#69 紅白戦開始
お昼休憩をはさんで、午後の練習が始まる。
俺は昨日よりも駆け足で昼食の片づけと夕食の準備を済ませ、すぐに体育館へと戻る。
「よ、待ってたぞ」
体育館に入った俺を待っていたのは火野先輩を含めた2年生が4人と、3年生が2人。
どうやらこのメンバーが俺のチームらしい。
ただ、俺を含めて7人ということは試合に出るメンバーも自分で選べという事か。
「ようやく来たわね、ハル君」
コートの中から声をかけてきたのは天王寺先輩。
どうやらすでに他の2チームは既に準備を始めているようだ。
「1チーム7人で分けてみたわ。リーダーは私とあなた、それに…」
言いながら向こう側で練習しているチームに目を向ける先輩。
それに倣って視線を向けると、そこにはある人物の姿があった。
「風花…ですか」
「えぇ。せっかくガードが3人いるから、そこを中心にメンバーを分けたの」
なるほど、昨日の練習で風花がガードで使えると思ったのだろう。
それとも、鬼コーチはとりあえずやめて、実践で鍛え上げるつもりなのか。
「ハル君のチームは次からだから、メンバーを決めて準備しておいて。
……しっかり、頼むわよ」
「…はい、分かりました」
「天王寺先輩。そろそろ時間です」
「えぇ、分かったわ」
最後だけ妙に真面目な表情を浮かべる先輩。
そこでチームのメンバーに呼ばれ先輩は戻っていく。
「さぁ、かかってきなさい!」
「よろしくお願いします!」
先輩が戻るとすぐに、先輩と風花のチームのゲームが始まる。
俺も次に備えなくては。
本気でぶつかりあう両チームを見て、俺もチームの元へと急ぐ。
「今日はよろしくお願いします」
「おぅ、よろしく」
改めて目の前のメンバーを良く見ると、普段からコートで試合をしているメンバーだ。
7人の3チーム。俺を抜くと全部で20人。
「……なるほどね」
そりゃみんな本気でぶつかる訳だ。
先輩はこの紅白戦でインターハイメンバーを決める気だ。
いつか井上先輩に言われたっけな、メンバー選びを今年は一緒にやってくれるのか、と。
今日からの紅白戦はその一環、俺にも間近でよくメンバーを見ておけという事だろう。
そりゃ井上先輩も進んで協力してくれる訳だよ。
「じゃあ早速メンバーを決めましょう」
そう言って俺はみんなを見る。
2年の火野先輩はもう説明はいらないだろう。
残りの2年生は、一度だけ練習で一緒になった事のある3人だ。
海野かんな先輩と今井莉子先輩、北川麗奈先輩。
全員もれなくフォワードで、ボールを持ったらまっすぐゴールに向かっていくようなそんな選手。
一応体格で分けるなら、身長のある海野先輩と北川先輩がパワーフォワード、今井先輩がスモールフォワードという所か。
3年生の2人は大久保理久先輩と広瀬和香先輩。
同じチームでやった事は無いが、どうせ基本的には同じような感じだろう。
全員が特攻命のフォワード集団。
正直、俺がこのチームに抱いているのはそんな感覚だった。
「最初は誰が出る?」
やる気満々の様子で火野先輩が口を開く。
俺に聞いてくる辺り、チームのリーダーは一応俺という事になっているのだろうか。
「そうですね…」
「あ、じゃあ私出たい」
「え?」
俺が答えようとした瞬間、隣にいた海野先輩が声をあげた。
「なら私も」
「あたしは次で良いや」
「もちろん私は出すわよね?」
それを合図に大久保先輩、今井先輩、広瀬先輩が次々と口を開く。
…これ、最初に俺に聞いた意味あったか?
「えっと、じゃあ初めは海野先輩と大久保先輩、広瀬先輩と…」
出鼻を挫かれながらも、俺は気を取り直して確認していく。
まぁ、どのみち俺だけで決める気もなかったしね。
「火野先輩と北川先輩はどっちが出ます?」
「あたしはどっちでもいいぞ」
「私も別に…」
あれ?
火野先輩なんかは間違いなく出たがるとおもったんだけどな。
「えっと…」
「…じゃあ、私が出るわ」
「おう。頼んだぞ」
俺が言葉に詰まると、一瞬だけお互いに目を合わせてから北川先輩が手を上げてくれた。
「あ、ありがとうございます。じゃあ北川先輩という事で…」
俺の言葉と同時にブザーが聞こえる。
コートに目を向けると、ちょうど天王寺先輩と風花のチームの試合が終わった所だった。
次は、いよいよ俺たちの番だ。




