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信仰心と神仏観 蛙と罰と御利益の狭間で  作者: 桂虫夜穴


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3/6

3、罪と罰と雨蛙

弁当を荷台ボックスに入れると

裏道を抜け、一気に目指す場所へ向かった。


そこは...あの、蛙寺だ。


いつぞやは、輩ファミリーに散々な目に合わされたがリベンジの意味も兼ねて、再び訪問する事にした。


花見客で、大賑わいかと、思ったが

それほどでもなかった。


桜は、あるには、あるが

ここは、特に桜で有名な場所ではない。

数々のカエルの置物で有名なのだ。


桜の名所なら他にいくらでもある。

皆、そちらに足を向けたのだろう。

しかも、神社、仏閣の境内は

飲食禁止となっているのが普通だ。

花見で宴会など、もっての外だ。

よって、他に流れたのだろう。


だが、私は罰当たりな悪事を企てていた。

すみっこの木陰でこっそり

「若女将のお弁当」を、頂こうとしていたのだ。


しかし、そんな愚行は、神様仏様はお見通しだ。

見逃しはしない。

コソコソと場所探しをしていると

娘の様子がおかしくなった。

顔色は真っ青で、唇は紫色だ。

プールで、体調を崩した時のような様子だ。


まだ、陣地取りを決行していないのだ。

物色していただけなのだ。

それなのに..もう、罰か...


しかも、娘が苦しんでいる。

私が、一番痛みを感じる罰だ。

変わってやれたら、よっぽど楽なのに...

と、言う、精神的抑圧系..罰だ。


仕方ない、木陰の椅子に、座る事にした。


「お腹...すいた...」


その、娘の、消え入りそうな微かな声が答えだった。


花見で、お弁当…それを楽しみにして

朝食も控えめにしていたのだ。

それに、バイク走行中の涼しさに比べ

日差しも強くなり、突然、春風が吹いた時以外は

結構、お寺の境内は暑くなっていた。


娘は低血糖と暑さで、貧血を起こしたのだ。


食事をしなければ、これは、治らない。

しかし、罰を受けてまで

ここで、弁当を食う気は、ない。


娘が少し、気分が良くなったところで

当初の予定を早め、馴染みの日帰り温泉へ向かった。


バイクの走行中、背中に重みを感じた。

娘がグッタリしているのだ。

こんな事はあまりない。

病院か!とも、思ったが

日帰り温泉なら、ここから8分ほどの距離だ。

取り敢えず、そこに、急行して、休息する事にした。



すぐに到着したが、娘はグッタリだ。

ヘルメットを外して、おんぶして館内へ入った。

受付を済ますと、休憩所へ急行した。

空いている畳のスペースに陣取って

娘にスポーツドリンクを少量飲ませて横にならせた。


温泉はまだ、絶対無理だ。

食事も、少し落ち着いてからにしよう。



少しして、娘の方から


「お腹、空いた…なんか、食べたい…」


…の、リクエストだ。

頃合いかなと、食事処へ向かった。


残念だが「若女将弁当」は

夕食のご馳走になりそうだ。


私は日替わり定食。

娘は、そうめん定食だ。

まだ、季節は春と言うのに、もう、そうめんか…

…と、思ったが、娘には、ありがたかったようだ。


ツルツルとした、食感が、爽やかで

萎えた気分も回復したようだ。

すぐに血色が戻ってきた。

紫色だった唇も

さくらんぼちゃんみたいな可愛い色に戻った。


もう少し、休憩して、落ち着いたら温泉だ。




食事をしながら、行きがけの道中の事を思いだした。


蛙寺まで、後、僅かな距離だった。

突き当たりの信号を左折して

二つ目の信号を挟んで両横が、お寺と駐車場だ。


その突き当たりの信号直前で不思議な体験をした。

他の人には

何の引っ掛かりのない事かもしれないが

私にとっては、驚くべき事だった。


「あの、信号を左に曲がったらすぐだよ!」


...と、左手をそちらにかざし

娘に大声で言ったところだ。

何せ、風切り音とエンジン音のミックス効果だ。

大声で叫ばざる追えない。


その直後、何か、緑色が、転がっていった。

ゴミか何かか?緑色とは言え葉っぱなどではない。

何か、固形物がコロコロと跳ねながら転がって

後方に飛んで行った感じだ。

まっ、ゴミか、何かを跳ねたか?

気にせず、行こうとしたが...

「ハッ!」...と、なって、急ブレーキをかけ

路肩にバイクを寄せた。


娘は、何事?...と、言う顔をした。


「落ちてる!カエルちゃんが落ちてる。」


ハンドル上の両バックミラーを土台に

風除けの硬質塩化ビニル系の風防を取り付けている。

その、左角あたりに吸盤で引っ付けていた

蛙のマスコット人形が外れていたのだ。


もう、ひとつ、隣りに仲良く、吸い付けていた

アヒルのマスコットは健在だ。

確認の為、引っ張ってみたが、これは、外れない。


何故か、カエルちゃんだけが外れてしまったのだ。

たまに、外れる事はあったが

ここ何年かは、そんな心配を忘れる程

ピッタリ、引っ付いていた。


それが、突然、蛙寺、直前で

ハズれてしまったのだ


蛙寺とカエルちゃん。

何かの暗示なのか?




振り向くと、2、30メートル先に

小さな緑色のかたまりが路肩付近に落ちている。

えらく、大ざっぱな距離感だ!と、思わんでくれ

メジャーで、測った訳ではない。

大体、そのくらいだろうと言う、推測だ。


そこは、幸い田んぼに囲まれた田舎道だ。

それほど、車は多くない。

後続車もなかった。


私はバイクのエンジンを止め、スタンドを立てて

娘を一旦、後部座席から降ろしてから

カエルちゃんの元へ走った。


その場に辿り着くとすぐに拾い上げた。

無傷だ!

無事で良かった。


「なんか、不思議だね。

蛙寺に、もうすぐ着くのに、カエルちゃんが

落ちるなんてさ!偶然だろうけど…

でも、もしかしたら、不吉な事かな?」


私はカエルちゃんを手の平に乗せたまま

娘に、そう話した。


「行ったらダメって、事かな?」


「まぁ、それは、わからんけど…

とにかく、もうすぐだから

取り敢えず行こう!

お腹も減ったし…お弁当!お弁当!」


「うん!お腹空いたぁ!」


「ヨシ!じゃっ!ハイ!乗って!」


再び、バイクを走らせた。



今、思えば、暗示していたのかもしれない。

行くな!…と、忠告していた訳ではない。

どうせ、行楽に行くなら

朝食をしっかりとって、水分を充分に補給して

それに、挑めと言う忠告だったのだ。


お寺の境内は結構広い、小高い丘に面して

小道が網目のように配されている。

全てを観て回ろうとすれば、結構な時間を

要するのだ。


少しばかり、見物してから、お弁当と言う

安易な発想が娘の体調の、急変を引き起こしたのだ。


腹が減っては戦はできぬ!


大昔からのことわざだ。

誰でも知っている。

しかし、中々、それができない。

独身時代は

朝寝坊して朝食抜きで通勤などはしょっ中だった。

今は、さすがに、ダンナの弁当!

娘の通学の身支度などで寝坊どころではないが…



だから、なのだ!

この寺に(おもむ)くと予定した時点で

しっかり朝食を娘に取らせるべきだったのだ。

食事が禁止されている場所で

食事場所をウロウロ探すなどと言う

愚行をしてはならなかったのだ。


全て、私の責任だ。

親が子供の体調を心配し

管理してあげる事は当たり前の事だ。


まだ、娘は小学一年生なのだ。

自分で完璧な体調管理をする事は難しい。

それは、大人で、あっても同じであろうが…


だから、家族で、目を配り、お互いが気にし合って

健康に気をつけなければいけないのだ。


今回の事は、戒めとして、私の心に

深く刻まれた。


何事も充分な準備と計画と体調管理が重要だ。

そして、場合によっては、柔軟な対応が必要だ。

当初の予定を貫くのではなく

その時々、変化する。場面や体調に

的確に対応する。

その事の大切さを改めて認識させられた。




今回の事で…

今や、カエルちゃん!では無く。

蛙様と呼びたくなるくらいの

不思議な存在になってしまった。



ただのマスコットでしょ!

何故に、そこまでと思うかもしれないが...


この、カエル...ありきなのだ。

元々、カエルが好きで、蛙寺を訪れているのだ。


しかし、魚と同じだ!

生蛙を触ったりなどは、できるわけがない。

ただ、映像などで見て

雨蛙は色もスタイルも可愛いと思う。


しかし!再び、しかしだ。

グロテクスなヤツは全然ダメだ。

牛ガエルや、イボ蛙に、ガマガエル。

デカくて、気持ち悪いヤツは全部ダメだ。


その中で雨蛙ちゃんは

たった一匹だけ私の心根に引っ掛かったのだ。


あの、微妙な黄緑か、緑の綺麗な色。

名前は雨蛙、甘カエルでも、いいよね!


でも、これも、また、昔から....

初めから好きだった訳ではない。


それなりの、きっかけと...理由があるのだ。



続く


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