#43 お見舞い(2)
「ごめんね,散らかってて…」
そう言って通されたのは,リビングかと思いきや風花の部屋だった。
確かに具合が悪い時に動き回るのは辛いだろうけど,普通同級生の男子をいきなり自分の部屋に通すか?
それだけ信頼されているととるべきか,男だと認識されていないととるべきか…
さすがに入るのを躊躇ってしまうが,こちらの言葉を聞かない内にドアを開けたままそそくさとベッドに潜り込まれたら,部屋に入るしかなくなる。
俺は,いよいよ覚悟を決めた。
「お,お邪魔します…」
初めて入った女子の部屋は,普段は感じる事の出来ない,何とも異質な空間だった。
どことなく香る女子特有の甘い匂い。
普段の言動から結構雑なイメージをしていたのだが,実際そんな事は無く,ピンクと白を基調とした家具が綺麗に並んでいる。
本や洋服もきちんと片付いているし,机の上にも余計な物は何もない。
ベッド周りがごちゃごちゃしてはいるが,風邪で動けないのだからこれは仕方のない所だろう。
「…恥ずかしいからあんまりじろじろ見ないでよ。その辺にてきとうに座って良いから」
「あ,あぁ。じゃあ失礼します…」
ベッドに横になっている風花に怒られてしまった俺は,ふかふかのカーペットの上に腰を下ろした。
「……ごめんね」
「え?」
ややあって,風花がぽつりと零す。
「わざわざハル君が来てくれたのって,昨日変な態度取ったからなんでしょ?」
「あぁ,まぁ…な……」
そういう事になるのだろうか。
文香と先輩も,昨日の話が無ければただの風邪で済んだ話のはずだし,俺が一人でここに来る事は無かったと思う。
「でも,それだけって訳じゃないさ。風花が休みだって聞いて,心配したのは本当なんだから」
「…そう,なんだ……」
それは紛れもない本心だ。
やっぱりムードメーカーがいないとご飯だって部活だってつまらないからな。
「…ありがと」
「…おぅ」
答えながら咄嗟に横を向く。
ベッドの上で力なく微笑む風花が,いつにも増して可愛く見えてしまったのだ。
これは緊張のせいじゃないのか,妙に心臓の音がうるさく聞こえる。
「…でも,今日は昨日の事,ちゃんとお話ししようと思って,ハル君をここまで呼んだの」
「そう,か…」
真面目なトーンで風花が口を開く。
俺の浮ついていた気持ちも,それでスッと落ち着く。
そして風花は静かに語り始めた。
その昔,風花がバスケに興味を持った頃の話を―――




