帰郷305
(到底人のする事じゃない……へその緒を使って、亡骸になった赤ん坊を運ぶ何て……敵とはいえ、やってはいけないラインを越えている……でも…………)
初実の感じている吐気は、非人道的だからと言われたらそうなのだが、それだけではない嫌悪感を感じている。
初実が感じている、同情とは違う、何か得体の知れない感覚……この気持ちを素直に、核露に伝えたいと思うのだが、それを口にしたら紅の髪を持つ少女からの鉄拳は免れない。
「赤ん坊を雑に扱うのは止めて欲しい」その言葉を言う事も出来ずに、城の外に出ると上空にいたはずの角付きのペガサスと空を飛ぶトビウオが、噓のように消えていた。
「これで上手くいって、鳥かごも、この周辺に住んでいる人達の安息も取り戻せると良いね」
「そうだね……そうあって欲しい……」
こちらで、あの赤いモノが消えたというのなら、向こうでも赤いモノ達が消滅している可能性はある。
「ドラゴン君、空を飛んで向こうを確認してくれないかしら。実は私達、戦う為の装備品しか持って来て無いの」
命を懸けた電撃作戦には、通信の装備は邪魔でしかなく、持って来ていない。
「分かりました……初実、背中に乗って」
「うん……」
リナと二人きりにさせたら、何をされるか分かったものでは無い、核露は大型のドラゴンになると初実を背中に乗せて空へと飛び上がる。
「嘘みたいだ……巨人の戦艦も、何もかもいなくなってる」
あれ程、赤いモノで溢れていた世界が、いつもの世界に戻っている。
空と木々が広がる世界、少し目を細めれば、遠くで展開されている部隊を見る事が出来る。
それはこの戦いが、一先ずの決着が付き、この場から離れても問題は無いという事で、戦いに幕引きを付けられそうであった。
「ねぇ……核露……」
「どうしたの……「どうしたの」じゃないよね……気分、良くないよね」
空へと飛び上がった世界では、初実と核露の二人きり、ここでなら自分の気持ちを吐露しても、鉄拳は飛んで来ない。




