帰郷227
理解し難い行動。
手綱を握って命令をすれば、それだけで済む話だというのに、ドラゴンから降りた騎手が前に出て来て、
『ドッスン…ドッスン……』
ドラゴンが騎手から一歩引いた所に下がる。
二人には距離が空く……それは騎手が戦うという事を示唆しているのだろうか。
『ブゥゥ……』
ミノタウロスは、視線を上げてドラゴンの目を見据え「この決闘に関わって来ないだろうな」と念を押しをしようとするが、
『グルルルル…………』
ドラゴンからの返答は「ノー」であった。
「この戦いは決闘ではない、お前は騎手の練習相手」それが、ドラゴンの唸り声から聞き取れた。
『ブゥモォ……』
ここでミノタウロスは、自分の立場をハッキリと認識する、自分は生餌だと。
子供に狩りを教える為の生餌、自分があの騎手を殺すとなれば、あのドラゴンは横入りして手助けをする……が、
『ブッフ……ブゥフゥフゥフゥフゥ…………』
例えそうだとしても、それで良い……中途半端に生き残る手段があるより、よっぽど覚悟を決められる。
『ブゥフゥフゥフゥフゥ…………ブゥモォォォオォッォオォオォォオォォォォ!!!!!!!!』
手助けするというのなら、好きな様にすればいい……出来るのなら。
ミノタウロスは自分の巨体を最大限に生かす為に、猪突猛進で突っ込む。
ドラゴンと比べればミノタウロスの身体など、ゼリーのように貧弱で柔らかいものであろうが、それでもエルフに対してなら、岩から削られた彫刻のような屈強な肉体。
エルフに組み付けば、喧嘩する仔犬を引き離すように、エルフに怪我をさせないように、ドラゴンは乱暴には手を出せない。
エルフに組み付いたその隙に腹、顔面……じゃなくても良い、腕でも足でも、どこかに拳を打ち付ければ、エルフは大怪我をする。
『ブゥモォォォオォッォオォオォォオォォォォ!!!!!!!!』
ミノタウロスは大地を駆ける、生きる希望は捨てて、一矢報いる為に……
『ブゥモォォォオォッォオォオォォオォォォォ!!!!!!!!』
生き残る希望の光が自分を照らす事は無いが、それでも一矢報いる光明の光は見える。
獲物の狩る練習をさせるのなら戦わせないといけない、ならば、近付いただけでは、ドラゴンは手出しをして来ない。




