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ダンマネ!  作者: SR9
第一章 インターハイ編
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#89 最後の勝負

「行きます!」

「来なさい!」


 ボールを持った俺が定位置についた時点で,すでに飛び出した他のメンバー全員がコートにおり,一般的な3対3の形になる。

 天王寺先輩の顔にも余裕は無く,全力の構えだ。

 これでは奇襲も出来ず,しっかり1本を決めるしかない。

 一瞬,このまま残りの2人を待った方が良いのではないかと囁く声も聞こえたが,それは無しだ。

 この攻撃が成功しようと成功しまいと,残り時間からするともう一度先輩の攻撃を止める必要がある。

 それならば,残りの2人には無理にこちらまで走ってきてもらうより,体力を少しでも温存した形で最後のディフェンスに臨みたい。

 だからこそ,この3人で素早く勝負を決めるしかない。


「先輩!」


 この攻撃では無理な長距離シュートはいらない。

 東堂先輩にゴール下に切り込んで,確実に取ってもらおう。


「行かせません!」


 だが,そこは火野先輩もディフェンスが堅い。

 東堂先輩でもそう簡単には抜かせてもらえない。


 逆サイドから大久保先輩がヘルプに入ろうとするが,それも期待できない。

 かくいう俺も,天王寺先輩に抑えられ好きに動けない。


「このッ…!」

「――先輩!」


 残り時間に焦る東堂先輩が,そこで無理矢理シュートに行く。

 リバウンドに入るのはまず大久保先輩と大内先輩の2人。

 東堂先輩の放ったシュートは惜しくもリングに弾かれ,それを見て俺と天王寺先輩もリバウンドへと向かう。

 あまりゴール下の経験が無い4人でのリバウンド争い。

 少しばかり身長で俺が有利。

 このリバウンドは,絶対に取る。


「ッ?!」


 だが,現実はそんなに甘くはない。

 リングにぶつかったボールはゴール下から遥か遠くの位置に跳ねる。


「ラッキー!」


 運良くボールの落下地点にいたのは,遅れて来た海野先輩。


「かんな! 前ッ!」


 それを見た天王寺先輩が矢のように飛び出し,海野先輩がその動きに合わせて前にロングパスを出す。

 俺も彼女に反応し,負けじとその背中を追う。


 シュートを打ったばかりの東堂先輩とそのブロックに跳んだ火野先輩はまだ反応できない。

 ゴール下にいた大久保先輩と大内先輩ではもう追いつけない。

 白山先輩と北川先輩,海野先輩はちょうどこちらに来た所で,慌てて戻ってもこれも間に合わない。



 奇しくも,最後の最後は俺と先輩の一騎打ちの形になったという訳だ。



 この距離でパスを受けドリブルでゴールへと向かう先輩になら,俺でも追いつける。

 ゴール前で追いついて,戦える。



 だが,ちょっと待て。



 この時点で点差は4点。

 普通に決めても結果は変わらない。

 なのに,ただ一矢を報いたいという気持ちだけでこの先輩が動くだろうか。



 ――いや,先輩はそんな人じゃない!



 どんな状況でも,あの先輩は死にもの狂いで勝ちを狙いに来るはずだ。


 考えろ,考えるんだ。

 この状況で,先輩は何を考えている……


「ッ!!」


 そんな中,突然先輩がスリーポイントライン直前で失速した。

 もちろんその隙に俺は先輩に追いつくが,正面から対峙した瞬間,先輩の考えが分かった。


 先輩が狙っていたのは,スリーポイントシュートに対するファウル。

 バスケットカウントからの4点プレイ。

 これが成功すれば同点。

 残り時間から考えて,それは最良の選択。

 負けない為の,唯一の方法。


「………」


 だが,こちらも舐めて貰っては困る。

 どう攻めてくるのか分かっていれば,それほど守りやすい形は無い。


 俺は先輩のシュートのタイミングだけを見極めようとし…



「…私の勝ちよ。ハル君」


 先輩が,動いた。


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