第8話 : 魔王の因子
「バルハート.....マルス.......」
レイがそう呟く。
「知って...るのか.....?すまんが俺は...わざとそういう情報には関わらなかったから...知らないんだが.....ゴホッ.....。」
ナイルは今にも倒れそうだが力を振り絞り立ち上がる。
「ふっふーん?流石の王女様も知ってるようですねぇ〜?嬉しいですねぇ〜」
「黙りなさい。同胞殺しのマルス!!」
「...........?」
ナイルはいまいちついていけていなかった。
この会話には不自然な事が二つ。
ひとつはレイが〝王女〟だと言うこと。
もうひとつは〝魔王幹部を知っている〟という事。
ーードクンーー
何故かまた心臓が痛い。魔王幹部と意識した途端に痛くなる。何なんだ?
しかし痛みは一瞬なのでナイルはそこまで気にしない。
「そこの瀕死のぉガキが私の玩具を壊したんですかぁ...?憎い奴ですねぇ。」
ピエロは仮面越しでも分かるほど忌々しい殺気を俺に放ってくる。しかし今はそれより気になる事があるのだ。
「お...おい。レイ.......?王女...?魔王幹部と知り合い...?ってはどういう事なんだ...?」
「.......それは.....。」
レイは口を濁す。
「ほほぅ〜?ほぅほ〜う?」
マルスが状況を把握したように話し出す。
「つぅ〜まぁ〜りぃ〜?レイ王女は?自らの命を呈してまで助けてくれた人にぃ?自分についての〝本当の事〟を何一つも言ってないって事...の、ようだねぇ〜!」
「ち!ちが...!これが終わったら話そうと...!」
「綺麗事ですよぉ?王女。つまり貴方は魔物を倒し、最終的には〝お父上〟を倒そうとしている彼には私も過程として倒されるかもしれない。と思い、怖くて話せなかった。でしょぉ〜う!」
ーードクンードクンーー
心臓が痛い。鼓動が何故か強くなる。
本当に何を言っているのか最初はわからなかった。しかし、少し落ち着き頭を冷やせばおのずと見えてくる答えだったのだ。
今までのマルスの会話。最終目的にレイの父親が関係してること、高貴なドレス、魔猿との戦闘中、俺の事を〝人間のくせに〟の発言などを考えると分かることである。
「くっひひひひ!!さすがの人間でもわかったんじゃあ無いですかぁ?」
「やめろ!言うな!これは...これは私からいu」
「この人はぁ!!魔王ヴァルシャース=グレイ様の娘、ヴァルシャース=レイン様だぁ!」
「そして...困ったお転婆娘でねぇ...?凝りもなく魔王城を抜け出しては魔物を狩っている。魔王の娘じゃなけりゃあ反逆者なんだよぉ〜!今回の私の依頼は〝娘を連れて帰ってくれ〟だけどぉ?着いた時には魔物に倒されてました...って報告するつもりなんだぁ〜!だって1番有能な次の魔王の席が開くからねぇ〜くひひひっひっ!」
ーードクン!!
心臓が大きな音を立てる
つまり、レイ...。ヴァルシャース=レインは魔王の娘。この世界に魔物をばら撒き、多くの人々を苦しめた元凶の娘。
しかし娘は魔物を狩っている。
そしてその娘を事故に見せかけ殺そうとしている魔王の幹部。
想像を超えるスケールの大きさだった。しかし考えてもここでの最善策が見つからない。
ーードクンーー
心臓がまた1段と弾む。血の流れが早いのが自分でもわかる。
俺はもう疲労がピークに達している。安定して歩く事すらままならない上に魔力は0である。
故に戦う事も逃げる事も出来ないのである。
「ナイル...違うの...違う.....私は...私は...!」
ードクンーードクンードクン
レイは何かを訴えようとしているが何故か耳にあまり入ってこない。今はそれどころでは無い。レイのせいでとんでもない事に巻き込まれた。レイは魔王の娘。魔王は人々を苦しめ恐怖に陥れた存在。関係ない人を無残にも殺したのだから一家で責任を取っても取り切れない。娘などもってのほか。しかも時期魔王。この国を陥れる元凶になる。早めに潰さなくては。悪の芽は早めに摘まなければ。あの幹部も魔王の仲間だ。沢山の人々を殺したに違いない。なら今度はこっちが殺さなくては。殺せ。恨みのすべてを持って。殺せ。人々の怒りを全て背負って。殺せ。今後世界に平穏の二文字以外を用いるものは殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。ころせ。ころせ。ころせ。ころせ。コロセ。コロセ。コロセ。殺せ殺せ殺せ殺せ。
ードクンードクンードクンードクンドクンドク.....
「ナ.....イ.....ル.....??」
レイが顔を覗き込む。
ーーーーーーードクン.....
「魔おウにかんケイあルもの。全テ排除。抹殺スる。」
刹那、レイとマルスは瞬時に受身をとる。これはもう生存本能がいち早く察知してくれたと言うべきだろう。
ナイル中心に爆風が巻き起こる。
「.....〜っはぁ〜!!?何ですかぁ!この魔力量はぁ!!こんなにどこにしまってたんですかぁ!!?」
「ナイ.....ル.....な...の???」
レイは〝それ〟がナイルなのか一瞬わからなかった。
爆風と共に現れた〝それ〟は
目は充血というレベルではなく赤く
黒かった髪は白く染まり、どす黒い色の鎧を纏い、想像を絶する魔力をオーラとして纏い、漆黒の煙に包まれ、そして黒く、そして禍々しく、魔剣。と言われても疑いようのない、
〝宝剣エクスカリバー〟を持った、正真正銘...
ーーーナイルだった。




