第105話 年越しのステージ
大晦日。
今年を彩ったアーティストたちが集まる年末の大型音楽番組に、LUMISORAも出演します。
大晦日。
年末の大型音楽番組が放送されるテレビ局では、朝から多くの歌手や俳優、スタッフたちが慌ただしく行き来していた。
今年の総合司会を務めるのは、女優のアンナだった。
華やかなドレス姿でステージの中央に立ち、落ち着いた声で番組の開幕を告げる。
「今年も残りわずかとなりました。今夜は、今年を彩ったアーティストの皆さんと一緒に、新しい年を迎えたいと思います」
大きな拍手が会場に広がった。
番組には、Cat Starだけでなく、レンや海斗が所属する五人組の男性ダンス&ボーカルユニット、凛、ブランシュとルミエールのユニット、そしてLUMISORAも出演する。
LUMISORAは、来年の活躍が期待される新人アーティストとして選ばれていた。
楽屋では、ルミエール、ノアール、ソレイユが衣装の最終確認を受けていた。
「本当に私たちも、あのステージで歌うんだね」
ソレイユは、壁に設置されたテレビを見ながら言った。
画面には、大勢の観客が入った豪華な会場が映っている。
「年越しライブの前に、こんな大きな番組へ出ることになるなんて思わなかった」
「新人枠ですけど、出演できるだけでもすごいことですよ」
ルミエールが答える。
ノアールは、このあとも出演が続くため、すでに何度も進行表を確認していた。
LUMISORAとして歌ったあと、レンとのユニット、さらにCat Starのステージにも立たなければならない。
「ノアール、今日はずっと歌いっぱなしじゃない?」
ソレイユが尋ねた。
「着替えと移動も多いけど、大丈夫。年末のステージに三人で立てることの方が嬉しいから」
ノアールはそう言って、二人を見る。
やがて、楽屋の外からスタッフの声が聞こえた。
「LUMISORAの皆さん、スタンバイをお願いします」
三人は立ち上がり、ステージ袖へ向かった。
アンナが、カメラへ向かって紹介する。
「続いては、今年さまざまなステージで注目を集めた三人組です。来年、さらなる活躍が期待される新人ユニット、LUMISORA」
名前を呼ばれた瞬間、大きな拍手が起こった。
まぶしい光の中へ、ルミエール、ノアール、ソレイユが歩き出す。
披露するのは、『太陽色のステージ』。
ソレイユを中心にした明るい曲が、年末の会場を一気に華やかに変えていく。
ルミエールとノアールも声を重ね、三人は最後まで堂々と歌いきった。
歌い終えると、ソレイユが客席へ手を振る。
「ありがとうございました!」
三人がステージを降りると、ノアールはすぐに別の楽屋へ向かわなければならなかった。
「次はレンさんとのリハーサルに行ってくるね」
「そのあと、Cat Starですよね」
「うん。二人は先に年越しライブの会場へ行っていて」
ノアールはスタッフと一緒に廊下の向こうへ急いでいった。
ルミエールにも、まだもう一つ出演が残っている。
ブランシュとのユニットステージだった。
二人はこれまでにも楽曲やMVを発表し、写真集も発売している。
親子のようによく似た姿と、二台のピアノを使った華やかな演奏で、多くのファンを集めていた。
アンナが二人を紹介する。
「続いては、美しいピアノの音色と歌声で人気を集めている、ブランシュさんとルミエールさんです」
ステージには、二台の白いグランドピアノが並んでいた。
ブランシュとルミエールは、それぞれのピアノの前に座る。
二人が演奏したのは、クリスマスリサイタルでも披露した冬の新曲だった。
恋人や家族など、大切な人へ贈る思いを込めた曲。
二台のピアノが重なり、やがて二人の歌声が会場に広がっていく。
演奏を終えたあと、ブランシュがルミエールへ微笑んだ。
二人で並んで客席へ一礼すると、会場から大きな拍手が送られた。
その後、ルミエールとソレイユはテレビ局を離れ、Cat Starの年越しライブが行われる会場へ移動した。
ノアールは番組の出演が残っているため、まだ一緒には来られない。
年越しライブ会場の楽屋に到着すると、ソレイユはすぐにテレビをつけた。
画面では、レンと海斗が所属する五人組の男性ダンス&ボーカルユニットがステージに立っていた。
最初の曲では海斗が中央に立ち、華やかなダンスで会場を盛り上げる。
続く曲ではレンが中央へ移り、落ち着いた歌声でバラードを歌い上げた。
最後の曲では、レンと海斗が並んで歌う。
「海斗さんが真ん中の曲もあれば、レンさんが真ん中の曲もあるんだね」
ソレイユが言った。
「曲の雰囲気に合わせて変えているみたいですね」
「二人とも負けたくなさそう。でも、並ぶと一番目立つね」
子役時代から一緒に活動してきた二人は、仲間であり、互いの実力を認めるライバルでもあった。
五人組のステージが終わると、しばらくして凛が登場した。
凛は以前、清楚で大人っぽい女性アイドルグループのセンターを務めていた。
卒業後は女優として活躍しながら、ソロ歌手としても活動を続けている。
「続いては、凛さんと海斗さんによるスペシャルデュエットです」
アンナの紹介に続いて、海斗が再びステージへ現れた。
凛と海斗は並んで歌い始める。
二人の歌声は自然に重なり、互いを信頼していることが、ステージからも伝わってきた。
ソレイユはテレビを見ながら、うらやましそうに言った。
「いいなあ。恋人と堂々と一緒に歌えるなんて」
「ソレイユも、いつか悠斗君と一緒に歌えるかもしれませんよ」
「私は一緒に歌うより、まず普通にデートしたいの」
ソレイユがすぐに答えたため、ルミエールは笑った。
「それもそうですね」
「本当に、恋愛禁止っていつまで続くんだろう」
凛と海斗のデュエットが終わると、次の出演者が紹介された。
ノアールとレンだった。
二人は、夏に放送されたドラマの主題歌を歌うユニットとしてステージに立つ。
恋人ではない。
けれど、音楽の上では何度も一緒に歌い、コンサートも行ってきた相手だった。
レンが歌い始めると、ノアールの声が重なる。
二人は互いの歌をよく理解していた。
どこで声を強くし、どこで相手へ任せるのか。
言葉を交わさなくても、歌の中では迷いがなかった。
ソレイユが静かに言う。
「ノアールとレンさんも、歌っている時は本当に息が合ってるよね」
「お互いを、音楽の相手として信頼しているんでしょうね」
ルミエールには、二人がこれからどうなるのかは分からない。
ノアールを救ったことで、未来はすでに変わっている。
今のノアールが、レンとどんな関係を築いていくのか。
それを決めるのは、ノアールとレン自身だった。
二人のデュエットが終わり、番組はいよいよ後半へ入った。
アンナが、これまでよりも少し改まった声で次の出演者を紹介する。
「続いては、今年、待ち望まれていた三人での活動を再開したCat Starです」
ステージへ現れたのは、ブランシュ、ショコラ、ノアール。
三人が並んだ瞬間、会場から大きな歓声が上がった。
Cat Starとして再びステージに立つノアールは、もう以前のように闇に飲み込まれてはいなかった。
ブランシュとショコラの間で、まっすぐ前を向いて歌っている。
三人が披露したのは、代表曲『Starlight Crown』。
力強い歌声と華やかな照明が重なり、年末の大舞台を鮮やかに彩った。
「ノアール、すごいね」
ソレイユがテレビへ向かって言う。
ルミエールも、画面の中のノアールを見ていた。
元の未来では、ここにいるはずのなかった人。
けれど今、ノアールは生きて、歌っている。
それだけで十分だった。
Cat Starの出番が終わると、ブランシュ、ショコラ、ノアールは急いでテレビ局を出た。
年越しライブの会場では、すでに開演の時間が近づいていた。
しばらくして楽屋のドアが開き、ノアールが入ってくる。
「間に合った!」
「ノアール、お疲れさま!」
ソレイユが迎える。
その後ろから、ブランシュとショコラも入ってきた。
休む間もなく衣装を整え、Cat Starの年越しライブが始まる。
Cat Starのステージが続いたあと、ゲストとしてLUMISORAも登場した。
大晦日の最後の時間。
六人は同じステージに並び、観客と一緒に新しい年を迎える。
大型スクリーンに数字が映し出された。
「十!」
会場中の声が重なる。
「九、八、七――」
ルミエールは、隣にいるノアールとソレイユを見る。
今年は、多くの出来事があった。
ノアールを救い、LUMISORAを結成し、さまざまな場所で歌ってきた。
そして今、全員で新しい年を迎えようとしている。
「三、二、一!」
数字がゼロになる。
金色と銀色の紙吹雪が舞い上がった。
「あけましておめでとうございます!」
ステージの上から、全員で声を合わせる。
歓声と拍手が会場いっぱいに広がった。
年越しライブが終わったあと、スタッフが楽屋へ入ってきた。
「皆さん、このあとは新春撮影です。着物に着替えて、そのまま初詣へ向かいます」
ソレイユが時計を見る。
「今から初詣?」
ショコラが答える。
「新年最初の撮影よ。もう少しだけ頑張りましょう」
衣装室には、色とりどりの着物が用意されていた。
新しい年の最初に、ルミエールには神様へ願いたいことがあった。
お母さんとお父さんが無事に結ばれ、自分が生まれる未来が守られること。
そしてノアールにも、ソレイユにも、それぞれ心に決めた願いがあった。
お読みいただきありがとうございます。
新しい年を迎えたルミエールたちは、このあと着物へ着替えて初詣へ向かいます。




