#90 決着
「私の勝ちよ,ハル君」
先輩が確信を持ってそう告げる。
この大事な局面で先輩がする選択肢は,恐らく1つしかない。
だから,俺も先輩の動き,それもある一カ所にのみ意識を集中させる。
思い出すのは,いつか白山先輩に言われた言葉――
「木嶋。この前光から聞いたが,光と1対1で勝負したらしいな」
「えぇ,まぁ。結果は惨敗でしたけど…」
「そう暗い顔をするな。光も嬉しそうに話していたぞ。まさかアレを使うとは思わなかった,とな」
「アレ…? あ,もしかして最後のジャンプシュートの事ですか?」
「そうだ。
光のあのシュートは,試合中のここぞという時のとっておきで,1対1ではほとんど使わない。私も,初めてやられた時は驚いたものだ」
「驚いた,という事は…」
「あぁ。からくりさえ分かってしまえば,私やお前でなら止められるだろう」
「そのからくりっていうのは――」
そして,先輩が動く。
今回は前の1対1と違い,俺からのファウルを貰わなければならないため,先輩はどこかでタイミングをずらすはず。
それに惑わされないように,本命を叩く!
「嘘ッ?!」
完璧なタイミングでブロックに跳んだ俺の右手に,確かにボールの当たる感覚。
先輩との接触はもちろんしていない。
唖然とした表情を浮かべる先輩の前に,俺がブロックしたボールが落ちて,
俺たちが着地するのとほぼ同時に,試合終了のブザーが響いた。




