帰郷253
囮と言われた鋼鉄のドラゴンが、こちらを見つめる。
「ご……ごめんね……」
「それだけの下準備を整えてあるから、頑張ってね」
「隊長、子供に向かってそういうのを言うのは……」
「あの子達なら平気よ」
「何を根拠に?」
「私がそう評価している。それ以上の根拠が?」
『キュイ……』
鋼鉄のドラゴンに表情は無いが、歯に衣着せぬ言葉に、苦笑いしているような気がする。
二機の鋼鉄のドラゴンを囮にする、その為の下準備はこうだ。
初めて見るD兵器では敵も、どんな相手かを探るために戦力を温存して様子見をするだろう。
イメージとしてはスズメバチの巣から偵察隊が出て来るようなもの、それでは巣である本拠地に突っ込んだ時に、中には攻撃隊が残ってしまっている。
今回の作戦は、敵の本拠地に乗り込んで女王バチを殺して巣を機能させなくする事、その為にも巣の中にいる攻撃隊を出払わせたい。
そこで、このD兵器の出番。
敵が優勢に追い込んでいるという場面、パワーバランスを崩して押し込んでいるという状況、そこで突然現れる新型の兵器、その新型の兵器にパワーバランスを押し返されたら、敵はD兵器にどんな印象を覚えるだろうか?
強烈な印象は過大評価に繋がり、D兵器を見た途端に過剰反応して、巣から攻撃隊が全部出動してくるだろう。
この「だろう」を確実に「出て来る」とする為にも、D兵器は恐ろしい敵というイメージを植え付けたいというのが現状。
「前線がどれだけ頑張るかで、私達の作戦が成功するかどうかの足しになるわ」
「あの子達は、その事を知ってるんですか?」
「もちろん「あなた達の囮が、この作戦に必要不可欠」って伝えたわよ」
「それを言われて、やろうと思えるのは豪胆なのですかね」
自分達が囮だと言われたら、普通なら難色を示すものだが、D兵器の若きエースパイロットは困った事を言う人だと苦笑いをするだけであった。
「そうよ。あの子達にとって、私のお願いは子供の駄々っ子……そう思えるだけの力量があるわ。そうよね?」
『キュイ……』
リミィのクローンの言葉に同意するのか、D兵器が細長い頭を頷かせる。




