帰郷212
「そんな、はしゃぐもんじゃねぇだろ。勝った試合なんだ、ダイジェストで良い」
既に勝利が確約されている映像だって分かっていると、これから見るのが途端に陳腐になる。
テレビの中では、ヘルメットを被ったアナウンサーが迫真の演技で、まるで今この瞬間に戦闘が行われているかのように騒ぐ。
平地に並べられた対空戦車が、角付きのペガサスに砲身を合わせると、爆竹を破裂させたかのような絶え間ない砲撃が始まる。
「良い選択だ。クラスター爆弾なんて、あんなのバカスカ撃てる兵器じゃねぇ」
対空戦車の機関砲が、大量に浮かぶ角付きのペガサスに対して無数の弾丸を撃ち込むと、まるで殺虫剤をかけられた蚊のように、ボトボトと落ちていく。
「あれで止めを刺すんですね」
「そうよ。防衛なら、陸軍の方が優秀なの」
瞬く間に、角付きのペガサスの肉壁が消えて、城型のゴーレムの正面にポッカリと空間が出来上がり、そこに控えていた戦車から次々と砲弾を撃ち込まれると、城型のゴーレムが破砕されていく。
そんな城型のゴーレムを守ろうと、キノコの兵士とミノタウロスが平地を駆けて突っ込んで来るが、そこには歩兵団がいる。
差し迫って肉弾戦を挑もうとしても、重火器による弾丸の壁を乗り越える事は出来無い。
古い時代の軍隊は、現代の攻城戦の前に打ち負かされるのであった。
「圧倒的じゃないスか、我が軍は」
「これなら敵も怖くないね」
リナとミィオは、自分達が散々苦労させられた相手が、こうも容易く処理される姿を見て、自分達はお役御免とばかりにしているが、
「お前達、この状況がいつまでも続くと思うな。均衡が崩れれば、あっという間だぞ」
「あっという間?」
「そう、リディの言う通り、私達は薄氷の上で頑張っているというのが、正しい見方かしら」
「そりゃどうも、リミィのクローンさん」
リディは、リミィのクローンに対して目を吊り上げるが、そんな敵意を剝き出しにするリディに対して、リミィのクローンは微笑みを返す。
「あの……あっという間というのは……」
二人の関係が良好じゃないのは分かっているが、それでも何が「あっという間」なのかを聞きたくて、リナはおずおずと二人に声を掛けるが、
「リナ、テレビの画像を見てみな。戦っているのは平地で、使っている武器は全て環境が整っている所でしか使えない。森の中では、戦車も対空も使えない」
二人の関係に関わらせないようにと、美優が代わりに答えてくれるのであった。




