帰郷302
「…………」
初実の目の前に突き出された赤ん坊は、呻き声を上げる事も無く、体を小さく縮める。
「これが人間の赤ん坊なら、泣くんじゃない?」
リナは、綿菓子のようにヒートソードをクルクルと回して、へその緒を切り、
『ドッゴン!!!!』
そのままヒートソードを振り払うと、赤ん坊を地面に叩き付ける。
「踏み付けて」
「えっ……」
「殺したから踏み付けてよ」
「何がしたいの!!!!」
「踏む絵」
「踏み絵って……」
『グシャ!!!!』
引き攣った表情で理解を拒む初実を目の前にして、平然と赤ん坊を踏み付けて初実を黙らせる。
「火内君きってのお願いだから、あなたを生かしてるけど……あなたこそ、どうしたいの?」
『ドゴッ!!!!』
赤ん坊の亡骸を蹴っ飛ばして、初実の足元に転がす。
「火内君なら躊躇い無く殺すよ。みんなが大事で、みんなを守りたいから。最後の最後で、自分の命と仲間の天秤に掛けたら、自分の命を捨てるんだよ?」
「…………」
リナの言っている事を否定出来ない、核露なら、事情を把握すればみんなの為ならと、ここにいる赤ん坊を皆殺しにする事を選ぶ。
みんなを守る為なら罪を背負う……核露を仲間だと想うのなら、自分もその覚悟を持たなければならない……
「…………」
明らかに悪意を感じるモノではない存在、それを踏み付けるのは、人としての道徳を捨てる事……初実は息を止めて、赤ん坊の亡骸に靴底を見せて……
『グシャ!!!!』
「リナ……言ったよね……初実を傷付ける真似をしたら許さないって……」
「核露!!!!」
赤ん坊の亡骸を踏み付けたのは、核露であった。
「僕とリナは軍人だ。いざとなれば悪魔にもなる。ここにる赤ん坊が僕達の世界を破壊するというのなら、躊躇わずに殺す。だけど、それを初実にさせるつもりは無い」
自分の為に用意されたミノタウロスが現れなくなり、初実の気配を追ってここまで来たのだが、そこで目にしたのは、初実をいじめているリナであった。




