帰郷329
「お前達、自分の復讐しよとした人間を処刑されて怒りが沸いたかもしれねぇが、それであいつ等を殺そうと思ったか?」
「それは……自分の場合は憎んで、二度と関わりたくないと思ってた相手ですから……それに火内を死なせたのに関わった人間を処刑したと、いきなり言われても……」
「余計な事をしてくれたとは思いました……殺意も沸きました……だけどそれで、本当に首を刎ねるかと聞かれると、そこまではしないです」
「自分達は薄情なんスかね?」
「薄情な訳無いさ、私達は常識人って事。人の道を踏み外してねぇ事さ」
リディの言う通り、リディ達と火内は復讐人を探す為に、滅茶苦茶な事はしなかった。
誰かを捕まえて拷問に掛けたり、破壊工作を行ったりのテロ行為をしたりしなかった。
火内の方は単なる子供で出来なかったが、少なくともリディにはそれが出来た。
鳥かごの中で細菌をばらまいたり、化学薬品を噴出させたり、ただ復讐をしたいというのなら無差別テロをしても良かったが、しなかったのは理性を保つ美優とミィオがいたから、二人の人生を終わらせるようなマネだけはしたくなかった。
リディは美優に対して極端な思想を持たないようにし、それがミィオにも伝播している。
「私達が復讐人に恨みを持っているのは、大事な人を殺されたから。私達の恨みの矢印は他人には向いていない。復讐の矢印が復讐人を討ち貫く前にやられては、矢印は迷走する」
「そうですね……僕も今は、何をしたら良いのか分からないです……」
燃え尽き症候群、若年の時からバリバリに働いていた人が仕事を止めた途端に目標を失って、何の為に生きるのかを見失ってポックリといってしまう、あの現象。
「目標を失って、どうしたら良いのか分からなくなった所に、新たな目標を与えられたらどうなると思う
?」
「恨みの矢印が、ドラゴンの世界支配に変えられてしまうという事ですね」
「なっ、えげつねぇだろ。人様の恨み辛みを勝手に自分達の物にしよとしてんだ」
「それで、目標を失った自分達と火内が接触すれば、目標を見付けた火内と引っ付く形になるという訳ですね」
リディの「えげつねぇ」と吠えたのは、子供達を上手く洗脳して自分達の手駒にしようとした、その悪辣に怒りを覚えたからであった。




