#52 2対2(2)
「…私が,ポイントガードって事?」
俺の言葉に,風花の表情が曇る。
風花の気持ちは分かるし,出来るならこんな事はしたくない。
それでも,と俺は続けた。
「これはただのゲームだし,俺も風花も厳密にポジションを決めている訳じゃないだろ? だから,ガードとフォワードを交換っていうよりも,場所を変えようってだけだよ」
「うん……」
そう,これはただのゲーム。
俺たちも相手も,ポジションがどうので動いている訳ではなのだから,場所を交換したって何の問題も無い。
という意思を前面に出してみたが,頷く風花の表情は曇ったままだ。
でも,それでも頷くという事は,風花も気づいているのだろう。
このままじゃ勝てないと。
「よし。とにかく攻撃を落とさない事に集中しよう。点数をいくら入れられたって,同じだけ返せば問題ない」
「ん,わかった」
半ば強引に話を終わりにして再びセンターサークルへ向かう。
「ようやく作戦会議終わりか? 良い作戦は決まったか?」
今の攻撃で自信を取り戻したのか,目の前の相手は相変わらず下品な笑みを浮かべている。
「えぇ,まぁ………そちらも,ちょっと変えたんですね」
俺の言葉に,相手はにやりとした表情で答える。
言葉通り,相手のディフェンスが変わっていた。
先ほどまで風花についていた相手が,ゴール下でどっしりと構えている。
張り付いて振り切られるよりは,体格差を活かしてゴール下を埋める作戦のようだ。
「なるほど…」
だが,こちらにとってその変化はそう大きな障害ではない。
なぜなら…
「風花!」
「はいな!」
あいつは,ミドルレンジからのシュートが苦手な訳じゃない。
ほとんどフリーの状態なら,わざわざゴール下に切り込んでいく必要なんてないのだ。
ゴール下の男が呆気に取られている上で,風花が放ったボールは静かにネットを揺らした。
「おらおら!」
「くっそ……」
だが,ディフェンスは残念ながらこちらも似たようなものだ。
どうやら背のでかい方は生粋のセンターらしく,ガードの俺がゴール下で敵う相手じゃなかった。
風花の時よりも更に激しいプレイに,俺は何もできずに得点を許してしまった。
それからは,取っては取られてのシーソーゲームになった。
色々な作戦を試してみるものの,お互いに攻撃が止められない。
しかし,何度目かの攻防の末,風花が相手からボールを奪いとうとう均衡が崩れた。
「ナイスカット!」
そこからは上手くこちらのペースに持っていき,風花が連続で相手の攻撃を止める。
最初のプレイで薄々思ったが,やはりそこまで上手い選手ではなかったようだ。
こちらのでかいやつがフォローしているが,一度リズムに乗った風花の敵ではない。
「……ちっ。何やってんだよ…」
その様子を見かねたのか,とうとう外で様子を見ていた3人目がコートに入ってきた。
「おら,こっからが本番だ」




