵が一体も出て来ないなんて……舐められている……とかではないですね」
「そうね。本当に来るべきお客様の為に、準備をしているみたい」
人様の城に奇襲を仕掛けて、招かれているという事はあり得ないのだが、招かれざる者達を追い払う兵士は出て来ても、何らおかしくないのに誰も来ない。




