第21話 : 訓練
「いや...あの...ね?うん!今日はちょ〜っと疲れたかな〜なんて.....」
「うん!そうそう!今日ナイル起きたばっかりだもんね...!あ、明日でもいいんじゃないかな〜って...」
ナイルとレイが交渉を試みるが...
「うん。そうだね。じゃあ早くその貰った装備に着替えてきてくれるかな。」
「「はい...。」」
ーーー無理だった。
2人はザッツに作ってもらった装備に着替える。
まぁナイルは羽織るだけなのだが、ステータスはかなり変動していた。
「うっ...おぉ!!?凄い体が軽くなった!?着ただけなのに!.....てか自分でも分かるくらいの影属性が強化されてる...今までのと全然違う...!!」
そう、ナイルの装備は元々ステータスが高かった回避はそこまで底上げせず、代わりに影属性を強化してある。影属性はエンチャントに用いればどの属性より斬れ味が上がり、スキルで用いれば隠密行動で右に出るものはいない。
「これはレイのも期待だな...!」
ナイルはレイが着替えるのを部屋の前で待つ。
ーーが。一向に出てこない。
「レ、レイー?まだか?さすがに遅すぎるとクルス怒るぞー?」
もうほぼ怒っているのだが。
「レイー?どしたー?」
返事がない。物音1つ聞こえない。
「ま.....まさか.....。」
ここでナイルが想定したのは装備が自分に合わなかった時だ。
例えば剣士の為の鎧があったとする、それを弓兵が付けることはできる。出来るが、本来の性能は発揮されない上に自分を酷く締め付け最悪には死に至らせる事もある。それくらい合う装備は必要で大事なのだ。
「レイ!!レイ!!返事をしろ!!レイ!!」
しかし返事はない。鍵もしまっている。
「くっそ...!開けるぞ!声が聞こえてるならドアの前から離れてろ!蹴り開けるぞ!」
ナイルは助走を付ける。体が装備のおかげで軽くなっており走るスピードが段違いに速い。
「おぉぉっらぁあ!!!」
ーードーン
ナイルが更衣室のドアを蹴り開ける。そして中にいた〝着替え中のレイ〟と目が合う。
「.....えっ?」
「えっ。」
「何してんの変態っ!!!!」
「うぐぅぉはぁあ!!?」
刹那、プロボクサー級のパンチ(弾)が飛んできて部屋の外へと飛ばされる
「.....えっ.....何で.......」
「こっちのセリフよ!?何してんの!?」
「いや...だって返事ないし...ゴフッ...合わなかったと思って.....。」
「.....返事?.....あぁ、これね!この装備、風の加護付いてて風のように移動出来るんだけど、走っている時に風の音がうるさすぎるから耳栓の機能が付いてて、それを試してたのよ。」
「.......あ、なるほど...じゃあ俺の.....勘違い...ガフッ.....てか...めっちゃしっかり腹に入った...」
「や!ちょ!ごめん!ごめんねナイル!ナイル!ナイルーーー!!」
ナイルの視界は静かに暗転したのだったーーー。
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「...んで?そんな馬鹿なことしてて遅れた...と。」
「「すいませんでした。」」
装備に着替えるだけで約2時間、ナイルとレイはクルスを森がちょうどない広場ーーー魔樹と戦った場所に炎天下の中、待たせたのだ。
「...汗で地面に水溜り出来てるんだけど。」
「「ほ、ほんと...すいませんでした...。」」
(な、なんでクルス動かないんだろうな)
(わかんないよ...!てかどうやったらあんなに汗かけるの!?)
(クルスは昔から汗っかきだからな...)
(汗っかきってレベルじゃないけど!?)
「何コソコソ話してんの?。」
「「い!いえ!何でも!!」」
「まぁいいよ。じゃあ訓練の内容を説明するね」
「お...?あんまり怒ってないようn...」
「この、俺のかいてる汗以上をかくこと。それまでずっとメニューをルーティーンするからね。」
クルスはニッコリと笑う
ーーー目は笑ってないけど。
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「ちょ.....まじ.....しぬ.....。」
ナイルは魔力が枯渇するまで剣にエンチャントを纏わせ素振りをしたり、影に潜って移動したり...を繰り返していた。
そして魔力が枯渇するとスキルは使わず、走り込み、魔力が回復したらまたスキルの連発.....と正直勇者になる為にやらされた訓練よりハードな内容をしていた。
「兄さんはこれでも足りないくらいだよ。暗殺職は基本ステータスはそこまで高くないんだ。こうやって底上げしないとそこまで上がらないんだよ。」
「や.....ほんと.....倒れそう...」
レイは風の加護で移動速度を加速させ、木に対魔銃で跳躍弾を連射し、跳ね返ってきた弾を避け続ける。
もし当たれば普通にアザが出来るくらい威力のものである。
「お前は命中率はいいのに回避がザルすぎる。黙ってやれ。」
「なんか私にだけ言い方凄いキツくない!?」
ーーこっちは色んな意味でキツかった。
そうして訓練をやり続ける事.....5時間。
途中休憩が入ったとはいえ、想像を絶するキツさだった。
「俺.....もう無理.....動けない.....」
「私も.....足がもうプルプルしてるよ.....」
2人は地面に倒れ込んでいた。
「.....まぁ頑張った方かな。ステータスも.....うん。だいぶ上がったね。」
クルスが2人を確認しながら言う。
ナイルは影属性に対する適合値、扱う力
影のスキルのステータス
回避性能、反応速度がしっかりと上がっていた。
以前よりスムーズにスキルが出せるようになった感じだ。
レイは対魔銃との適合値、弾を少魔力で生成
風の加護の力を引き出すための時間、効率
回避性能、反応速度、持久力が上がっていた。
「これでもまだ足りないくらいだよ。街で聞いたよ二人とも、地炎龍を討伐するんだってね」
「おう...そうなんだよ...あ、まぁ2人だけじゃないけどな?一応応援を呼ぶつもりだし...」
「それには僕も参戦するよ」
「ホントか!?助かるぞ!!」
「勇者としてのクエストの討伐対象でもあるからね。.......でも。僕は足を引っ張る人がいるのは嫌だからね。兄さん。強くなってもらうよ。」
「ひぃ.......」
ナイルは嬉しいのか悲しいのか複雑な心境だった
「ま、まぁとりあえずこの訓練は終わりだろ?.....じゃあクルスの家に帰っt...」
「あぁ、そうだね。兄さんはい、これ回復薬。そこの女は帰ってていいよ。また明日もこの訓練をするからな。」
「私、レインって言うんですけど!!そろそろ覚えてくれないかな!?」
クルスはレイには辛辣だった。
「.....ん?レイは帰っていい?.....ん?何この回復薬...?」
「??何がわからないの兄さん?今のは〝暗殺職〟の訓練だよ?」
ナイルの顔がみるみる青ざめていく
「今からやるのは〝勇者職〟の訓練。さぁ...!はやく飲んで!あと5時間、晩御飯までには終わらそうね!」
クルスはそう、屈託のない笑みで言ったのだった。




