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信仰心と神仏観 蛙と罰と御利益の狭間で  作者: 桂虫夜穴


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4、お土産屋さんの小さな陶器の亀ちゃん

ウチの近所には、某有名な神社がある。

学問の神様を祀った…と、言えば

大体、察しがつくだろう。


昔は正月や受験シーズン以外は

今程、観光客はいなかった。

それが、昨今のインバウンドとやらで

今や、大変な事になっている。

一年中、芋の子を洗うような大賑わいだ!

…なのだが…


それは…

私ら、地元民にとっては、大事(おおごと)だ!


昔は、ふらりと散歩に出かけたものだ。

石畳の参道をのんびり歩いた。


それが、今は、人の混雑、渋滞をすり抜けなければ

境内に、辿り着けないと言う嘆かわしさだ。

あたしゃ…忍者か!

などと、思ったりしながら

外人観光客に遠慮しながら、端っこをコソコソ

歩いている。

誰の国やねーん!

ここは、どこやねーん!

…と、何故か、関西弁で、叫びたくなるのだが…


しかし、参道に並ぶ、お土産屋さんや、飲食店は

今や、それで成り立っているのだ。


大した買い物もせず、ただ、プラプラ歩いてる

私らより、よっぽど、ここの商店の方達の

役に立っているのだ。

貢献しているのだ。

インバウンド様々なのだ。



うん?何の、話しだった。


そうだ!雨蛙を好きになった、きっかけだった。

それが、この神社の参道に並ぶ

一軒のお土産屋さんに関係するのだ。


始まりは、そこ、からだ!


…と、言っても、初めは、亀だった。

何ですと?カエルでしょ!

カメじゃないでしょ!…と、言わんでくれ!

慌てなさんな。まぁ、話しを聞いてくれ!


それは、ある年の正月の事だった。


元旦を避け、人手が多少減った頃に

神社に初参りに出掛けた。


昔は、カウントダウンを狙って

行列を避け、地元民だけが知る秘密の裏道を通って

境内に向かったものだが

今やガードマンの警備も厳しくなり

それもできなくなった。


…なので、元旦を、避けて…となるのだ。


境内で、お参りし、おみくじを引いて

帰りに馴染みの茶店で抹茶とお饅頭を頂いた。

いつもの、定番コースだ。


後はプラプラ、いつも寄るお土産屋さんを

何件か、回って、ご帰還だ。

しかし、おしゃれな通りになってしまった。

スタバやジブリショップがある神社の参道と言うのは

やはり、中々のモンでは、ないだろうか!


最先端のカフェと

若くてかわいいオシャレな店員さん。

そして昔ながらの陶器や風呂敷、扇子を扱う

おばあちゃんが経営する、お土産屋さん。


新旧が混在し、見事にマッチしているところが

ここを立派な観光地化してくれている

要因なのかも知れない。


…かもしれない。…だよ!

ワタシ、素人ダカラ、ヨク、ワカラナイヨ!


お土産屋さんで

娘が小ちゃな猫ちゃんのガラス細工を欲しがった。

地元のガラス工芸作家さんの作品だ。

お年玉で買える範囲だったので、ご自由にどうぞ!

…と、なった。

自分の財布から自分のお金で

自分の欲しい物を買う。

これも、立派な社会勉強だ。

早くから、

経済観念を養っておくに越したことはない。

私の若かりし日のような

物欲主義に陥ってしまったら困りもんだからね。


娘が、そのお代を払おうとレジに並んだ時だ。

私は、その横で、それを発見した。


レジ置きの台の上にも、小さな小物達が

綺麗に並んでいた。

ここも、多くは、カラフルなガラス細工だ。


その中に、何故か

私の心根をくすぐる陶器の小物があった。

小物と言っても、極小小物だ。

1センチにも、満たない大きさだ。

…いや、小ささだ。


それが、亀の置物だったのだ。

…と、言うか、置き物と言いながら

どこに、置くんだと言う程の小ささだ。

テレビだなの上やテーブルなど

何気に置くと、すぐに失くなりそうな代物だ。

掃除機で知らぬ間に吸い込んでしまうレベルだ。


しかし、私は気に入ってしまった。

その趣きがよかったのだ。

ガラス細工のような強い主張は、してこないが

薄緑の生地に濃い緑で甲羅などが描かれている。

優しい色彩だ。水彩絵の具を思わせる繊細さだ。


形も良い。この、サイズの、甲羅に、頭、手足、尻尾

全てが盛り込まれている。


私は小皿に入った。その子をひとつまみして

目の前で眺めた。

めっちゃ可愛い!

裏側は白色だ。

背中の緑との対比としてはベストな色の選択だろう。


しかし、ここで、驚く事に直面した!

イイのか!これでイイのか!

このお値段でっ!

なっ、なっ、なんと!

ショプチャンネルじゃないけど、マジ驚いた。


百円ですよ!


消費税入れても、百十円!

この繊細な伝統工芸が、たったの、百十円…


なんか、作家さんに申し訳なくなるよ!

しかし……ならば、10個買おう!

…とは、ならなかった。


毎回、来るたびに、一個…一匹かな。

買う事にしようと決めた。

親亀の背中に♪ 子亀を乗せて〜♪ みたいな…

若い人は、このフレーズ知らんか!


まぁ、律儀にそうしようと思った。

少しずつ、積み上げて行く感じが大事だと思った。

まとめ買い、大人買いは性に合わんし…

それで、イイのだ!


亀ちゃんのお代を払うと

お年玉袋的な包装袋に入れてくれた。

それさへも…

百円ポッチで申し訳ないと思ってしまった。


しかし、私は、そのお店のおばあちゃんの御好意を

すぐに無駄にしてしまう行為に走った。


お店を出ると、すぐに袋を開けて

亀ちゃんを、引っ張りだし

お財布の小銭入れコーナーに入れた。

そこに、住んでもらう事にした。

ここが、一番、肌身離さずに近い。

その上にスマホという、身体とほぼ一体化した

恐るべきコンピュータシステムが存在するが

キーホルダー化などしていない亀ちゃんを

ぶら下げる事はできないので

お財布がやはりベストな選択だ。


亀と言えば、やはり、ご長寿と繁栄の象徴的存在。

それに、あやかりたいと言う魂胆ミエミエだが…


それ以上に、やはり可愛さが勝っている。

私は華美なものより

こう言った素朴な味わい深いものが好きなのだ。

手の平に乗せた時のチョコンと感が

堪らない魅力を醸し出しているのだ。


しかし…しかしだ。

ここでも、しかしだ。


この、亀ちゃんが、すぐに居なくなるのだ。

可愛くて大切にしてるつもりなのに

小銭と同居が嫌なのか…突然、居なくなるのだ。

アレ、さっき、お金払う時は確かにいたよな…

…的な感じだ。


落としたか!

辺りを探すが、見つからない。

しょうがない。

わざわざ、亀ちゃんだけの為にお土産屋さんに

出向く事になる。



何度か、なくなるたびにお土産屋さんに走った。

そこで、しょうがないと

とうとう、二匹飼いになってしまった。

当初の一匹ずつ、コツコツと…のスタイルを

貫く事はできなくなってしまった。

しかし、亀ちゃんが一匹もいない。

空白期間をなくす事は、できるだろうと言う

苦肉の策だ。



やむを得ない、対策だったが

これも、功を奏す事はなかった。

また、居なくなったのだ。

今度は二匹同時にだ!

駆け落ちか!そんなに、私が嫌いか!

…と、少々、落ち込んだ。

いや、少々、どころではない。

大好きな人に…何度も、逃げられたのだ。

捨てられたのだ。

酷く、落ち込んだ。ヘコんだ…


しかし、その後、さらに私を落ち込ませる

出来事が待っていた。


もう、亀ちゃんの事は諦めよう。

私の事が、嫌いなんだ。

しつこくしたら、更に、嫌われる。


そんな、失恋女のような感情になっていた。


しかし、私は結局、未練たらたらで

お土産屋さんに向かったのだ。

亀ちゃんの分身を求めて…


しかーし、相変わらず、しかしだ!


そこに、亀ちゃんはいなかった。


アレ?

ここ、いつもの小皿?

ないねぇ?


私が、キョトンとしていると

お店の、おばあちゃんが話しかけてくれた。

もう、馴染みになっていた。


そりゃ、そうだろ!

毎回、百円の蛙の置物しか買わんオバンなど

他におらんだろう!


おばあちゃんの話はこうだ!

最近、亀ちゃんの映像がSNSで流れて話題になり

観光客が一気に買って行ったそうな…

うううっ…

しかも、在庫も尽きたそうで…

次回の入荷は作家さん次第との、事だ。


ワーッ!そんなん、ないでしょ!

悪習慣だよ!そんなの!ダメダメ!

すぐ、ネットだよ!

まさか、横流しはないだろうけど…

いや、わからんか!

メルカリ?

もう、やめてよ!そう言うの!

作家さんの生活を含めた今後の活動の為には

なるかもしれんけど!

イイのか!そんな売れ方で!

アーッ!

私は、店先で、頭を抱えた。


絶望感に酔いしれて

今にも、崩れ落ちそうになっていた、その時だ!


神の声がした。

神社からではない。


おばあちゃんの口元からだ。


「代わりに、こちらなんか、どうかしら?」


おばあちゃんが、小皿を差し出している。

そこには、あの、全く同じ色…緑の小物達。


何だ、ここに、居たじゃん!

おばあちゃんったらぁ、人が悪いんだからぁ…

私の為に少し、残してくれてたんだね!

ありがとうございまーす!


そう、勝手に思ったが、よくよく見ると違ってた。

亀じゃなかったんだよ!


それが……蛙ちゃん…だったのだ。



続く


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