帰郷228
組み付いてがむしゃらに暴力を振るう、総合格闘技のように組み合って、審判が止めるまでに拳の乱打を決める。
華奢で弱々しい肉体のエルフをグチャグチャに……
「ふぅ……」
『…………!!!?』
ミノタウロスの視界から、エルフとドラゴンが消えた……エルフの少女が息を吐いた瞬間にだ。
『ブゥモォ……ブゥモォ……』
唐突に、自分の目の前に居たのが嘘だったのように消えたが、姿を消した敵を探そうとは思わなかった、がむしゃらに走らせていた足をそのまま走らせる。
『ブゥモォ……ブゥモォ……』
キノコの兵士達もいなくなって、全てが幻だったのだろうか?最初から自分しかいなったのだろうか?
悪い夢を見て、夢遊病で歩きまわっていたのだろうか?
……それならそれでいい、悪い夢を見て散歩していたと笑い話をすれば、キノコの兵士達も『ポニョポニョ』と体を弾ませて笑うであろう。
早く……速く……この場から離れて帰りたい、夜中に暗い廊下を怖いと半べそを掻く子供の様に、温かなベッドに逃げ帰ろうと……
『ドッドッドッドッドッドッドッドッ…………ドッッッゴォォォォォォォォォォォ!!!!!!』
……やはり、怖い夢を見ている。
だって…いきなり自分の足が消失して、膝から下が消えているのだから。
『ブゥモォ……ブゥモォ……』
ミノタウロスは地面にうつ伏せになりながら、腕で藻掻いて土の上を泳ぐ。
『ブゥモォ……ブゥモォ……』
これは悪夢だ……土の上を泳ぐなんて、そんな馬鹿な事がある訳が無い。
悪夢の中で溺れないように、必死に土の上を泳ぎ、
『ガシィ!!!!』
土の上に浮いている木にしがみつく。
『ブゥモォ……ブゥモォ……ブゥモォ……ブゥモォ…………』
必死に辿り着いた木にしがみつき、この悪夢が早く終われと願うが、
「苦しめないから…………」
悪魔の囁きが耳に障った。
分かっていた……エルフとドラゴンが唐突に消えたのではない、無意識に踵を返したのだと。
エルフの少女が息を軽く吐いた瞬間に気付いたのだ、ドラゴンよりもエルフの少女の方が、怖い存在だという事に。




