帰郷238
弾丸が接触していないにも関わらずに、勝手に落下していく翼を持つ砲弾、翼を羽ばたかせれば、まだ空を飛べるだろうに落ちていく。
「何が出来るんだあれは……」
ここで指揮官であるリミィがいてくれれば、預言者のようにパッと敵の動きを予見してくれるのだろうが、ここにいるのは副指揮官である自分。
自画自賛する訳ではないが、指揮を執って部隊を運用する事に、自分は何ら問題無いと思っている。
現に副指揮官として、指揮官であるリミィがいない現在、大部隊を任せられている。
だが、リミィと比べた時の自分は間違いなく見劣りしてしまうのも事実、彼女の先見の明というのだろうか、把握する能力は天性の物であり、それはマネできる代物ではない。
落下していく翼を持つ砲弾を見て、タクトを振る手が止まる。
部隊をどう動かしたら良いのかを、判断するために事が起きないと判断が付かない。
けれど、本来ならそれで良いのだ、間を取っているのは身動きが取れないからではない、最高の指揮を執るために伺っているのだ。
事が起きれば、自分の腕は振り切って指揮を執る事が出来る。
「何が起きる……」
それは決して、素人の不手際な指揮だからではない……しかし、
「くそ……」
口から漏れたのは、リミィと違ってタクトを振れない自分に対しての苛立ち。
彼女ならもうタクトを止める事無く、部隊を指揮し続けている。
凡人達が演奏を止める中で、彼女は平然と「こうする方が良い」と気軽にタクトを触れる。
それも勝手な素人の行動として顰蹙を買わずに、唯一無二の演奏と称賛されてだ。
「これで良いんだ……」
自分の才能と、リミィの才能の差を嘆く事は無い、彼女は特別な存在。
『ヒュルルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!!!』
翼を持ちながらも、落下していく砲弾を見守ってしまう自分を呪いながら、事の始まりを待っていると、
『ブッッチャァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!』
翼を持つ砲弾が着弾する。
「見せて貰おう……か……」
事が始まるのを見て、タクトを振ろうとしていた手が硬直した。
『ブゥゥゥゥチュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル!!!!!!!!!!!!!!』
翼を持つ砲弾が地上落ちた瞬間に、砲弾が水風船のようにグニャリと潰れて中身を噴き出すと、赤い森が創り出される。




