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ダンマネ!  作者: SR9
第一章 インターハイ編
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52/148

#51 2対2(1)


「おい,とっとと始めるぞ」

「ほら,俺たちは優しいからお前らからで良いぜ」


 売り言葉に買い言葉で始まってしまった勝負だが,ここまで来てしまったらもう後戻りは出来ない。

 ただ,3体2では勝ち目は薄いが,今相手はこちらを完全に油断してリーダー格以外の2人しかコートに入ってこない。

 途中で入ってくる可能性もあるが,このままならちゃんと戦える。


「行くぞ,風花」

「うん」


 お互いに実力を把握していない今,わざわざのんびり攻めてやる必要もない。

 まずは1本。速攻で取る!



「――おい,ちょっと待て」



 と,意気込んでいた所,コート横にいるリーダー格から声がかかった。


「お前たちの制服,良く見たら霧ヶ原だな? 1年か」

「……はい。そうですけど何か」

「はッ! それ聞いて安心したぜ。なぁお前ら」

「そうだな」

「あぁ」

「…?」

「可愛そうだから始まる前に教えといてやる。俺たちは桜高校バスケ部のレギュラーだ」


 桜高校。

 どこかで聞いた事のある名前だ。

 そう,あれは確か……


「去年のウィンターカップ予選,1回戦でお前らをボコボコにしてやったチームだよ!」


 そうだ。仮入部初日に先輩から聞いた話の中に出てきたんだ。

 2年生が辞める原因になった,屈辱的な試合の相手だ。


「これで負けた時の言い訳が出来て良かったなぁ!」

「そりゃどうも……」


 こいつら,俺たちを心底馬鹿にしている。

 この前の楓高校もそうだったが,この辺の県立高校の先輩はどうも嫌な選手が多い。

 それとも,どの学校にもこんなに舐められる程,霧ヶ原が弱いチームなのか。

 まぁどちらでも良いか。

 今の言葉で更に油断してくれれば,それだけこちらがやりやすくなるというものだ。



 改めてセンターサークルに集まりゲームを始める。

 ルールは簡単。この前楓高校とやった時ゲームの2人バージョンだと思えば良い。

 ありがたく先攻が貰えたので,まずは俺がボールを持ってスタートだ。

 作戦も先ほどすでに打合せ済み。

 予想通り相手のディフェンスはマンツーマンで,背の高い方が風花に,低い方が俺についている。

 これなら,行ける!


「走れ!」


 俺がボールを取った瞬間,風花が全力でゴール下へ走る。

 油断して出遅れたマークを簡単に引きはがし,フリーになった所でパスを呼ぶ。

 楽々通るそのパスをゴール下で受け取り,これで1本目は俺たちの勝ちだ。


「ば,馬鹿やろう! 油断しすぎなんだよ!」

「わ,わるかったよ…」


 俺のマークについていた方だって風花の声に驚き俺から眼を離したくせに,自分の事は棚に上げてよく言う。


「やったね,ナイスパス」

「風花もナイスシュート」


 喧嘩する相手と対照的に,こちらは笑顔でハイタッチ。

 さぁ,ここで攻守交代だ。


 先ほどのプレイを見て少し本気になったのか,相手の目つきが変わる。

 だが,まださっきのラッキーパンチはこちらの油断があったからだ,と目が語っている。

 ここで畳み掛けられれば一番良いのだが,相手の実力が分からない以上無理は禁物だ。

 じっくり見ていこう。


「そらッ!」

「ッ! ………?」


 威勢よくドリブルで抜きにかかるが,何のフェイントも入れず,ただ突っ込んでくるだけ。

 隙だらけのフォームで,ボールも取ってくださいと言わんばかりの位置にある。


「………?」

「くぉ…」


 試しに手を伸ばしてみると,簡単にボールを弾く事ができた。

 弾いた方向が悪く,もう1人の相手の手にボールが渡ってしまったが,まさかこれが作戦という訳はなかろう。

 横目で風花の方を確認すると,あちらは流石に身長の差がそのままハンデとして出てしまっている。

 風花も食らいつこうとしているが,あれはどうしようもない。

 しかし,風花の必死のディフェンスのおかげで相手もシュートまではいけていない。

 この拮抗がどのタイミングで崩れるかは分からないが,今はとりあえずあのままにして,俺は目の前の相手に集中する事にする。

 先ほどのプレイから,相手にドリブル突破は無いと判断し,ゴール下へのパスにだけ警戒する。

 もしシューターだったらどうしようもないが,それならそれで仕方ない。

 今回決められても次に対策を考えれば良いだけだ。


 相手の方もそんな俺の考えを理解したのか,俺から離れてパスを貰い,間髪入れずにそのままシュート。

 フォームもリズムもばらばらで,入る訳がないと確信して振り返るが,俺はそこで重大なミスに気が付く。

 今リバウンドを取りに行っているのが誰か,という事だ。


「くッ!!」

「しゃぁッ!」


 風花があの相手とマッチアップになってリバウンド勝負が出来る訳がない。

 完全なミスマッチ。相手の狙いは初めからこれだったのか。


「ごめん,ハル君……」

「いや,俺の方こそごめん。相手の作戦にまんまと乗せられた」


 最初からハンデがあると分かっていたのに,そこまで考えが及ばなかった自分が情けない。

 でも,何度も同じ手でやられる俺たちじゃない。

 次の攻撃は止めてみせるさ。


「攻撃はどうする? 今のままで行くか?」

「うん。オフェンスはとりあえず今のままで行って大丈夫だと思う。でも,ディフェンスは……」

「あぁ,さすがに風花じゃ相手が悪すぎる。だから……」


 言葉を濁す俺に,風花は首を傾げる。

 この先を言うと風花には怒られるかもしれないが,今の状況を変えるためには必要な事だ。

 俺は一瞬だけ悩み,結局諦めて口を開いた。


「だから,俺とポジションを交換してくれ」


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