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第100話 大学祭

ネコノミヤ学院大学の大学祭。


ルミエールたちは模擬店や展示を楽しみ、大学ホールで行われるCat Starのコンサートへ向かいます。

ネコノミヤ学院大学の大学祭の日。


ルミエール、ノアール、ソレイユの三人は、朝から大学の構内を歩いていた。



キャンパスには色とりどりの看板やテントが並び、あちこちから楽しそうな声が聞こえてくる。


香ばしい匂いや甘い香りも漂っていた。



「高校の文化祭とは、少し違うね」


周囲を見回しながら、ソレイユが言った。


「大学祭はクラスごとじゃなくて、サークルや部活でお店を出すのね」



テニスサークルの特製焼きそば。


アメリカンフットボール部のフランクフルト。


野球部のチュロス。


ダンスサークルのチョコバナナ。



校舎の中では、漫画研究会が自分たちで描いた漫画本を並べ、アニメ研究会は同人誌を販売していた。



「高校の文化祭より、お店の種類も多いね」


ノアールが案内を見ながら言う。


「どこから行こうか」


ルミエールが尋ねると、ソレイユはすぐにテニスサークルの模擬店を指さした。


「まずは焼きそば!」



三人は焼きそばの列に並んだ。


順番が来ると、ルミエールが注文する。


「焼きそばを三つお願いします」


「あ、私は青のりなしでお願いします」


ノアールがすぐに付け加えた。


「青のり、嫌いなの?」


ソレイユが尋ねる。


「嫌いじゃないけど、このあと歌うから」


ノアールは少し恥ずかしそうに答えた。


「歌う前に歯は磨くけど、もし青のりがついたままステージに立ったら恥ずかしいでしょ」


「じゃあ、私も青のりなしで!」


ソレイユも続けて注文した。


ノアールが不思議そうにソレイユを見る。


「何でよ。ソレイユは歌わないでしょ?」


「悠斗も桐谷くんと、この大学祭に来るって言ってたの」


ソレイユは少し声を落とした。


「会った時に、歯に青のりがついていたら恥ずかしいでしょ?」


ノアールとルミエールは顔を見合わせ、それから小さく笑った。



三人は近くのベンチに座り、焼きそばを食べた。


食べ終えると、ノアールは時計を確認した。


「私、そろそろ行かないと」


「もう?」


ソレイユが聞く。


「このあと打ち合わせとリハーサルがあるの。メイクも着替えもあるから」


ノアールは立ち上がった。


「コンサート、楽しみにしてるね」


「うん。あとでホールでね」


ノアールは二人に手を振り、先に会場へ向かった。



その直後。


ノアールと入れ違うように、桐谷くんと悠斗が歩いてきた。


「あ、ソレイユ。ルミエールさん」


「二人とも来ていたのね。どこへ行ってたの?」


ソレイユが尋ねる。


「工学部のロボット工学の展示」


悠斗が答えた。


「桐谷が、どうしても見ておきたいって言うから」


「大学の設備を直接見られる機会なんて、なかなかないからね」


桐谷くんは、まだ興奮が残っているようだった。


「悠斗は、何学部へ行きたいの?」


ソレイユが尋ねる。


「僕も、桐谷と同じ学部へ行きたくなった」


悠斗の答えに、ソレイユは少し驚いた。


「ロボット工学?」


「うん。今日展示を見たら、面白そうだと思って」


すると桐谷くんが、ルミエールを見た。


「ルミエールさんも、もちろん工学部のロボット工学ですよね?」


ルミエールは、一瞬返事に迷った。


「……ええ」


「大学に入ったら、もっとルミエール先輩にロボットのことを教えてもらおうと思っています」


桐谷くんは、当たり前のように来年の話をしていた。


ルミエールは困ったように笑いながら、その言葉を聞いていた。



その時、私はここにいるのかしら。



胸の中に浮かんだ言葉を、ルミエールは口に出せなかった。



「そろそろ、Cat Starのコンサートへ行こう」


ルミエールの言葉に、ソレイユ、桐谷くん、悠斗も頷いた。



四人は大学のホールへ向かった。


けれど会場へ着いた頃には、客席はすでに大勢の観客で埋まっていた。



「すごい人……」


ソレイユが、満員のホールを見渡した。


「もう少し早く来ればよかったね」


悠斗が言う。


ルミエールは、客席に集まった人たちを見ながら笑った。


「でも、私たちにとってCat Starは、身内のような存在だから」


「私たちは普段から近くで応援できるし、今日はたくさんの人に見てもらえた方がいいよね」


「そうだね。ノアールたちが、こんなに人気なのは嬉しいかも」


ソレイユも、満員の客席を見ながら笑った。



四人は後方に残っていた席へ移動し、コンサートが始まるのを待った。



やがて、ホールの照明が落ちた。


銀色の光がステージに広がる。



ブランシュ。


ショコラ。


そして、ノアール。



三人がステージへ姿を現した瞬間、大きな歓声が上がった。



イントロが流れ始める。



Cat Starの代表曲。


『Starlight Crown』。



ブランシュ、ショコラ、ノアールの歌声が重なり、満員のホールへ響き渡った。



ノアールは今回も、姉たちと並んで堂々と歌っていた。


もう、復帰したばかりのメンバーには見えない。



ノアールは完全に、Cat Starの一員としてそこにいた。



もう大丈夫。



ルミエールは、ステージの上で歌うノアールを見つめながら、静かにそう思った。



コンサートが終わった頃には、外は夕方になっていた。


大学祭のにぎわいも落ち着き、学生たちは看板や飾りを片づけ始めている。


模擬店のテントが畳まれ、机や椅子が校舎の中へ運ばれていった。



ノアールは衣装から私服へ着替え、ルミエールとソレイユのもとへ戻ってきた。


桐谷くんと悠斗は、先に帰っていた。



三人は、夕暮れの大学構内を並んで歩いた。



「今日のコンサート、すごかったね」


ソレイユが言う。


「ノアール、もう完全にCat Starのメンバーだった」


「もうって何よ」


ノアールは少し照れたように笑った。



そのまま歩いていると、ソレイユが大学の校舎を見上げた。


「そういえば、来年は二人ともこの大学へ通う予定なんだよね?」



ノアールとルミエールは、すぐには答えなかった。



「一応、その予定だけど……」


ノアールが自信なさそうに答える。


「内部進学なんだから、ほとんど決まってるんじゃないの?」


「でも、まだ推薦入試もあるし」


ノアールは少し足元を見た。


「私、学校を休んだ日も多かったから。ルミエールが来る前は、成績も内申もあまり良くなかったし……」


「本当に進めるのか、少し不安なの」



「ルミエールは?」


ソレイユに尋ねられ、ルミエールは少し間を置いた。


「私も、まだ決まったわけじゃないから」



二人とも、自信のない返事だった。


けれど、その理由は違っている。



ノアールは、この大学へ進めるのか不安に思っていた。


ルミエールは、自分が来年もこの時代にいるのか分からなかった。



ノアールは元気になった。


学校にも居場所ができ、Cat Starにも完全に戻った。



そして、ブランシュのお見合いも、もうすぐ始まる。



私は、そろそろ未来へ帰らなければならない。



来年、私は本当にこの大学へ通うことになるのだろうか――。



片づけられていく大学祭の飾りを見ながら、ルミエールは心の中でそう思った。

Cat Starとして堂々と歌うノアールを見て、ルミエールは「もう大丈夫」と感じました。


大学祭の終わりが近づく中、ノアールは進学への不安を抱え、ルミエールは自分が未来へ帰る時を考え始めます。

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