第9話 : 勇者と魔王の血
「こロす...コロス...。魔おウの意思をつグもノは...。滅殺セよ...。」
ナイルはレイとマルスを目で捕捉しそっちにゆっくりと歩き出す。
ズルズルと宝剣をひきずりながら。
「はぁ〜ん?どういう事だ!あれはぁ勇者一族のみが持てる剣だぞ!勇者職ではないのなら効力は発揮しないはずだぞぉ〜...?しかしまぁ...?本来のエクスカリバーの様には見えないぃケドねぇ...?」
レイは考える。.....父上から聞いている通りのものがエクスカリバーなのだとしたら...ナイルが今持っているものはエクスカリバーとほぼ真逆の特徴をしている...。
形は聞いたとおりのようだけど...色、纏っているオーラ、属性、すべてが...真逆。
でもナイルが考えている事は結果勇者としての本分...。どういう事。どうしてナイルが真逆のものとは言えエクスカリバーを起動できるの。ナイルは暗殺者じゃないの.....!?
レイは想定外の事態についていけていなかった。
「ふ〜ん...想像以上に面倒ですねぇ〜ここは行ったら居なかった。と報告する事にしましょう...それではお嬢様?頑張って下さいねぇ?」
「っ!!ま!待て!!お前にも用事が!!」
しかしマルスは魔方陣を展開する。
「では。せいぜい共に戦った仲間に無残にも殺されて下さぁい♪さようなr」
「.........は.....ぃ.....?」
ドシャッ。
鈍い音を立ててマルスの右腕が地面に落ちる。
「うぅうぁぁぅあぁぁあ!!!?こいつ!!何なんだ!!さっきまであんな遠くに.....くっ、右腕がぁぁ!!」
そう。マルスの右腕を切り落としたのはマルスの目の前にいるナイルだった。
「あーーー...?魔オうノ...かんブ...。マおうノナカま...。滅殺...スる...。」
「くっそ!!来るな!!スキル!〝闇圧縮〟!!!」
すると大きな闇の球体がナイルを包む。
「漆黒の闇に飲まれて潰れろ!!!!!
.....ふぅ...人騒がせなやつだぁったねぇ...。
.............は...?」
マルスの放ったスキルは完全にナイルを捉えていた。が、ナイルはそのスキルを吸収したのだ。
「これは...同属性でもナイルの方が上だったから効かずに自分の魔力の供給源にした...って事!?」
レイは驚く。それもそうだろう。なんせ
「私は.....魔族で、魔王幹部だぞ.....!!?そんなわたしよりぃ.....闇属性が強い...!!?」
「こいつぅ...実は魔族でしたなんて言い出したら洒落にならないねぇ〜。席争いが1つ無駄に増えてしまう...。」
ナイルはズルズルと剣を引きずりながらマルスへの距離を詰めていく。
「魔オウの幹部.....さキ...たおス。。。」
「これは本当にぃ...面倒そうだ。本気で逃げさせて貰うよぉ。」
「...コろス!!」
ナイルは地面を蹴る。マルスは
「空間転移魔法!展開!ワープ術式!マークスt」
ズッ...。
「ゴッ.....ハッ.......。」
マルスが魔方陣を展開するよりも早く、ナイルの剣が心臓を貫く。
「この...私がぁ.....こんなぁ...所.....で.....。」
そう言い残しマルスは淡い光の粒子となって消えていく。
任務を終えたかのようにナイルはコッチを向いた。レイは悟る。当然の報いなのだと。
「魔王の...ムスめ.....ほソく.....。ただチに...滅殺.....。」
私、ヴァルシャース=レインの父親は魔王だ
。領土を得るために沢山の無害な人々を殺して来た。例えば年端も行かない少女でも。足が不自由なお婆さんでも。問答無用で魔物に襲わせた。私はその魔王の血を引くもの。罪は受け継がれる。これは当然の報いなのだと。
ナイルはレイの目の前に立ち剣を振りかぶる。
私はせめてもの罪滅ぼし...と魔物を狩ってきた。人間とも仲良くしたくて人間に擬態までして。でもそれは結局私の自己満足にすぎない。
私はここでナイルに殺される。本当ならあの猿に殺されるかあの幹部に殺されるかだったんだからまだ幾分かナイルの方がマシ。
私を命懸けで助けてくれて、一緒に戦って。もう充分。私には大きすぎる幸せだよ。
ありがとうナイル。ありがとう。
ナイルは剣に力を込める。剣は黒く闇に染まる。
ありがとう。ありがとうナイル.......でも。でも。...もうひとつだけ。あとひとつだけ願いが叶うなら。
「.........まだ.....生きたかったなぁ...。」
レイの目から涙がこぼれ落ちる。
ナイルは剣を振り下ろす。
剣は斜めに下ろされレイの首元へ走る。
「.....っ.....!!」
「.........?」
レイはまだ死んでいない。剣が首筋に少し触れ血が滲んでいるが振り下ろされていない。
ードーーートクンーーー...
心臓の鼓動が少しおさまる。と同時にナイルの意識も段々明白になっていく。
「.....ざけんナ...!!俺は!こんな血ニは負けねぇェえ!!」
「ナイ.....ル.....?」
「レイ!まだ無事カ!一旦離れロコロせ」
見ただけではよく分からないがナイルは自分の中の〝何か〟と戦っているようである。
「これを...知ってたカら...勇者ニはならなかッタんだよ.......クッ...!!」
ナイルは剣を持っている右手を左手で抑える。
「勇者一族ノDNAニ元々埋め込レテいる.....魔王因子関連の滅殺ト言うプログラム.......!」
「俺は...コレが気に喰わねェ...!!」
ナイルは次第に通常の話し方に直っていく。
「魔王関連は...絶対に殺せ...ダとか.....そんナの...言っテるから.....ダメなンだよ...!あの.....心臓の鼓動は...これカ...!!」
ナイルは左手で剣を地面に突き刺す。右手は剣を引き抜こうとする
「魔王軍にだって...戦いたくねぇやツ.....世界を助けようとしてるやつだって.....」
ナイルは左手に渾身の力を入れる
「いるんだよ!!!!!!!!」
ナイルは力任せに宝剣エクスカリバーを〝折った〟のだった。
「っ.....はぁ...はぁ...。」
ナイルの見た目が戻っていく。髪は元の黒に目は赤い部分が引いていく。
「ナイル...!!!」
レイが素早く駆け寄る。
「すまねぇな.....変な事...してしまって...」
「ううん。ううん.....。ありがとう...。ごめんね...。」
レイは涙が止まらない。
「私.....私.....こんな事をした.....のに.....生きたいって...生きたいって...思って.......。」
「いいんだよ。それで。魔王の血を引いてたって...関係ない。〝お前自身がどうあるか〟だよ...。」
「うん.....。うん.....。」
レイはしっかりとナイルの手を掴んで離さない。
「おぉ...自動転送がはじまったね.....お互い色々聞きたい事、話したい事があるだろう.....また、上についたらゆっくり話そう...!」
「.....うん!!!」
ナイルとレイを青い魔方陣が囲んでいく。
外の街へと転送されるのだ。
こうしてナイルは初めての洞窟の攻略を終えたのだった。




